歌劇『カルメン』
機会があって、オペラ『カルメン』を観た。
ビゼーの作品。初演はえらい叩かれたらしい。
有名な曲がいくつもあって、「ああ、これ知ってる」となるが、実際に一から観たことはなかった。
で、観てきたのだが……。
以下、あらすじ。
カルメンは自由奔放な、ジプシーの血を引く女性。タバコ工場の女工をしている。
タバコ工場の女工たちというのは、町の男たちから、「色っぽい」と言われている。なんというか、そういう目で見られやすい立場なのだ。
そんな中、カルメンは、誰にもなびかない。男たちの手をするりとすり抜け、「あんたのこと? 好きになるのは明日かしら? でも今じゃないわね」と笑いながら通り過ぎる。
そんなカルメンは、立場の弱いらしい女工たちから、したわれてもいるようだ。
ある日、町の兵隊たちに人員の補充があり、伍長のドン・ホセがやってきた。
彼は真面目で、任務以外のことに目を向けたことのないような堅物男。
そんな彼とカルメンが出会う。
色っぽい彼女にどっきりするものの、慌てて目をそらす。
肌もあらわで色っぽい彼女は、彼にとって、魔物のように見えたのかもしれない。俺には婚約者がいると自分に言い聞かせながら(ミカエラという娘さん。しとやかで清純)。
カルメンも特に、彼に興味を持たなかった……が。
運命の転換。カルメンが仲間の女工と喧嘩をしたあげく、刃傷沙汰を起こす。刃物で相手の顔を切ってしまう。
逮捕された彼女は、逃げようとして、ドン・ホセに色仕掛け。逃がしてくれるなら、恋人になるとささやく。
ドン・ホセ、あっさり陥落(かわいい婚約者いるはずだろ、おまえ……)。
カルメンは逃げ、ドン・ホセはつかまって営巣入り。
まあ……、男とは、こういうものかもしれん。とも思った。真面目な人ほどね。うっかり馬鹿なことやっちゃうんだよね。悲しいよね……。
営巣から出たドン・ホセは、カルメンを追い求め、どんどん悪の道へ。盗賊にまで身を落としてしまう。
カルメンは適当にあしらいながら、ドン・ホセを翻弄しまくる。
そこへ現れたエスカミーリオ。闘牛士の青年。
若く、美しく、正義感あふれ、情熱的な彼にカルメンは、あっさり恋に落ちて、ドン・ホセを振ってしまう。
彼の立場って……(*_*;
ドン・ホセは、嫉妬丸出しでエスカミーリオと決闘したりするが、彼を追ってきたミカエラに涙ながらに説得されて、町に戻る。
で、ラスト。闘牛場で、エスカミーリオが牛と戦う日。
カルメンは彼を応援しにやってくる。
ドン・ホセは、カルメンにすがりついて、捨てないでくれと懇願。でも、
思いっきりフラレる。
カルメン容赦ない。
ドン・ホセ、絶望。やがて絶望は突き抜けてしまい、怒りへ。
彼はカルメンをナイフで殺してしまう。そうして死んだ彼女を抱きしめて、慟哭する。
背後では、牛と戦うエスカミーリオをたたえる、人々の歓声。
……と、いう話でした。
観て思ったのは、
「オペラ座の怪人って、これが元ネタだったのかなあ」
でした。
いや、まあ。うん。三角関係って、永遠のテーマだね。カルメンは三角じゃなく四角だったけどね。ミカエラ気の毒すぎ(^_^;)
男の目から見たら、悪女というのは、こういう風に見えてしまうのかな、とか。
カルメンの育った環境は、どうだったのかなとか。
子供のころから、ジプシーの子と言われて、差別されて育ったら、どこかひねくれずにはいられないだろうな、とか。
女工たちに慕われているのは、彼女なりに、親切にしてくれた人には親切を返す、みたいなことやってたんじゃないか、とか。
実のところ、エスカミーリオもそんなに好きなわけじゃなかったのかな、とか。
考えてしまいましたよ。
良く考えたら、カルメン、確かに奔放、本能で生きてます、な女性なんだけど、
案外普通じゃないか、と思いました。
こういう人、程度はそりゃ違うけど、わりと良くいるのじゃないか、と。
また、一本筋の通った女性でもありました。世間の言う善悪は関係ない。自分に親切にしてくれた人には、自分なりの親切で返す。
だから、盗賊に手を貸したりもする。自分をかくまってくれたから。
彼女の歌う、「自由! あたしは自由がほしい。自由でいたいの!」という叫びが、
彼女にとっての真実ではなかったか、とも。
男たちは、どうあっても、彼女を、自分の付属物のようにしか見ない。扱わない。
いくら、美しいと言っても、恋をささやいても。結局、最後はジプシー女とののしって立ち去る。
踏みつけられるのはもう、ごめんだ。彼女の心は、そんなものだったのでは、と。
こういう風に見るのは、間違いかもしれませんが。なんだかいろいろ、考えてしまいました。
エスカミーリオは運が良い男だね、とか(笑)。カルメンと恋人になっても、三日で大ゲンカして、大けがして別れてるよ、彼。幻想が幻想であるうちに、別れられて良かったのかも。いや、悲劇なんだけど。
しかし、
困ったこともありました。
オペラ歌手のかたの解釈とか、いろいろあるんだろうけど、私の観た「カルメン」は、
主役のカルメンが、それほど毒々しくなく、どこかクールな感じだったんですね。
「女」! という感じではなかったんです。
そしたら……、ドン・ホセが。
口説いて、泣いて、すがってまわる、ドン・ホセが。
「どうしよう。ドン・ホセが、乙女に見える……」
ちょびヒゲ生やしたおじさんなのに!
しかもちょっぴり、メタボっぽかったりするのに!(オペラ歌手だから……)
悪い男にだまされた、純情可憐な乙女に見え……げほんごほん。
なぜなんだ、私! と自分で自分にツッコミ入れつつ観てました。いやもう……いやもう。どうしようね。
とりあえず、
面白かったです。カルメン(^_^;)
2011年09月28日




