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17 歳  作者: 灯凪田テイル
7/10

捉えどころのない好き


「先生は、夏菜さんと結婚しないの?」

 杏胡のほうは相変わらず、ベッドの中であろうとなかろうとお構いなしに訊きたいこと訊き、言いたいことを言ってくる。

 まだ子供なのだと思えば、それまでなのだが、その根底に嫉妬の感情は見えない。

「20代30代は、仕事が面白い時期なんだ。夏菜くらい仕事ができれば、女だってそうだろう」

「ふぅん」

 つまらなそうに、杏胡が伸びをする。まるで陽だまりの猫だ。

「先生はどうなの?仕事、面白い?」

「え」

 ちょっと面食らった。僕は…と考えて、思わず正直に答えてしまった。

「僕は、与えられたものを受け入れるタイプなんだ。そうやって生きてきたから」

 なんだか聞いたことのあるフレーズだ。

「それより、杏胡はどうなんだ。このまま高校へ行かないつもりか?」

「それ、つまんないよ」

「え?」

「つまんない大人が訊くような質問しないで」

「いや、でも。夢くらいあるだろ?」

「夏菜さんみたいにバリバリ仕事して、先生みたいなお医者さんの彼氏見つけて、とか?」

「夏菜のことはいいよ」

「どうして?罪悪感?」

「揶揄ってんのか?」

「だって」

「なんだよ」

 ぷいと、そっぽを向いてしまう。かといって機嫌が悪いわけでもない。いや、むしろ機嫌がいいほうだ、今日の杏胡は。

「夢って絶対、持たなきゃいけない?」

「いや、絶対ってことは…」

「将来って言葉より、刹那って言葉の方が好き」

「なんで」

「なんか、ヒリヒリした感じがするから」

 17歳の頃の自分は、何を考えていただろうと凌は思った。多少なりとも将来のことを考え勉学に励んでいたはずだが、よく思い出せない。しかし得体の知れない不安は、17歳のクラスメートの誰もが抱えていたような気はする。17歳は、そういう季節なのだ。

「杏胡、なんで僕なんだ?初めて会ったとき、おじさんって言ったじゃないか」

 ずっと訊きたかったことを凌は口にした。

「はずみ?」

「はずみ?」

「だってあの夜、雨が降ったのも、先生に帰り道で会ったのも、お腹がすいていたのも、先生が料理上手だったのも、オムライスが好物だったのも、なんだか全部偶然な気がする」

 わからない。

「でも、先生のことは好きだよ」

 どんな風に?男としてか?それとも足長おじさんみたいなものなのか、僕は。

 杏胡との捉えどころのない時間が、こうして膿んでいく。それを嫌いではない、と凌は思った。


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