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不意打ち

 全試合終了後にアレンがウォルトに連絡をとると、ウォルトはすぐに帰ったようでもう家に戻っているということだった。そう言うわけでミリアはアレンの案内でウォルトの家に向かう。


 玄関先で呼び鈴を使わずにウォルトに連絡をとっているのを見ながら待っていると、ドアが開いてウォルトが中から出てきた。所在なさげにアレンの横に立っているミリアを見て、ウォルトは呆れたような表情を見せる。


「……本当に連れてきてたんだな。まぁいい。中で話すぞ」


 確かに疑うのも当たり前だなと思いつつ、ミリアはアレンに続いて扉をくぐる。様子を見た限り、まだメアリーとレティは来ていないようだった。



 ウォルトの部屋に通されて落ち着いたところで、さっそくウォルトが話を切り出してきた。

「で、なんで二人でうちに来たんだ」

「えっと……」

「ウォルトにも聞いていて欲しかったから、かな」


 なんで連れてこられたのかが分からないためミリアが言いよどんでいると、アレンが口を開いた。そして、ウォルトはその説明を聞いただけで、なぜアレンがミリアを連れてきたかが分かったようだ。アレンの言葉を聞いて、表情から疑問が消えている。


「どういうこと?」

 

 そもそもウォルトにも聞いて欲しいということは、アレンが話したいことがあるのはミリアということになる。意図が分からず、ミリアはアレンに尋ねた。


 ミリアに問わるとアレンはわざわざ体の向きをミリアに向け直す。そして、しっかりとミリアの目を見据えてこう言った。


「ミリア、僕と揃いの指輪作ろう」

「……え、えーと、婚約?」


 状況が状況だっただけに、しばらくアレンの言っている意味が分からなかった。そして理解すると今度はその内容に驚かされる。メアリーがこの前言っていたのはこういうことだったのだろうと今更ながらに理解するが、理解できたところでなぜこの状況で言ったのかが分からない。


「それもだけど、薬指に」


 ミリアが問い返しにアレンはこう答える。薬指の指輪は対の指輪を持つ相手をなによりも一番にするという証だ。


「はい? 私にアレンを一番大切にしろって?」


 婚約という重要なことをそれもだけどという言葉で肯定しつつ流したことより、そんな関係を求められたことにミリアは驚きを覚える。アレンがミリアに対してそこまでを求めていたとは考えてもいなかったのだ。


「ううん、僕はミリアに、僕が一番大切に思う物を同じように大切に思って欲しいんだ」


 アレンに訂正されて、ミリアはしばらく静かに考え込んだ。アレンが一番大切に思うもの。今までずっと見てきたのだ。それが民のことだということは疑いようもなく明らかだ。自分の身より民衆を選ぶ。それをしてほしいとアレンはミリアに言っている。


 ミリアには、自分にそれができるのかが分からなかった。確かに一族にとって民は滅私奉公して守り抜く存在だ。でもそれを当たり前とできる人はまずいない。いないからこそ一族は、できる限りそれができる人を不正など入らない方法で選んでいるのだ。


 できるよと答えるのが一族としての正解だ。だが、ミリアは一人の個人として、それができると言い切ることはできなかった。


「ごめん、ここでは返事できない。私にその覚悟があるか、考えさせて」

「うん、でも答えは決まってると思うな」


 アレンはミリアのその返答が最初から分かっていたような反応を返す。なんだか見透かされてるようで、ミリアは面白くなかった。


「あと、婚約についてだけど、さらっと流したからって私は了承したわけじゃないからね」


 こちらの件にも忘れないようにしっかり釘を指しておく。なあなあで了解していたということにされてしまってはたまらない。


「うん。じゃあ、指輪の件の返事の時に改めて話すね」


 にこやかにそう返事してくるアレンに、やっぱり見透かされてるとミリアは思う。面白くないという思いと同時に、これだけ見透かされてるなんてアレンはどれだけ指輪についてミリアに切り出す時のことを考えていたのだろうとミリアは思った。

指輪については22話「指輪の意味」にて書いている通りです。

ただ、アレンの認識はそれよりも少し軽かったり。

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