ホワイトボード 3
買いました。ホワイトボード。設置は他の人に頼みましたが。
で、これはもう、やめとこうかと思いましたが……、前回のホワイトボード2の会議の、もめごとの詳細とか。その後、どうなったかっていうのを、書いておこうかと……、どうだろう。読んでる人いるのかな、こういうの。
☆★☆
大騒ぎになった会議ですが。
なんか、わたしが出張ったみたいな感じになってしまって、……アレですよ。二十代ぐらいの男性って、わかると思いますが、
自尊心すごいんですよ。
目立って仕切ってるな、みたいな人間みたら、絶っっっ対、素直に従ったりしません。
試してやれ、みたいなの仕掛けられます。
わたしは書記でした。
で、「意見を言って下さい、書き出しますから」と言いました。
さらに、司会は、うろうろしている状態。
どうなったか、想像できると思います。
集まった数十人の青年たちは、
一斉に大声で、自分の意見を怒鳴り始めたのです。順番とか一切考慮せずに。
「書くって言ったんならできるよな」
みたいな目で見られました。聖徳太子じゃないんだぞ、わたしは!
書いたけどさ! 怒鳴られる意見を一つ一つ、書いたけどさ!
板書しましたとも! 全部!!!
五十ぐらいあった。ボードが全部、テーマ案のみで埋まるなんてのを見たのは、初めてでした。
叫ばれる言葉をひたすら書きなぐり、左上から順番に書き続け、段落を変えてまた書き、書き、右下まで埋め続けました。
最後の一人が言葉を止めた時、その言葉を書き記し、ばん! と最後の文字を叩きつけるように書き終えるとくるりと向きなおり。
「書きもらしはありませんか。自分の意見があるかどうか、確認して下さい」
無表情に言いました。なんかもう、表情とりつくろってる余裕なかったし。
そうしたらその瞬間。
「おお~~~~!」
なぜか拍手がわきました。なんでやねん。
プロだ! とかいう言葉も聞こえたけど。こんなんでプロなんて、なりたくないぞ。
で、みなさん、自分の意見があるかどうか確かめようとしたのですが。
相変わらず、我先にしゃべりだそうとする。大声で。人を押しのけて前に出ようとする。とにかく自分を一番にしろというみたいに。
小学生か。
司会はうろうろ。おろおろ。なんだか、思考が全部ふっとんでってる感じです。
だから、わたしは書記なんだって……。そう思いつつ。わたしは、パンパン、と手を叩いて。静かになった所で言いました。
「発言をする時は。自分の名前をまず言う! どこの教会所属なのかも言って下さい。
みなさん、ほとんどが初対面です。あなたの意見を書こうとしても、誰のものだかわからないでしょう。
まず、自分の名前と所属教会を言ってから。それから発言して下さい」
この意味を翻訳すると、
『好き勝手喋るんじゃねえ、バカたれが! ちったあ礼儀正しくしたらどうなんだ、ゴラア!』
言われてみなさん、しん、となりました。
アレです。
名乗ってから、という事になると、迂闊なこと言えないのですよ。人というものは。
名前がわからない、顔が見えていない、匿名、みたいな状態だと、調子に乗って、やりたい放題やっちゃうものなんですが。
名乗ってから、となると、理性が戻ってくる。客観性が戻ってくる。
なんかこう、静か~になりました。
「でもさ~。もう黒板、いっぱいじゃね? 書くとこないよ」
一人が言い。
「それになあ。これ、どうするよ。なんか、ありすぎる」
別の一人が言いました。
そりゃそうです。
案が五十もあるんですよ。それをこれから吟味しないとなんですよ。
一個ずつ見ていったら、何時間かかるかわかりません。全員、うわあ、という顔になりました。だから、調子に乗って、好き勝手に言うから……。
そして、司会は。
マジメな大学生の彼は、
やっぱり、うわあ。という顔をして、呆然と黒板を見ていました。
「どうしましょう。これ」
ひそひそ、と問われました。そんなん言われたって。わたしの仕事は書記することで、仕切ることじゃないんだよ。
でも彼は、こわばった顔でこちらを見ている。
黒板は文字でいっぱい。
会議の参加者は、我に返って、どうしようみたいな顔。
「まあ、最初の予定通り、休憩しましょう。みんな、頭冷えるだろうし」
棚上げを提案してみました。
「あ~……、でも、これ、どうしたら」
「うんまあ……なんとかなるんでない?」
根拠はありませんでしたが、そう言って、休憩を入れました。司会の彼はなんだか、胃が痛いみたいな顔をしていました。
休憩の後。
会議が再開されました。
しかし、この時には、みなさん、ほどよく頭が冷えて、
五十もあるテーマ案を見るの、もうヤだよ。みたいな顔になっていました……言ったのはおまえらだろうが。わたしにこれ、書かせたのもおまえらだろうが!
「どうしましょう」
そして早々にわたしに振る司会の男性。だから、わたしは書記なんだって!
「あ~~~……」
わたしはボードを見て。うーん、と首をひねってから、言いました。
「まあ。多すぎますよね、これ。ちょっと整理しないと」
すると、「みんな一生懸命に考えてきたんだ! 消すなんてダメだろう!」という突っ込みが。だったら、どうするんだよ!
「消しませんよ。見てください」
わたしは、黒板を指さしました。
「休憩の間、みなさんも、見ていたでしょうし。わかると思うんですが。
明らかに、同じ意見がありますよね」
ざわざわ。と、なりました。
「え、そう?」「いや、わからん」とか言っています。君ら、見とらんだろう、自分の意見の所しか。
「ここの、~~について、というのと。~~を考えて、というの。同じじゃないですか、言ってること?」
実際はちょっと違うのですが、そこは強引に。似てるよね、同じだよねとたたみかけました。
そうすると、その意見を言った本人も、あれ、似てるな、と思いだして。
「ああ、そうですね。ほんとだ。同じです」
言質取った。
「じゃ、この二つのうち、一つは消しても問題ないですね? 同じ意見だから」
その場にいた青年たち、「あ~」という顔になり。
その意見を出した人が、なんとなく空気を読んでくれて、「あ、それで良いです」と言ってくれ……ありがとう。こうして、案が一つ減りました。
その後は、なしくずしです。
「こんな感じで、同じ意見とか、似た意見をまとめていきましょう。そうしたら、十個ぐらいまで減ると思います。
これは、意見を消しているのではありません。
まとめているのです」
やたら重々しく言うと、妙に納得したらしい。
あ、これとこれ、同じだ、とか、似てるから、まとめられるね、とか、わいわい言い始めて、最終的には、テーマ案は三つにまで減りました。ブラボー。
その後は、普通に話し合いになって、どうにかテーマが決まり。よかったね~、という感じでごはん食べて、解散!
……と、なれば良かったのですが。
司会の彼が。落ち込んでしまい。それをなぐさめるという仕事が最後、わたしには残されていました。だからわたしはただの書記なんd、
「ぼく、どうしてこうなんでしょう……何にもできなかった……」
「いや、がんばってましたよ」
「ゆずはらさん、いてくれなかったら、どうなっていたかと思うと」
「うん、びっくりしたよね。わたしも驚いたし」
この場合は、何を言えば良いんだ! と思いつつ。
「あ~、あの、Aさん。良い司会って、人それぞれなんで。目立って仕切るのばっかりが良いってわけじゃ、ないんですよ。」
「そうですか?」
「意見を言うのは、会議に出た人だからね。○○さんの意見は、面白かった、とか。△△さんの意見は、印象に残った、とか。いろいろありますよね。
それで良いんですよ」
「え?」
「意見、言った人より司会の方が印象に残ってたら、その会議、何にも決まらなかったみたいな事になりますよ。
だ~れもちゃんとした意見言わないで、適当に発言してたってことでしょ」
「はあ」
「だから、司会は、話題に登らないぐらいで。それで良いんですよ。大事なのは、会議に出た人が自分の意見を言った、って。そう思えることでしょ。
力足りないと思った時にはそれで、できそうな人に振っちゃって良いんです。それも司会の仕事だから」
「そうなんですか?」
「そう。で、なんとかなったな~と思ったら、素知らぬ顔で、「良い意見でしたね!」とか言うんですよ。それでみんな納得するし」
「なんかそれ、ペテンみたいです」
「どうして? 司会の仕事は、人の意見を聞いたり、暴走しそうな人を止めたりすることでしょ。
大騒ぎにならないようにするんですから、暴走した人を止められそうな人がいたら、さっさと力借りて正解です。
自分が意見言ったり、飛び出して止めたりしていたら、「休憩します」とか、「会議を一度止めます」とか、言う役の人いなくなる。
自分が意見言うのも、飛び出してとめるのも、本来、司会の仕事ではありませんよ。
人に力を借りて、それで会議を成り立たせるのが、司会の仕事です」
もっともらしい事を言いました。
適当です。
でも、彼にはなんだか、えらい感銘受ける言葉だったみたいです。
その後、解散して、この会議に参加した人は各地に戻って行ったわけですが。
思いもよらない事態が発生……あのさあ。
あの会議に出ていた人、全員、
わたしのことを自分より年上だと思っていたらしい。
再会した時、敬語使われたんで、なんでやねんと思っていたら……、ちゃうわ! あの時のわたしは、
おまえらより年下だったんだ~~~~!!!!
自分が若年寄な人間であったと思い知らされた、事件というか、経験でございました。
2012年07月17日




