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破裂するほど秘めていたこと

 アレンとシェリーが事情聴取から解放されたのは、ミリアが予想していたよりもずっと早い時間だった。どうも、子どもだからということでなるべく早く帰そうと努めてくれたらしい。その心遣いはありがたいものだが、これから急いで早い時間に終わらせてくれただろうその好意を無にすることが確定しているので、ミリアは心が痛い。


 このままシェリーとエルバートを帰すと明らかに関係はこじれたままになる。それをアレンは良しとしないだろうということは、本人に聞くまでもなくミリアは分かっていた。


 もっとも、ミリアはアレンとシェリーが犯人たちに自由を奪われる前に何を話していたのか知らないので、既にシェリーの心情が解決している可能性もないではないが。ただ、救援を求められたのがけっこうすぐだったため、あまり話せていないだろう。となれば、これから話し合いだ。


「お待たせ、二人とも。シェリー、もう帰ろうとしちゃ駄目だからね」

「分かってるわよ」


 ミリアとエルバートが居た場所に、アレンとシェリーがやってくる。


「お疲れ様。早かったけど、何聞かれてたの?」

「何が起こったかと、連絡手段、それから今夜あの人たちをどう扱って欲しいかぐらいかな」

「なるほど、それなら早く終わるか」


 動機の心当たりといった細かいことは尋ねられなかったらしい。それはきっと、犯人たちに直接訪ねるのだろう。


「それで、犯人たちへの待遇はどうして欲しいと言ったんだ」


 再発しないかが気になるのだろう。エルバートが二人にどうして欲しいと言ったのか尋ねる。


「僕は巻き込まれただけだし、シェリーに判断を任せたよ。で、その結果」

「私は、なるべく軽い罪にして欲しいってお願いしておいた」


 それにアレンとシェリーが答えると、エルバートは不満そうに口を開く。


「なぜそうしたのか。厳罰を望んでおけばいいものを」

「怪我とかなかったからどのみちそんな大した罪には問われないし、だったら上客は大切にしなきゃ」


 そう言えば、エルバートはアレンのあの言葉を聞いていないのだ。厳罰を望んでも不思議ではない。シェリーがめんどくさそうに説明する。


「だって、あの人たち、こっちを傷つける気なんて一切なかったんだからね。言うこと聞かせようとして脅してただけ。私がそれくらいで頷く人じゃないってことは伝わっただろうから、もうこういうことは起こらないはず」

「だからといって、簡単に許しすぎではないか」

「だって、あの人たちのおかげで私の代金吊り上がってるんだもん。無下には扱えない」


 そんな重要な客ならば、自分の影響力を過信して乱暴に要求を突きつけることもあり得るだろう。シェリーに自分たちが欠かせないと思っての行動だったのかとミリアは納得する。


「確かにもうないだろうね。今回のことで、シェリーの意思は簡単には曲がらないって知れ渡るはずだから。でもシェリー、こういう稼ぎ方はもう止めた方がいい。人質を傷つけることにためらいが無い人が現れたらどうするつもりだったんだい?」


 アレンの言葉を聞いて、ミリアはアレンがシェリーが商売を続けることに反対だということを知る。


「僕たちを捕まえた人は、僕のことを最初君とよく一緒に居るという男の子だと思って捕まえていた。これが、どういうことか分からないわけじゃないでしょ?」


 アレンは自分だけならともかく、周りを危険に曝しているのだから自粛するべきだと言いたいらしい。それは確かに正しい。だがミリアは、シェリーに諦めさせたくなかった。強い信念で頑張っているのに、自分ではどうしようもない原因で諦めざるを得ないということは悔しいにもほどがあるだろう。


 そんなシェリーはアレンの言葉を聞いて、どうもかなり苛立ったようだった。瞬間的に爆発した感情が、声になって溢れ出してくる。


「それぐらい、分かってるわよ! だから、友達関係も全部切って、お母さんとも離れて暮らすようにして、人質というものに値しそうな人がいなくなるようにしてたのに、そんなことも知らずにエルバートは勝手にどんどん私との距離を詰めてきて! 馬鹿じゃないの! 迷惑になっているってことにまったく気づいてないなんて」


 シェリーの苛立った叫び声が響き渡る。ミリアはそれを聞いていて、やはり考えていたんだなと納得した。これは確実にミリアの予想が当たっている。


 が、それを確かめるより前に、シェリーを落ち着かせてあげる必要がある。エルバートの側に置いておいては、いつまた些細なきっかけで感情が爆発するか分からない。


「ね、シェリー。ちょっと二人で話そ?」


 ミリアはそう言って、シェリーの手首を取る。アレンとエルバートに着いてくるなという意図を込めて睨み付けると、シェリーを先導しながら歩き出した。

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