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二年半経って

 三百年の四月になった。結局関係性は何も変化せず、ミリアは卒業間近になったアレンに約束通りもう一度将来結婚して欲しいと言われていた。


「もう断る理由もないからいいけれどね」


 この二年間でミリアに好きな人はできなかったし、誰かを選ばなければならなくてアレンがミリアがいいというなら断る理由が無い。これだけ待ったならメアリーも諦められるだろう。


 だからそんなに言うならということで、将来一緒の家に暮らすことを了承した。そうはいっても、それができるのはどんなに早くてもミリアが学舎を卒業してからになる。それまでは今まで通りで、特に何か変わることもない。


 だからそんなことがあっても、日常生活に変化はまったく起こらなかった。もっとも、この日常が続くのもウォルトが十五歳になってミリアの一つ上の組が卒業する五月半ばまでだ。アレンが卒業したら静かになるなあとミリアは思うが、同時に伝えられる範囲で色々と業務に意見を求められるのではないかという疑念は持っていた。


 学舎の卒業後は本人の希望と適正によって決められる。卒業一年前から決定のための相談や調査が始まるため、今まさにミリア達の相談が始まったところである。ミリアはアレンに同じところに来て欲しいと誘われているが、そんな簡単に言われても元首補佐などまず無理だ。


 そもそも、学舎卒業したてではまず入れない場所である。アレンが入れたのは本人が希望していたのもあるが、持っているスキルが補佐向きだったからに他ならない。一族全員に遠話の許可をとっておけば、いつでも連絡が取れるというスキルが一番生きるのは指導者の側だ。


 ミリアにそういった補正は無いので、分野ごとに分けられている部署に順当に入ることになるのはほぼ間違いない。かといってやりたいことがあるわけでもなく、どうしたらいいかミリアは悩んでいた。


 そんな状況なので、ミリアは放課後一人で図書室に行き、どこに配属されたら何をやることになるのかということを改めて調べていた。これまで学んできたとはいえ、もう一度確認したかったのだ。


 遅くなる可能性が高いため、レティには連絡のため先に帰ってもらっている。ミリア一人しかいない図書室はとても静かだ。たまにページをめくる音が響く以外一切音のしない空間で、ミリアは一人調べ物をする。


 そんな時間がしばらく経って、ミリアの頭の中にいつもの声が聞こえてきた。


「ミリア。今ちょっといい」

「相変わらず急ね。いいけど」


 予想していない時に遠話で連絡が来ることにだいぶ慣れきったミリアは、アレンの声が急ぎのようなことに気が付く。


「明日、放課後うちに来れる? 父さんと母さんの都合がついたから、ミリアが大丈夫なら顔合わせしたいんだけど」

「え、行っていいの?」


 確かホワイトガード家は女神様が暮らしている以上、一族の者でも簡単に立ち入ってはいけないと、ミリアの記憶ではそうなっているのだが。


「ミリアは僕の婚約者だから大丈夫。フィオナとも話せるよ」


 ミリアの当然の疑問へのアレンの答えは、非常にシンプルなものだった。


「他にも色々と話したいことがあるし、結構遅くなる。予定、大丈夫?」

「うん、大丈夫」


 そもそも放課後に予定が入っている方が少ない。ミリアは問題ないとアレンに伝える。


「それと、父さんと母さんの予定を優先したから、僕が合流できるのが後からになるんだ。本当に申し訳ないんだけど、先に来てて話しててくれない」

「……何の用事?」

「元首補佐としての顔合わせ。たぶん、まず間違いなく、延びる」

「……分かった。それしか日程合わないなら仕方ないしね」


 どうでもいいような用事だったら放り出して最初から一緒に居ろというところだったが、これではアレンがそちらを優先するのも分かる。知らない人の中一人というのは緊張するが、後からアレンが来るならまぁなんとかなるだろう。


「じゃあ明日、よろしくね」


 アレンがそう言ってすぐに遠話は切れた。これから両親に返事をするのだろう。親ってどういう存在なんだろうなとミリアは思う。もっともアレンの様子を見ていると、コールドウェル家のように家族和気藹々といった様子ではなさそうなのだが。両親ともに忙しくて、昔からあまり構ってもらえていなさそうだった。


 その辺りの事情も明日会ってみれば分かるだろう。女神様にも会うことになるだろうし、話せるならば話してみたかったのだ。明日か、とミリアは思い、読んでいた本を閉じて立ち上がった。今日はこれ以上調べる気にならなくなってしまったのだ。


 元あった位置に本を戻すミリアはまだ知らない。明日これまで知らずにいられた事実を知ることになるということを。

一気に約二年半経ったということで分かりやすいと思いますが、明日でミリア視点はラストになります。

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