応援チャリTea
スリランカ系のお茶は、『ミツティ』からの通販に頼っている。
『ムーンガーデン』のエッセイを書かせていただいた関係から、少し、メールでやり取りなどもさせていただいた。『ミツティ』は、店長さんが毎年、直接スリランカに飛び、現地の茶園と契約し、お茶を仕入れている。ちなみに店長さんは女性。お茶好きが高じてスリランカに行き、現地の茶園で働いてお茶を学び、店を出してしまった。
それだけでもすごいのだが、このお店、たまに「!?」という事もしてくれる。
ルフナ紅茶の知名度の低かったころに、「コレ美味しいんですよ!」と嬉々として販売していたり(そのおかげで、ルフナという茶葉を知りました。実際美味しかった)。あっさりしすぎていてブレンド向けだよね、と思っていたキャンディ紅茶に、「干したアンズの香りだよ~金平糖みたいな味するよ~」とコメントをつけて、本当か? と飲んでみたなら、「え、これホントにキャンディ?」と、驚かせてくれたり。
茶園によって、育て方や加工の仕方が違うので、お茶の葉は、毎年味が変わる。それを逆手にとって、新鮮な茶葉を仕入れることで、その年収穫された茶葉の特徴をコメント。それにより、飲んだ人に、「うれしいびっくり」を届けてくれる店。
とりあえず、ここで買い物をする時は、「このお茶はこういう味」という先入観は捨てておこう。
で、タイトルの『応援チャリTea』。
実はこれは、東北で震災のあった時に、その知らせを受けたスリランカの茶園の人が、好意で送ってくれた紅茶である。
スリランカは、それほど裕福な国ではない。東北の震災の起こる前に、スリランカ自身もスマトラ沖地震により、津波の被害を受けている。多くの人が亡くなり、産業にも大きな打撃を受けた。
その経験があったからだろうか。日本で震災があった時、スリランカの人々は、「何かできないか」と思ってくれたらしい。
『ミツティ』と契約している茶園の人たちは、「どうする?」と相談し。「うちから送れるものあったっけ」「茶葉しかないよな」となったようだ。
「うちのお茶、送るから。なんか役に立てて!」
いきなりの連絡には、『ミツティ』がわも驚いただろう。
しかし、すぐに動いた。「茶葉があるなら、売らなきゃね!」
お茶は、生ものである。食品なのだ。置いておいても、劣化するばかり。新鮮な茶葉があるなら、新鮮なうちに売らなければ、茶葉にも、育てた人にも、申し訳ない。
送られてきたのは、スリランカのブレンダーがブレンドしてくれた茶葉だった。ウバをベースに、やわらかな味。
『ミツティ』は普段、茶園の特徴を前に出して売っているため、ブレンドはあまり売らない。でも今回は特別。『応援チャリTea』と名前をつけ、販売した。
売り上げを、東北の支援金として寄付すると明記して。
震災の支援は、直後だけすれば良いものではない。一年後、二年後にも必要なものだ。生活基盤を失った人には収入が限られる。怪我や病気で健康を失い、病院に通い続けねばならない人なども多く出るからだ。
しかし時が過ぎれば、世間のほうも、「支援金、出すのはちょっとなあ」となってくる。
別におかしなことではない。支援金を出すほうにも、自分の生活がある。
さらに、支援金を出しても、それがどのように東北の人の暮らしに反映されているのか、わからないというのも大きい。震災直後は報道も多くあったし、壊れた町が復興してゆく姿でわかったが、時が過ぎると人々のメンタルなどの支援に移ってゆくため、出したお金がどう使われているのか、わかりにくくなる。
で、『応援チャリTea』。
これ、良いアイディアだと思った。
お茶を買うことで、東北の支援になる。買った人は買った人で、おうちで美味しくお茶が飲める。
単に、出すばかり、頼まれてばかりでは、支援する方も、しんどいのだ。
「ああ、これ美味しい」
「これ楽しい」
そういうことがちょっとあれば、自分の生活を犠牲にしない範囲で、無理なく支援ができる。
たとえば、友だちと小さな「おうちティーパーティ」を開く時。
家族が集まる、何かの行事があった時。
このお茶をさりげなく出して、「美味しいよね」と言い合うことができたなら。楽しい支援となるだろう。
無理なく、楽しく。続けられる支援というのは、そういう面を持っている。
探せば、他にもあるだろう。こんな風な、お金を出す側にも、お得感のある支援。
できれば一度だけでなく。繰り返して購入し、惜しげなくどんどんほかの人にふるまって、「美味しいね」「楽しいね」と言い合ってほしい。
2014年01月04日 書き下ろし
※『ミツティ』のホームページに、今もこのお茶は載っています。