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変化の先触れ

 夏にはあれだけ厳しく照り付けてきた太陽の日差しも、九月の後半にもなればその力は弱まってくる。それにミリアは密かにほっとしていた。というものの、ミリアがアレンに力になると約束して以来、昼休みに過ごす場所が屋上に変わったからだ。


 というのも、アレンがミリアに屋上に来て欲しいと言ったからである。図書室は本来話し込む場所じゃないしねと言われれば、いくらミリア達以外は基本的に無人な場所であっても図書室がいいとは言えない。元々、図書室で集まってしまっていたのは、ミリアとレティが静かに読書しているところにアレンがウォルトを連れて押しかけてきていたためだ。


 ちゃんと約束をして集まるのなら、当然話してもいい場所になる。とはいっても、話をするだけなら食堂にずっといるのでも事足りる。ミリアがそれを指摘したところアレンの返事は、

「だって、屋上からの眺めがいいから」

という、それだけの理由だった。


 学舎の高さなどたかが知れていると思うのだが、それでも普通の建物よりは高い。革命前に建てられていた建物をそのまま使っているためだ。そんな眺めを、アレンは気に入っているらしい。


「ここが僕たちが治める場所なんだなーって、見る度に思うんだ」


 そんなたわいない動機を聞いて、ミリアは反対する気力を無くした。真昼の日差しは確かに眩しいが、暑さは防げているのだ。夏の間の日差しくらい、我慢できないことはない。


 それに、この夏はミリアもレティも忙しくて、アレンが昼に話したいと思っていたところで、応じることはできなかったのだ。学舎に新しく入学する学生を歓迎する準備が、いよいよ本格化してきたのだ。


 そのため今年は夏真っ盛りの時期に、屋上で過ごすことはあまりなかった。来年以降は逃れられないだろうが、今から考えることではない。


 そして昼に話せない分、アレンは夜に遠話で話しかけてくるようになった。夜も夜でミリアはレティと打ち合わせしているのだが、それが終わってからの時間に話しかけてくるのである。かなり遅い時間になっているはずなのだが、わざわざ待っているようだ。


 今もミリアはアレンにまさに話しかけられたところだった。よくわざわざ待つ気になるなぁとミリアは思う。


「ミリア、お疲れ様。準備は順調?」

「順調だけど、次から次へとやることが増えるのはどういうことなのこれ」

「あはは、そういうものだから頑張って」


 夜遅くに一方的に話しかけてきて、それでいて忙しいことに対しては自分たちでやるべきことだからと一切助言をくれないのは、流石にミリアもどちらかにしろと怒ってもいい気がするのだが、この忙しさの中でミリア達を歓迎する際アレン達は学舎内の案内に趣向を凝らすという本来やらなくてもいいことにまで手を割いていたわけで言うに言い出せない。それを言ったら、負けた気分を味わうのは明らかだ。


「それで、今日は何の用なの?」

「うん、レバワルカが僕に返されたから、その報告とかかな」

「その様子だと、特に何も問題なかったんだ」

「うん、持ち込み禁止にする必要はないって判断された」


 アレンが伝えてきたことはなかなかいい報告だ。時間がかかっていたのでてっきり出まかせの商品か門の外(オーダルー)では認められない方法を使っているのかと考えていたのだが、どうやら使っても大丈夫な物だったようだ。これが普及したら、生気(エルグ)を分別がつくようになる前に使い切ってしまう問題が解決しやすくなる。レバワルカを所持しているだけで、その問題が防げるのだから。


「これから、どう変わっていくのかな」

「正式に大丈夫だって決まったし、今日はそのことについて話したいなって思ってるんだ」

「うん、分かった」


 それからミリアはアレンが次から次へと出してくる運用方法案について、可否を判断するということを延々行うことになった。どうも、アレンは承認されること前提で色々と考えていたらしい。一つの発明でこれだけの可能性があるのかということが興味深くて、ミリアはいつしか疲れをすっかり忘れて話にのめり込んでいた。

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