霊廟の守護者
王都の北には王家の庭と呼ばれる森がある。
普通は入ったらいつの間にか外へ出ていると言う場所で、奥の方は薬草の類が豊富と言われているが奥に行く事が出来ない。
普通ではない者だけが奥に行く事が出来、そこには霊廟があり封印を聖獣が守っている。
目指すはその封印な訳だが聖獣は何とかするとヒロ君は言っていた。
だから大丈夫と軽く言っていた。
王都を出て北へ向かうこと5日程で森が見えて来た。
かなりの大きさでファンタジー世界でのお約束な薬草とか取れそうだ。
「ここの奥に霊廟があります」
「霊廟」
森の中は以外に日が差し込んで明るく見通しも良い。
しかし道など無く足元の草を掻き分けながら進んでいるが方向はあってるのだろうか。
「本来は霊とかを奉っている場所なんですけど、そこに月のジャンが封じられてます。ずっと昔に聖女が封じたらしいです」
「つまり、未来でその封印が破られるって事」
「そうです」
今現在封じられていてそれが数年後解き放たれる。
しかしこれは良く考えたらまずいのではなかろうか。
「もしかして俺達が行くから後から封印が解けるとか無いよね」
封印が解けたからヒロ君が来た。
しかし俺達が向かう事で封印が解ける原因になるとか、よくSFなんかであるパターンだ。
「いえ、それは無いです。封印を解いたのは聖女だったんです」
その名を口にした時、ヒロ君の雰囲気一瞬変わった。
「聖女がどうしてそんな事を」
「さあ。どうせくだらない理由ですよ。そして月のジャンは聖女について行き王都で暮らします。後にそれがバレそうになって二人でセカイエへ移住します。そこに魔王が現れて戦いになり迷宮が溢れセカイエは地獄になりました」
「君は魔王に会ったのか」
「はい」
「どんな奴だった」
杖を持った老人だったり巨大な獣など色々あるがこの世界ではどうなんだろう。
「アイツは、どんな姿だったかな」
少し考えるそぶりを見せた後、大きなため息をついた。
「どうしたんだ」
「それが思い出せません。時間移動を使うと記憶を落とすんですよ」
「記憶を落とす」
「聖剣も普通に使う分は問題ないんですが時間移動は別格らしくて、完全に使えれば話は別なんですけど今の俺ではそうもいかなくて、まぁ力の代償と言う奴ですね」
つまり帰るために使えばまた過去を失うと。
「2回使っただけですがかなり落としたと思います。もう日本にいたころの事は殆ど憶えていません。アレですよ。よくある奴です」
ヒロ君はそう言って軽く笑った。
「それでも月のジャンは倒さないといけないと」
「そうです。その辺の事は憶えています」
かなり重大な事だと思う。
記憶を無くしていくと自分が何を無くしたか分からないはずだ。
結構軽く言っているがどれほど恐ろしい事か分からないはずが無い。
だがそうなる事が分かっていて、それでもやらなければならないと過去に来たんだ。
「それでですね、霊廟には聖獣と呼ばれるレッドドラゴンがいます。戦う必要なないのでやりすごしましょう」
「ドラゴンか」
ファンタジーの代名詞だな。
ドラゴンと言っても種類によって強さが違うがレッドドラゴンはどうだったか。
世界観によって違うが大体白とか黒が強かったような。
「見えてきました。アレが霊廟です」
森の中で開けた場所にあるそれは石造りの大きな神殿のようだ。
そしてその正面には大きな赤い竜がいてじっとこちらを見ていた。
「見られてるけど」
「そうですね。森に入ってからずっと視線を感じてました。奴がこの森にいる限り女神の力で瘴気を纏った存在はこの森に入れないようになってます。つまりこの森全体が奴のテリトリーだって事です」
魔王は別ですけどと付け足した。
そう言うとヒロ君は臆せずに真っ直ぐにドラゴンに向かうので俺も着いて行く。
でかい。
近くで見るとなおそう感じる。
「何用だ」
しゃべった。
「女神から加護を得ている者達。もう一度問う。何用か」
女神の加護って俺はともかくヒロ君は貰ってないはずだ。
なら嘘を言っているのだろうか。
彼は嘘をつく様な少年ではないと思っていたんだが。
「ここに封じられている月のジャンを滅ぼすように女神から言われたんだよ」
嘘ついた。
真顔で大嘘をついた。
「アレは滅ぼせない。大気に漂う煙のような物」
「普通は無理だろうけど、この人なら出来る」
二人の視線が俺に集まった。
「この人はカーナではなくローの使徒だ。その分強力な加護がある」
「ローだと」
「そうだ。女神ローがこのままではまずいから始末しろと言った」
言ってない。
ローさんはそんな事言ってない。
「そうかローが」
おや、なにやら様子が。
「あの女神の使徒がいるとはな」
ドラゴンは大きく息を吸った。
不味い。
アレは絶対ブレス攻撃だ。
そして俺に向けて炎のブレスを吐いた。
問答無用とは正にこの事で視界が真っ赤に染まる。
あっ死んだなこれは。
思わず閉じた目を恐る恐る開いて見ると予想に反して俺は燃えていなかった。
熱も感じない。
「身の安全は保障すると言いました」
いつの間にか俺の前にヒロ君が剣を交差させて立っていて見えないドームの様なものが俺達を覆っていた。
魔法の類だろうか。
炎は俺達を避けて左右から後ろへ流れていく。
その様は非常にカッコイイと言わざるを得ない。
炎が収まるとヒロ君はヒュッと剣を振り片方をドラゴンのほうへ向けた。
それも実に様になっている。
しかしあんな物を吐いたら森が火事になるかと思いきや、全く燃えていない。
どういう事だ。
あれは脅しとは思えない。
間違いなく本物の炎だった。
「それで何の真似だ」
「ローはカーナ様の造られた世界を壊す。封印を開放するつもりだろうがそうはいかぬ」
「お前俺の話聞いてたか。奴を滅ぼしに来たんだよ。それに神が世界を滅ぼすってのにそんな面倒な事はしない。ただ消せば良いだけだ」
どうしてそんな事を知っているんだと聞きたいがここは黙っていよう。
「戯言を。ローの使徒の言葉など信じられるものか」
ドラゴンの表情なんか分からないがアレはこっちを馬鹿にしている。
「やっぱり羽のはえたトカゲごときに言葉は通じないか。ああ、憶えてるぞ。お前のせいだってな」
ヒロ君もあっちを馬鹿にしていた。
空気が固まった。
「人間風情が!」
「吼えるなよ色ボケトカゲが!」
どうしてこうなった。




