日常は変わらず
新しい年がきたからと言って、ミリア達が行なうことに変わりはない。いつも通り授業があって、いつも通り休み時間には図書室に移動する。変わることがない、ミリアとレティの日常だ。
そして、そこにアレンがウォルトを引き連れてやってくるのも、またよくある光景の一つである。
「ミリア、昨日の街の探索はどうだった?」
「お祭り中だったせいで、本当に見たいものは見れなかったかな。あ、でも面白い人になら会った」
「面白い人?」
せっかく街に出かけても、祭りの日ではミリアが見たかった日常風景には程遠い。結局適当に歩くだけになり、そして不審者と間違えられそうにもなった。その、間違えられそうになった相手が、なかなか面白かったのである。もう関わらないからこそ、面白いという感想を持てるのだろうけれども。アレンみたいに向こうから延々と関わってこられる場合、ミリアは自分が面白いという感想より面倒という感想を抱くことは分かっていた。
「うん、祭りの最中なのにゴミ拾いしてたの。ここは抜け道で公的な掃除が入るのが遅いからって。アレンから連絡が来るまでの間、手伝ってた」
「その人、どんな人?」
「同じ年位の男の子」
アレンに聞かれて詳細を説明すると、アレンはなんだか少し不機嫌そうになる。何が気に入らないのかミリアには分からないが、余り刺激しないようにしよう。そう、ミリアは心に決めたのだが。
「ねぇミリア、僕、なんでミリアにずっと側にいて欲しいって思ってるんだろ?」
「私が知るか!」
何故ミリアに聞くという内容の問いを真剣そうに尋ねられて、そんな覚悟は吹き飛んでしまった。レティとウォルトに目を移すと、二人とも呆れ返った表情なのが見て取れる。
「なんでなんだろうって考えてたら分からなくなって、じゃあミリアに聞いてみようと思ったんだけど」
「私がアレンが何を考えているか、分かると思う?」
「やっぱり、自分で考えなきゃ駄目か」
「そりゃそうでしょ……」
なんでこんな問いをミリアにしてみようと思ったのか。ミリアは呆れながらアレンを見る。新しい一年も昨年と変わらずアレンに悩まされることになるのだろうなと、ミリアは諦め半分でそう思った。




