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よくある名前

 アレンが遠話で呼び出した人が来るまでの間は、穏やかな談笑とまではいかなかったがそれでもレストランに来たばかりの時よりは明らかに和やかな雰囲気で話すことができた。どうやら、身分を明かしたことで信用を得ることができたらしい。


 それでも、外見を偽るということはいくらでもできるだろうに、なぜこんなにも簡単に信じてくれたのだろうか。それをミリアが尋ねると、シェリーはこう答えた。


「だって、名乗ってないのに名字当てられてるし」

 確かにあの情報だけで名字を当てたら信用してもおかしくはない。事前に調べていたという可能性は残るが、シェリーはミリアとアレンがたまたまそこに居合わせただけだと判断している。ならば、信用するには十分なのだろう。


「ああなるほど」

「二人とも青だから、見ただけで名前分かるスキルでもないしね。何かを発動させて名前調べてる様子もなかったし」


 色々な可能性はすべて考えたうえで、信用することに決めたらしい。そのしっかりしているシェリーの一面を、ミリアは少し不思議に思う。門の外(オーダルー)しか知らない人が、果たしてここまでしっかり人を疑えるようになるだろうか、と。全ての人が善人であること前提の場所しか知らないならば、こんな風に人を疑う際の項目がしっかりしているのは少し不思議である。


 ミリアがそんなことを考えていると、シェリーは暇そうに腕を伸ばす。

「遠話かー。いいなぁほどほどに便利で」


 そして、アレンに向けてそう言った。説明はしていないが、一連の流れでアレンが遠話スキル持ちだということは分かるだろう。別段不思議なことではない。


「そう? 修復の方が色々便利だと思うけどな」

「便利すぎて不便なの」


 アレンが口に出したため、ミリアもシェリーの所持スキルについて知ることができた。修復は便利なのにリミッターの効きが悪く、ユニックに通うことが義務付けられている。生気(エルグ)切れを起こしやすいから義務通学になっているパターンだというのは黄色の髪を見て分かっていたが、その中でも筆頭の修復だとは。


 そして、名前とスキルがこの組み合わせだと、門の外(オーダルー)で生活するほとんどの人が思い浮かべる存在がある。


「ところで、シェリーってお兄さんいるの?」

 アレンも同じことを考えたのだろう。ミリアの疑問を口に出して聞いてくれた。


「想像通りに。……この質問されるの何度目だろ」

 答えるシェリーは何度も何度もこの質問をされてもう飽き飽きしているということを隠すそぶりすら見せない。まあ確かに、よく聞かれる質問なのだろうが。初代王と女神が革命を行った時に協力した兄妹、その妹の名前がシェリーだ。


 王の名前が敬われてそれ以後名付けられることが無かったこととは対照的に、この兄妹の名前は頻繁にあやかって名づけられている。男の子が生まれれば兄の名前、次に女の子が生まれたら妹の名前といった風にだ。そういうわけで、シェリーという名の女の子の場合、兄がいない方が珍しい。まして、伝承で伝えられている妹のスキルと同じスキルの所持者である。明らかにあやかってつけられていることは明白だった。


 だが、され慣れているはずの質問に対して、それに飽き飽きしているといった態度に紛れて、それ以上踏み込んだことを聞くことを明確に拒絶しているように感じられるのは気のせいだろうか。


 兄の話題自体をシェリーは嫌っているようで、ミリアは仲が悪いのかなと勝手な推測を立てる。


「あー、ごめんね。でもほら、皆気になることなんだよ」

「聞かれ続けてきたから知ってる」


 そんなたわいもない会話だったが、途中でアレンが呼んだ相手に正確な場所を支持するからということで会話を抜けた。遠話と通常の会話を両方続けたら確かに頭の中がごちゃごちゃしそうであはある。


「ミリアはどんな人が来るのか知ってるの?」

「ごめん、心当たりないんだ。壊す方だったらあの人呼ぶんだろうなって想像はつくんだけど」

「そっかー。どんな人だろ」


 二人でアレンが呼び出した、付与されている能力を引きはがすことができるスキル持ちの人についての想像に花を咲かせていると、アレンが店の前まで来たから呼んでくるねと席を立った。


 その言葉を聞いて、ミリアもシェリーも店の入り口に目を向ける。そして現れた人を見て、二人の反応はそれぞれ違ったが共通していた点が一つだけあった。それは、初めて見た人に対する反応ではないということだ。

参照:14話。

あやかって名前を付けられているせいで、シェリーという名前は非常にありふれたものです。

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