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第2話 昼食は先輩と共に

「……ふわぁ~あ……。」

気怠そうな欠伸が、長い長い廊下に響く。

昨日危うく出来なくなってしまうかと思われたテスト勉強を、幼馴染に手伝ってもらいながら励んだ彼、ロンド・レアーガの右手にはその結果が握られていた。

78点。まあまあといった所だ。

面倒くさい補修を華麗に回避した彼は現在、昼飯を食わねばと食堂へ向かっている。

「甘口カレーまだあるかな……。」

彼の猫舌は、甘口以外のカレーを受け付けようとしない。

だからといって、あまり苦労するような事もないのだが。


「ロンド君!。」

「ど、どうしましたか急に。」

「……私達が今、口にしているのは何かね?。」

「……甘口のカレーですよね。」

「そう!。そしてこのカレーは今、絶滅の危機に瀕しているッ!。」

「はあ。」

「今、学生達の間で広がっている『カレーは程々に辛いのが旨い』思想!。こいつのせいで、タダでさえ注文数の少ない甘口カレーは今、窮地に立たされているのだッ!。」

「まじですか!。」

「うむ!。だからこそ我々甘党は、常日頃より大量の甘口カレーを注文し、この現状をカバーしていかねばならないのだよ!。」

「……でも、先輩の分は先輩の金で払うべきでは……。」

「君は、私のお財布事情を理解してくれる数少ない人々の一人ではないか!。」

弁論をまくしたてながら、カレーをもの凄い勢いで食っていくこの桃色長髪の眼鏡美女は、後輩にいちゃもんをつけて飯をたかる西方英雄学園三年生、ナギ・アリアドである。

「しかも、憧れの先輩がこうして生で拝める特典付きだぞ?。ほれほれっ。」

本来ならば魅惑的なプロポーションとなるはずなのだが、大事な胸の部分が他と比べスケールが小さく、イマイチ迫力に欠けていた。

ミレアの方が先輩よりあるよな。カレーに舌鼓を打ちつつ心の中でそう思ったロンドであった。

「ん?。ロンド君?。私の胸に何か不満でも?。」

「いえ!。全ッ然!。その艶やかな姿の前に心狂わされ、今にも昏倒してしまいそうであります!。」

本能的な危険を察し、咄嗟に出た嘘だったが

「ふふっ。そうかそうか。」

まんざらでもなさそうである。

褒められればケロっといく、単純な人であり、また、校内でも指折りの攻撃魔法の使い手であることをロンドは知っている。

下手に口を滑らせれば最後、風に吹かれて散りゆく灰と化すので注意が必要なのだ。

……しかし、この先輩だけに注意していても、この学園では安全は保証されない。

世界を見ずして安心は掴めないのである。

「……ロンド君?。」

絶対零度を思わせる声が、ロンドの首筋を撫でる。

「ひゃっ、ひゃいっ!!。」

「テスト勉強に昨日付き合ってあげたんだし、カレーの一杯くらい、奢ってくれるよね?。」

「はい!ただいまっ!。」


こうして、敵に回してはいけない先輩と幼馴染が並んで食事をしているのを見ると、その差は歴然としたものであった。

カレーをスプーンですくう度に揺れる巨乳を見つめながら、ただただでけぇなぁと感じる。

しかし、こうして昼食を二人の美女と共に過ごす事の出来るロンドは幸せ者であった。

周りの男子学生からの視線が少し痛いが、対価と考えれば相当なものだろう。

「……そういえば君達は、近々校内で大きな大会が開催されるのを知っているかな?。」

「大会?。」

「そうか、まだ一年生には伝わっていなかったか。」

突然話を切り出した先輩は食い終わった皿にスプーンを置き、語り始める。

「その大会の名は、『コロッセウム』というのだがな……」


食堂から校舎へと続く並木道を、ロンドとミレアは並んで歩いていた。

先輩は生徒会の用事がどうだのと、いそいそ行ってしまった。

あれでも一応、生徒会の重役に就いているらしい。

「ねぇ、ロンド君。」

「ん?。どした?。」

「さっき先輩の言っていた大会の事だけど……」

「ああ、あれか。ころっせうむとかいうヤツだろ?。」

あの後の先輩の話によると、どうやらその大会は毎学期の中頃に行われるいわば闘技大会で、自己申告あるいは推薦、選抜によって選ばれた各学年各クラスの猛者達が戦い、勝ち残っていくトーナメント形式。

勝利すれば、そのクラス全員に学園での優遇権、個人には百万べスの賞金が与えられるという。

といっても、金の使い道なぞ、寮制であるこの学園では限られるし、きちんと仕送りや学園からの手当なども届くので、よっぽどの事情が無い限りこの賞金目当てに参加する者は殆どいないだろう。

では、何が引き金となるのかという話になるのだが……

そう、成績である。

この大会には学園の教師陣も関わっている為、それなりの結果を叩き出せばそれなりのボーナスが成績についてくるという訳だ。

「ま、成績優秀な俺にゃ関係の無いぃ痛てててて!!。」

図に乗ってミレアに頬をつねられるロンド。

「そのうち、嫌でも参加しないといけないハメになるかもよ?。」

「ま、まぁその時はその時だろ……はは……。」


ひきつった笑いをしながら、次の時間、ホームルームの時間は何やるんだろうなぁなんて気楽に思いを馳せるロンドだが、その心には確かに、一抹の嫌な予感があった。




少しうとうとしながら書いたのでミス等あったらすいません。

主人公の能力のお話はまだまだ先のようです……とほほ。

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