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初めての押しかけ

 午前中の授業が終わると、昼食のための長めの休憩時間がやってくる。いつもなら、ミリアはレティ二人で昼食を食べた後に図書室に向かうのだが、今日はその流れにするつもりはなかった。


「ミリア、わざわざ行かなくても、後で向こうから図書室に来るんじゃない?」

 レティの言う通り、アレンも大抵昼食後に図書室にウォルトと一緒にやってくる。だから、待っていれば話はできるだろう。アレンも昨日、明日説明すると言っていた。


「もうこれ以上待つのは嫌。とっとと全部吐かせる」


 だが、ミリアは少しでも状況説明が遅くなるのが嫌だったのだ。そう言うわけで、授業直後のアレンの教室に乗り込んで、アレンを捕まえて一緒に食事をとる気である。その方が、時間の節約にもなるのだから。


「分かった。けど、待つのは玄関ホールでにしよう。向こうの授業が終わってなかったら、すごく気まずいよ」


 今は休み時間だから、本来なら授業中であることの方がおかしいのだが延長することはある。その際、終わったと思って乗り込んだら確かに気まずいだろうけれども。


「そりゃそうだけど、今日ピンポイントに授業延びる?」

「アレンのところはいつも延びてるよ。皆、食堂に来る時間が遅いもん」

「へー、そうなんだ」


 ミリアは食堂にいつだれが来ているかなど一々気にしていなかったが、レティは誰がいつ入って出ていったかまでいつも気にかけていたらしい。もう学舎の生徒には慣れているようだが、警戒心自体は消えきっていないようだ。確かに、気にかけていなければ急に知らない人が入ってきた場合に対応ができないのだが。秋に新入生が入ってきたら、またしばらく警戒心の塊になるのかなとミリアは思う。


 が、今未来のことを考えていても仕方がない。今は、アレンを捕まえることが先決だ。そんなわけで、ミリアは転移盤に載って、玄関ホールに向かう。そして、すぐにやってきたレティと一緒に、アレンの教室に繋がる転移盤から人がやってくるのを待った。



 しばらく待っている間に、食堂へ向かう他の学生たちが玄関ホールを通り過ぎて行った。そんな中でも、アレンとその同級生はいなくてレティの言った通り授業が延びていることが伺える。


 アレンの姿が玄関ホールに現れたのはだいたい全員が食堂に入ったのではないかという頃だった。

「あれ、ミリアにレティ。どうしたの?」

「昨日の説明、してもらおうと思って」


 アレンは、ミリアが玄関ホールにいたことにとても驚いたようだったが、その一言で納得する。


「そっか、じゃあ一緒に食べよう」

 アレンがそう言うのと同時に、ウォルトも玄関ホールに転移してきて、ミリアとレティがいることに驚く。


「何かあったのか?」

「うん、一緒に昼食食べることになったけど、ウォルトもいいよね?」

「いや、いいけど。マジで何があったんだよ……」


 これまでウォルトが見ていた関係性において、そもそもミリアとレティがアレンとウォルトをわざわざ訪ねるということは、確かに異常事態である。事情を知らなければ、驚くことも無理はない。


「それも、食べながら説明するから、行こ?」


 アレンがそう取り成して、それでウォルトも納得したようだ。四人は食堂に繋がる転移盤に順番に乗って移動した。



 結局昼食の時間は、ウォルトに対して昨日の夕方何があったのかの説明だけで終わった。レティへの説明はミリアが昨日帰ってから行っていたが、アレンとウォルトは一緒に住んでいるわけではないので、説明している時間など無かっただろう。


 それに、ミリアにとって得るものがまったく無かったわけではない。アレンとシェリーが拘束されていた時に何が起こったのか、その詳細を聞けたのだ。あの犯人に言い放った馬鹿げた一言の前に何を話していたのかなど、こちらも気になっていたことである。


 全部を聞き終わったウォルトは、何も言わずにアレンの額を小突いた。色々と言いたくなった感情を、その動作一つで収めたらしい。


「ウォルト、痛い」

「そんな痛くねーだろ。たく、まーた無茶してきやがって」

「僕、今回は巻き込まれただけだよ?」

「自分を捕まえてる相手に対して、本当に傷つける気があるんですか、なんて聞くことは無茶って言うんだよ」


 あ、言った、とミリアは思う。上で聞いていてミリアもなんてことを言っているんだと思ったものだ。普通、大人しく人質をしている場面である。


「そうかなぁ」


 無茶だと言われても納得する様子のないアレンである。こういうのと一緒に居るのは大変だなと思いつつ、このままではいつまでたっても聞きたいことに話が及ばないと思ったので、ミリアはさっさと尋ねることにした。


「それで、最後結局生気(エルグ)切れで倒れたのは、どうしてだったの?」


 例のブローチが直接的な原因ではあるが、アレンの生気(エルグ)の残りの量がギリギリまで削れていなかったら、道具を動かす程度の量で生気エルグ切れにはならないだろう。


「ああそれはね、僕のスキルは繋ぐ時が一番生気(エルグ)の消費が激しいから。エルバート、いつもいる場所の周辺にいなかったんだよね。それで、繋ぐまでにいつもより時間かかって、だいぶ消費してたんだ」


 エルバートがいつもの場所にいなかったのは、きっとシェリーを探していたからだろう。長距離の移動でもたいした時間がかからないため、人一人を当てもなく探す場合は非常に大変なことになる。


 アレンが遠話を繋ぐ際、どういう認識で行っているのかは分からないが、狭い範囲にいることが分かっている相手と、島中を探さないといけない相手、回数は同じでも消費する生気(エルグ)の量に差が出たのはそれが原因のようだった。


「ああ、それでなのか」

「うん、それで僕もミリアに聞きたいことがあるんだ」

「何?」


 ミリアが納得したと伝えると、アレンも聞きたいことがあるらしい。ミリアは、一言で質問を促す。聞きたいことは、分かっているつもりだった。

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