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喧騒発生

 ミリアにとっては、アレンが連れてきた人は強い印象が残ってはいるものの、名前を知っているわけではないという人物だった。新年を祝う祭りの日に、色々とあった結果一緒にごみ拾いを行った同世代の男の子だ。


 相変わらず目に眩しい橙色の髪と目をしている彼は、アレンが示したミリアとシェリーのいる机に目を向ける。ミリアに気が付いて少し驚いた表情をした辺り、向こうも覚えていたらしい。


 そして、ミリアの向かいではオレンジ色の髪を見た瞬間から、シェリーが盛大にため息をついていた。諦めきったように机に肘をついて、見るからにがっくりとした様子である。


「……期待した私が間違ってた。知り合いなんて同年代に固まるものなんだし、それで付与はがしスキル持ちって言えばエル以外いるわけない」


 アレンとオレンジ色の髪の少年がミリアとシェリーのいる机に移動する間にシェリーがそう呟く。それを聞きとめたのだろう。シェリーがエルと呼んだ少年は、アレンの向かい、シェリーの隣に座るなりシェリーにせわしなく話し始めた。


「なんだ、やはりシェリーだったか。僕が条件付きではがすことをとっくに了承しているのに、断ってどうするのかと思えば他の手段を探しに出かけているとは。そして、結局僕に頼る形になっている辺り無意味な足掻きだと分かっただろう。諦めて僕の条件を呑んだらどうだい」

「絶対嫌!」

「そこまで激しく拒絶されるような条件は出していないつもりだが」

「やっと軌道に乗ってきたところなのに、そんな条件呑めるわけないでしょ」


 取りあえず、ミリアにはエルとシェリーが知り合いだということは分かった。が、言い合いが激しすぎて説明を求めたくても割って入る気になれない。とりあえず、エルを連れてきたアレンにエルの紹介だけでも頼もうと、ミリアは自分の隣に座るアレンを振り向く。


「それで、すごく騒がしくなったけど、あのオレンジ色の紹介はまだ?」

「ああ、彼はエルバート・ノーランド。さっき話した通り、付与はがしのスキルを持ってる。……ミリア、初対面にしてはエルの扱いぞんざいじゃない?」

「新年の祭りの時に面白い人に会ったって言ったでしょ。それがエルバート」

「ああなるほど。あれエルだったのか」


 一度会っているということを伝えるとアレンがミリアのエルバートに対するぞんざいな扱いに納得している辺り、アレンもエルバートがどういう人間かはよく分かっているらしい。

 それでも、新年の祭りの時ミリアが会っていたのがエルバートだと知って、少し嬉しそうにしているのはなぜなのだろう。


「で、アレンはどこで知り合ったの?」

「こうやってたまに買い物に出てきたときに偶然。道端で急に倒れた人の対処で一緒になって」

「……後はなんとなく予想がつくから大丈夫」


 二人とも、道で人が倒れたら真っ先に行動するタイプだろう。その迷いない行動の結果、意気投合する様子は想像に難くない。とりあえずエルバートに関してミリアが現状気になったことはアレンから引き出せた。だから、次は本人に話を聞きたいのだが。


「そもそも、こんなことをしてお兄さんが喜ぶと思っているのかい?」

「お兄ちゃんが喜ぼうが喜ばまいが関係ない。そもそも勝手に置いて行ったんだから、私も勝手に取り戻すために努力するって決めたの」

「君はそれで満足かもしれないが、身を危険に曝していることが今回のことで分かっただろう。潮時として止めるべきだ」

「何言ってるの。全然潮時なんかじゃない。ようやく名前が売れて稼げるようになってきたところなのにここで止めるわけないでしょ」


 本人たちしか知らない事情で口論を続けているため、話に入るタイミングが見つけられない。強引に割って入ることもできなくはないが、ミリアはなんとなくそれを行いたくなかった。


「ちょっとストップしてもらっていい? エルをミリアに紹介しなきゃ」


 勇敢にもアレンが会話に割って入ったが、見事に二人から痛い視線を浴びることになっている。だがそれでも、エルバートとシェリーの口論はいったん止まった。


「エルバート・ノーランドだ。エルでいい。まさかまた会うことになるとはな」

「私はミリア・コールドウェル。私も想定してなかった。アレンの知り合いだったのね」

「こちらこそ、アレンの知り合いだと聞いたらあの行動にも納得だ。あまり街には出られないのだろう? あんな時間のつぶし方でよかったのか?」

「ま、自分じゃ絶対取らないような行動だったし楽しかったから」


 初対面の時はもう会うこともないだろうと結局行わなかった自己紹介をする。


「ミリアに会ったことあったの?」

「前の新年の祭りでぼーっと街を歩いていたのがミリアだ」

「へー、そう」


 シェリーは自分で尋ねておきながら興味がないことがありありと分かる雰囲気だ。心底どうでもよさそうで、ほんの少しだけエルバートに同情を覚えなくもない。


「シェリーとエルが互いに知り合いっていうのも、僕は驚いたけどね」

 アレンがこういうと、シェリーとエルバートからそれぞれ関係性の説明が入る。


「エルバートは、ユニックでの同級生」

「シェリーとは家が近所で幼馴染だ」


 二人の説明での若干の食い違いは、エルバートの方がより真実に近しいのだろう。シェリーも嘘は言っていないが、それだけの関係でないことは口論の様子を見ればわかる。

 何かエルバートの基準では認められない手段でシェリーが金儲けを行っていて、それを止めるなら浮遊物体についている追尾機能を引きはがすといった条件でも出しているのだろうか。

 そして、シェリーにはその行為を止める気は一切ないらしい。どんな事情があるのかは分からないが、簡単にやめる気はないのだろう。あのエルバートが止めているのだから、一応止めることに意味はあると思うのだが。


 そのあたりの事情にまで踏み込んで教えてもらえるだろうか。ミリアはダメもとで先ほどまでのシェリーとエルバートの会話で聞き取れた部分を掘り下げていくことにした。

45話でのフラグ回収です。

前とは一転、賑やかな場所で賑やかな中で、再開することになりました。

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