レティの誕生日
学舎に入学してから丸一年が経過した。春先の日差しは心地よく、雲一つない晴天が人を外へと誘い出そうとしている。だが、一年間経った記念日だからといって学舎に行かなくてもいいというわけではない。ミリア達がこれから負うことになっている責務は、そんな程度のことで休みが許されるようなものではないのだから。
ただ、一周年ということは、つまりレティの誕生日が同時にやってきたということで。ミリアはどう祝おうか色々あれこれ悩んでいた。そして、悩んだ既に出た当日会った際の第一声は、
「レティ、十一歳おめでとう」
結局そんな酷く平凡なものに落ち着いてしまったわけだが。
「ありがとう、ミリア」
それでも、ふわりとほほ笑んで喜んでくれたので、ミリアはこれでよしとすることにした。去年は入学当日で二人とも緊張していたので、とても祝うどころではなかったため、こうして落ち着いてレティを祝ったのは初めてである。
「そういえば、ミリアの誕生日って結局いつなんだろ?」
「さあ?」
見つかった時に既に十歳を超えていると判断され、次の入学の組に放り込まれたミリアとしては、自分の大体の年齢は既に分かっているため、今さらそれ以上を知ったところで何かが変わるとは思えない。
なにより、門の中の住人の半数は自分の生まれた日付を知らないほうが普通だった。知らなくて何かを困るということが無かったのである。また昨年レティをしっかりと祝い損なったのには、そういった事情ゆえに誕生日を祝うという習慣に疎かったためでもある。
「さあって、知りたいとは思わないの? 調べようと思えばすぐだと思うけれど」
ミリアの出生が謎であるため、調べられる限りのことは調べられたはずだ。当然の手がかりとして、生年月日もこっそり調査されているだろう。知りたいと言えば教えてもらえる可能性は高い。レティはそれを言っている。だが。
「分かったからって、何かが変わるとは思えないしなぁ」
今まで知らないで生きてきて特に不便は存在しなかった。知らないということで実害があるのならばともかく、そうでないのにわざわざ労力を割いて知ろうとは思えない。
そして何より、誕生日が分からないことが、自分が門の中で育った証として残るものだとミリアはおぼろげながら思っている。積極的に知ろうとは、どうしても思えなかった。
「そっか……」
ミリアが言った言葉に対して、レティが残念そうな感想を返す。自分のことではないのに、なぜそんなに残念そうなんだろうと少し考えて、そしてミリアは気が付いた。
「レティ、私を祝いたいだけなら、適当に日付決めていいよ」
「え、ええ! 適当!?」
適当に決めるという言葉にレティはかなり驚いたようだが、ミリアが真実知る気が無いこと、その上でレティが行いたいことを考えて折衷案を出してくれたことを把握していったのか、次第に納得した表情になる。
「ええっとね、じゃあ、初めて会った日」
「分かった。その日ね」
ミリアが門の外に現れた日だ。確かに、生まれ直したとも言っても過言ではないため誕生日としても差し支えないだろう。
「絶対、忘れないからね。ミリアも、忘れちゃ駄目だよ」
「うん、レティが祝ってくれるの楽しみにしてる」
十一月は随分遠いが、ミリアは忘れないでいられるだろう。なぜなら、大切な友人が祝ってくれると約束してくれているのだから。
生年月日については、各キャラ生まれた年、月までは決めていますが、日にちまでは決めていません。
そもそも暦が数日ずれていますし。




