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第10話 チームプレーと個人プレー

「どうしたの~? 日本大学野球界の大エースに勝ったのに、なんだか浮かない顔じゃん」

 県境を越える直前。適当なサービスエリアに止まってひと休憩と思った慶であったが、寝ているわけでもないのに行きに比べて静かな政をおかしく思ったのだろう。自販機で買ったスポーツドリンクを手渡しながら問いかける。彼は受け取りながらも、やはり引き続いて浮かない顔。

「なぁ。チームプレーってなんなんだろうな」

「政も高橋も声大きいからものすごく聞こえてたんだけど、試合直後の話?」

 そんなに声が大きかったのか。と落胆しつつも、だったら説明の手間がはぶけると、ただ頷く。

「野球はチームでするもの。これは少年野球の時にも言われてた。子供の時に読んでたいろんな野球漫画でも、常識かのように書いてあった。でも、今日の高橋を見ると、そうは思えなくなった」

「要は、チームワークが必要なのか不要なのかって話でしょ? 別にチームワークなんて勝つためのチームワークなんだから、チームワークが無くて勝てるならいらないんじゃない?」

 彼女はこれからも運転することもあり、目覚ましがてら缶コーヒーを開けて口に含む。

「それにさ、人によってはチームワークが邪魔になるかもしれないし、場合によっては無い方が勝てるかもしれないよね」

「そうかぁ?」

「だと思うけど? 例えば高橋みたいなピッチャーだと、味方を変に信用してて、エラーされたり点を取れなかったりすると、カチンと来てピッチングに影響が出たりするかもしれないでしょ? だったら最初から信用してない方が、カチンと来ることないからピッチングに影響が出ることはないでしょ?」

「そう、なのかなぁ?」

 特にピッチングとは、ちょっとした心理状況の変化がモロに現れるもの。ならば、心理状況の変化が現れる要因は消してしまうことが、安定したピッチングを生む方法――と言うのは、理屈上は間違っていない話である。

「それにさ、例えば高橋がチームメイトを信用したとするじゃん。それで何かメリットがあるの?」

「そりゃあ……」

 考えてみるが、思い浮かばない。ピッチャーが信用したからと言って野手が点を挙げられるわけでも、好守をしてくれるわけでもない。もちろん、バックを信頼することで安心して打たせて取ることができるわけではあるが、三振を取る高橋の投球スタイル、そしてチーム力を考えるに、エラーによる心理的デメリットの方が大きい。

「ないでしょ? 高橋にとってチームへの信用って百害あって一利なしなんじゃないかな?」

 彼女は飲み終えた缶コーヒーを助手席足元のゴミ箱に放り込む。そして下にジャージを履いているためか、スカートがめくれ上がることも気にせずにハンドルへと両足を乗せた。

「チームメイトを信用するのは、チームメイトに恵まれたヤツができること……かぁ。なんだか、私、高橋の言う事が分かる気がするなぁ」

「慶も?」

「例えばだけど、私がちょっと用入りだから1万円かしてって言ったら、貸してくれる?」

「そりゃあ、手持ちがあれば」

「じゃあ、同じ大学のまったく面識がない人が言ってきたら?」

「貸さない」

 即答である。

「私もその人も『同じ大学の学生』って意味で同じなのに?」

「そりゃあ、『同じ大学の学生だから』ってだけで信用はできないって」

「じゃあ『チームメイトだから』ってだけでも無条件で信用できないんじゃない? 信用するには『チームメイト』っていう共通点だけじゃなくて、信用に値する要素(ファクター)がいるんだと思う。高橋の言う『恵まれた』と言うのがその要素(ファクター)なんじゃないかな?」

「僕が慶にお金を貸せるのは」

「『同じ大学の学生』って言うのもあるけど、むしろそっちより親族だからってのが大きいかもね。ついでに親族ってだけじゃなくて、一緒の所に住んでてってのも大きいかもね。いくら親族でも、会ったことのない親族にはお金を貸せないし」

「はとこって親族なのか?」

「親族の定義は6親等以内だったからギリギリかな。因みに4親等以上だから、親族だけど結婚は可。結婚する?」

「いや、いい」

 難しい話の中に混ざった冗談も、短い受け答えで流してしまう。

「その親族って言うのも無条件で信用できるわけじゃないみたいだけど。ウチの高島先輩なんか、親に『死んでしまえ』って言ってたし」

「そういえばそんなこと言ってたなぁ」

「うん。で、なんでか、その後の痛烈なライナーを政が簡単そうに捕っちゃったと」

彼女は座席の後ろの隙間に入れてあった自分のカバンから、やや大きめのタブレットを引っ張り出すと、慣れた手つきでタッチパネルを操作。インターネットのとあるサイトを開いて彼へと手渡す。

「何、これ?」

「ちょっと試合後の暇つぶしに調べてみたんだけど、高橋が味方を信用しない理由も良く分かるよ」

 彼女のタブレットの画面に表示されているのは、割と有名な動画サイト。そこにはひとつの動画が再生されており、タイトルを見ると『ゴールデンルーキー高橋 最後の登板』と表示されている。

「最後って現役最後か?」

「みたいだね」

 もっとも最初から最後までではなく、ハイライトのような動画である。

「ふ~ん。ものすごくいいピッチングしてんじゃん。3回まで完全って」

「問題は4回(ここから)なんだけどね……」

 と、彼女の発言と同時に始まった4回表。ワンアウト取り、続く2番バッターの打球もサード真正面。何の変哲もないゴロを捕球したサードは、いとも簡単そうに1塁へと送球する。

「あ」

 政がつい声を挙げる。送球は大きく右に逸れる大暴投。いい具合にフェンスから跳ね返り無駄な進塁は許さずに済んだが、順調な高橋がランナーを出してしまった。

「まさか、これで信用できないってか?」

「まだまだこれから。まだ序章」

 さらに続く3番バッターの打球はサード後方への凡フライ。軽い足取りで後ろに下がるサードは、ランナーの動きを警戒して1塁の方向を向く。と、

「うわっ」

「酷いでしょ」

 ボールはグローブに当たってファールゾーンを転々。バッターランナーは当然出塁。そして1塁ランナーも悠々次の塁へと進塁を果たす。

 さらにここからも酷かった。4番の打球も打ち取った当たりのショートゴロ。ところが、ゲッツーを取ろうとしたショートのグラブトスが大暴投。全ランナーがセーフになる。本当ならばとっくにスリーアウトチェンジのはずが、3者連続エラーで1アウト満塁。最初にエラーをしたサードの選手がタイムを掛け、マウンドにて高橋に声をかける。

「で、こっから完全に高橋が崩れちゃうわけ」

 彼女の言うように、高橋はプレイ再開後の5番に左中間を破る初安打を許し、この当たりで3人が生還。さらに6番にはライトへのツーラン。7番にデッドボール、8番にセンター前ヒットを打たれる。

「で、締めは」

 打席に入った9番のピッチャー。打つ気は無く打席から離れて立っているが、彼の投球は、

「はい。これが現役最後の投球」

 150キロ近いストレートがバッターの頭部を直撃。バッターは頭を抱えて倒れ込み、審判は即座に高橋へと退場宣告。宣告を受けた高橋は苛立ち気味にマウンドを降りると、ベンチの椅子にグローブを投げつけ、さらにその椅子を蹴ってからベンチ裏へと消えていく。

「新聞でサラッと読んだことはあるけど、こんなに酷かったとはな……」

「正直、まだまだこれからなんだけどね」

「まだまだ?」

 結局、試合は崩壊。12対0で大敗を喫す。その後の監督インタビューが大問題である。

『今日の試合は先発の高橋が誤算だ。これからチームを背負う身としては、もっとしっかりしてほしかった。たしかに矢倉やぐらさんのエラーは大きかったが、矢倉さんはピンチを招いた時に率先してタイムを掛け、高橋を励ましてくれた。もっと投手陣に踏ん張ってほしかったように思えたな』

 その記者陣へのコメントが終わったところで、慶がタブレットを政の手からかすめ取る。

「だって」

「これは、何と言うか。あまりにひどくないか?」

「3回まで好投していたのにエラーで崩れてしまった投手を非難して、無得点でエラー多発の野手陣を擁護だもんね」

「しっかしエラーして試合を壊した奴をあそこまで擁護するか。どうなってんだ、こいつ」

「この監督、選手兼任から選手を引退して監督業継続でしょ? 結構若いんだよね。で、試合でエラーした矢倉は監督より年上。プロ野球は重度の縦型社会だから、監督と言えど年上を非難なんてしたらどうなることか。それにチームの大ベテランだから擁護したんだろうね。例え入団1年目のルーキーに責任を押し付けてでも」

「保身、か」

 さらに彼女が調べたところによると高橋は、8回無失点、4点リードで降板した試合で、クローザーが打ちこまれ逆転負けで勝ち星消滅。驚異の延長12回完投も、防御率5点台の相手投手に打線が援護なし。自らがツーベースを放ちチャンスメイクも、上位打線が続けず無得点などなど、話せばキリがないほどの『味方の裏切り』にあっていたもよう。

 プロ野球は重度の縦型社会。1軍選手はすべからく高橋よりも年上であり、文句を言えばどうなるかはもはや論ずるまでもない。

「こりゃあ、チームメイトを信用しなくもなるわな」

「でしょ? そもそも、無条件でチームメイトを信用できるなら、この世に信用できない人はいないって。全人類は地球に住む運命共同体なんだから。かなり極論だけど」

「極論だな」

「極論って言ったよ」

 驚愕の理論を展開した彼女は、サービスエリア内の売店で買ってきたちくわを、まるでタバコのように口に咥える。ちなみにちくわは彼女の大好物であり、もっとも好きな調理方法は磯辺揚げだそうで。

「信用のハードルを上げたそう言う人が得た信用って、それこそ本物の信用なのかもね。無条件で味方を信用するようなハードルの低い信用と違うね」

「それって僕のこと言ってる?」

「べ~つに~」



「……」

 政は自室でベッドに腰掛けてテレビを漠然とみつめる。画面には今日のプロ野球の結果が流れているわけだが、彼のファンのチームの試合は雨天中止となっており、他球団の結果に関しては興味なし。もっとも、例えファンチームの試合が雨天中止になっていなかったとしても、彼の態度は変わっていなかっただろう。

「んしょ、っと」

「慶。どうした? 布団を持ってきて」

「今日はこっちで寝ようかな~って」

 若干の子供っぽさ漂う桃色パジャマに、紺色ブレザーを羽織った慶。布団、枕、その他諸々を抱えて政の部屋と強行突入。何のためらいもなく床を片付け、自分の布団を彼のベッドの真横に敷き始める。

「何かあった? もしかして7時の幽霊特番見たとか?」

「見てないよ。その時間はお風呂行ってたよ」

 となると、怖くて一緒に寝たいと思っているわけではないと推測できる。そもそも彼女はその手の話や出来事に滅法強い。高校時代、友人と一緒に中国地区随一と言われるお化け屋敷に行ったのだが、驚きこそすれ甲高い悲鳴は上げなかったという伝説を持つ。因みに本人談であり、証人は無く、真偽のほどは不明である。

「今日の夕食、政の好きなものだったのになんか釈然としない様子だったでしょ? お父さんも心配してたよ」

「おやじさんにも心配かけてたか……それは悪かったなぁ」

「味付けミスったかなぁとか思ったんだけど、もしかして『アレ』を気にしてるのかなって」

 女の勘とは男子には理解しがたいものである。その直感と正確性が野球に応用できるのなら、間違いなくいい選手になれることであろう。

「少し、ね」

「ふ~ん」

『(少しってほどじゃないと思うけどね~見た感じ)』

 彼の返事を肯定的に捉えながらも、心の中ではやや否定的。

「あまり悩みすぎるのも毒だし、早く寝たらいいと思うよ? 明日も試合だし」

「そうなんだけど、寝られるかな?」

 やはり悩みが引っかかって寝られない様子。少し考えた彼女は、両手を前に突き出す。

「ほら」

「何? それ」

「人肌が恋しいなら私の胸に飛び込んできてもいいよ?」

 冗談ではなく本気の顔の慶。そんな可愛らしい彼女を見て、むさ苦しい野郎の顔を思い出す。

『(おい十河。マジで言いやがったぞ。こいつ)』

 十河が以前「セーフだ」と主張していたが、彼女的にはセーフだったもよう。もしかすると政限定で、十河相手だと話は異なる可能性もあるが、少なくとも今はセーフである。

「別に気にしなくても、今朝言ったでしょ? 私は、政の事が2番目に好きだって」

「1番目は猫だったよな。で、3番目はおやじさん」

「そう。よく覚えてたね。因みに4位はちくわの磯辺揚げ。5位は瓦そば」

 勘繰り深い顔をして少し探りを入れてみるが、引く気を見せずに本気のようで。

「それとも、ひざまくらとかの方がいい? 後ろからギュ~がいい? 政がやってほしいことをやってあげるよ? 何がいい?」

「恋人じゃあるまいし」

「私としては、恋人って言うより、弟に接するお姉ちゃん感覚かなぁ」

 彼女の『政の事が好き』の詳細が判明。恋愛的なLOVEではなく、姉弟愛的なLOVEだったようで。政としては残念な気持ちが2割、ややこしい事にならなくて安心した気持ちが8割だ。

「慶って誕生日、僕より遅くなかった?」

「いいの。あくまでもお姉ちゃん感覚(・・)だから。私、兄弟姉妹が欲しかったんだぁ。お姉ちゃんとか、妹とか、お兄ちゃんでもよかったけど」

 今まで父子家庭&1人っ子だった慶。家族・兄弟姉妹というものに大きな思い入れがあるのは、彼女の発言内容からしてほぼ事実のようである。

「だ~か~ら、ほら、甘えてもいいよ。お姉ちゃんに甘える感覚で」

「十河にでもやってやれよ。人の言ってた事をペラペラしゃべるのをどうかと思うけど、あいつ、お前を彼女にしたら泣きつきたいって言ってたぞ」

「う~ん、十河ちゃんの事は嫌いじゃないんだけど~」

「20位くらいだっけ?」

「うん。今は恋愛対象外かなぁ」

 十河、知らないうちに失恋。なお、彼女の好きなものランキング4位はちくわの磯辺揚げであるため、十河はちくわに負けたことになる。大失恋どころか超失恋である。

「今、慶って恋愛対象いるの?」

「気になる?」

 実は私が大好きなんじゃないの? と、意地悪そうな顔をする彼女だが、「そんなんじゃねぇよ」と、平然とした表情の政。

「いないよ。近いのは2位の政だけど~、多分対象外かなぁ。ウェスターマーク効果って知ってる?」

「知らん」

「幼い時から一緒にいた男女って、恋愛感情が芽生えにくいんだって。3日前の心理学の講義で習った」

「幼馴染とか? ドラマとかマンガだと幼馴染で恋愛とかよくあるのに、一瞬でフィクションを打ち砕いたな。ウェスターマークさんよ」

 いまいちそのウェスターマークが何なのかは分からないが、得てしてこの手の名前は効果を発見した人名である。と言う根拠不明の謎理論を元に人名と仮定して話を続ける。なお、ウェスターマークは人名である。

「でも、僕と慶って幼馴染じゃないし、会ったのは半年くらい前だろ?」

「あれ? じゃあアリなのかな?」

 たかだか半年でウェスターマーク効果なるものが起きようものなら、恋愛とはハードルの高い存在になるだろう。

「それはさておき、そんなに高橋に言われたのが気になってたの?」

「うん。若干、慶に言われたのも」

 チームメイトへの信頼。政は野球を始めて以降、野球はチームでやるものと教わってきたが、高橋はそれを否定した。慶も気持ちは分かると同調を示した。彼にとってはこの日が、信じてきていたモノの価値観が大きく変わる時なのであろう。

「僕にとってチームへの信頼は大きいんだ。今日、取った1点。それを踏んだのは僕だけど、僕だけで取った点じゃない」

 政の打撃スタイルと言えば、ボール球は徹底的に見切り、選べるフォアボールはとことん選ぶこと。これは自分自身では点を奪う事ができないものである。

 例えば彼のスタイルで点を奪える少ないパターンとして、出塁後、2盗、3盗、本盗の3つを連続して決める事。俗に『サイクルスチール』と呼ばれるものだが、これは日本プロ野球の長い歴史でものべ20人弱しか存在しないプレー。もちろん計算できるものではない。

 そしてまだ計算できる得点方法として押し出しフォアボールであるが、こちらは自身に打点は付くが1人の力ではない。それが起きる条件としてランナー満塁――前を打つ3人が塁を埋めている必要がある。

 つまり彼の打撃スタイルは、チームメイトの力を得て点を奪う事を前提としている。それは彼にとって、チームメイトへの信頼は生命線であることを指し示すのだ。

「でも、高橋の理屈も、慶の話も分かる気がするんだ」

 ただただ思ったことをそのまま口にする政。静かに彼の話を聞いていた慶であるが、話が少し途切れたところに意見を入れる。

「いいんじゃない。自分の思うものを信じれば」

「そう思う?」

「例えば、みんながオーバースローで投げるから、オーバースローが一番の投げ方だってことはないでしょ? サイドやアンダーで投げる人もいる。ウチの井島君みたいな変則投手も。それと同じで、個人個人に関しては『統一のベスト』は無いんじゃないかな? わざわざ周りに合わせる必要も、周りを合わせる必要もないよ」

 彼女は横に座ると、彼の頭に手を乗せて撫で始める。頭からは気持ちよさが、さらに彼女の髪からは甘いシャンプーの匂いが鼻孔をくすぐるが、今はそのような事を満喫いている状況ではない。

「少なくともそれが今の政の信じる事なら、信じつづけてもいいんじゃないかな? もしそれがどうしても信じられないってなれば、その時が信じるものを変える時じゃないの? 政は今、どう思ってるの? チームメイトは信じられる?」

「今の僕は……」

 今日はかれこれ影が薄かった監督・河嶋先輩、やたら苛めてくる福野先輩、先輩中の先輩である小林先輩、後輩思いの浦野先輩、同期の十河や井島、そこへマネージャーでありはとこである慶を含めた南長州大学野球部。

「信じられる」

 信じられないわけがない。大学に入って右も左も分からない時に、講義の選び方や、学校内の案内も含めてアドバイスしてくれば先輩たち。宿題や勉強に阿鼻叫喚しながらも協力してくれる同期たち、そして今、現在進行形で相談に乗ってくれている慶。それらを信じられないとすれば、この世に信じられるのはそれこそ自分だけしかいない。

「だったらいいじゃない。高橋に信じられないものでも、政には信じられる。ただそれだけの話じゃん」

「慶は、信じてる?」

「もちろん。たしかに高橋の気持ちは分かったけど、それで私の持っている信用が揺らぐことはなかったよ」

「そっか。胸のつっかえが取れた気がする」

 胸をなでおろす政に、慶も安堵の表情。

「そう。だったらよかった」

「僕の信じる道で、高橋の信じる道を打ち砕く。今度も迎え撃ってやる」

「その意気、その意気」

 彼の背中を叩いて喝を入れる。少し痛さを感じるほどであったが、政はそんなことを気にしないほどに気分上々。笑いながら彼女の肩に腕を置く。

「慶が身近にいてくれてよかった。すごく安心したよ」

「そっかぁ。じゃあ、ついでに今宵は身近で寝ちゃう?」

「それはお断りします」

「えぇぇぇぇぇ。お姉ちゃんのお願い。甘えてほしいなぁ~」

「お姉ちゃんじゃないだろ。は、と、こ」

 甘えてほしいお姉ちゃん願望も、甘えたい弟願望の存在しない政はきっぱりと拒否。そこまではっきり断られては、さすがに無理強いするわけにはいかず、結局はいつも通り。せいぜい適当な雑談をかわしつつ一緒の部屋で寝るにとどまった。


よく野球漫画でチームメイトを駒程度にしか思っていない選手っていますよね

けど、思うに究極的に味方を信用しないのは、こんな感じかと

と、某野球ゲームをしていて思いました

だって、三振以外でアウト取れないもん

下手すぎやろ!!

特にパワ〇ロ10のサク〇ス2軍!!

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