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お揃いですね

連絡馬車の中に最後まで残っていた父子。

驚いた事に、父親は人間じゃ無かった。オークなのだ。だけど私は彼等に脅えるどころか、幼子の泣き声が聞こえたた途端に自分が持っていた飴玉を差し出していたのである。彼らが父と私の姿に見えたから。彼が頭から被っている毛布の中にいるらしい幼子も、きっとオークの姿の魔物なのだろうけれど。


「そんな気遣いを受ける理由は無いが」


「私は先日父を亡くしまして、あなた方が幼い頃の私と父の姿に思えましたの」


「ふふふ。君達親子はこんな感じだったのか?」


オークは毛布を下ろした。

顔はオークであるが、彼は人間の特徴の方が大きいと思った。

いえ、人間なのかしら?


頭にオークの豚耳なんて無く、普通に顔の横に人間の耳が付いている。

焦げ茶色の髪は短く刈られているけれど、平民風どころか王都で見かけるおしゃれな騎士のよう。服装だって紳士の旅装だわ。そして彼が抱く子供は、あら、まあ、人間だけどこの子も普通の子供と言えないわ。


裕福な商家か騎士家の子供が着るようなジャケットと半ズボン姿してるけど、フワフワの金髪と水色の瞳を持つ彼は、天使にしか見えないわ。翼は無いけど、こんなきれいな子は知らない。

天使は私に姿を晒したことに脅えるどころか、泣き顔をにこっと笑みに変えて私に手を差し出した。


握手?

あ、私が飴玉を差し出したままだったわ。


「どうぞ」


「あいがと」


舌ったらずの言葉が可愛い。

まだあるのだとポケットを探ろうとして、私は手首を掴まれた。

オーク父に。


でも、私を掴む手は蹄がある豚の手どころか、大き目でごつっとしているけれど指が長くて優美な男の手であった。

顔だけオークなんて魔物がいるなんて、聞いた事無い。


「あの」


「何を出そうとした?」


「飴玉、です。クッキーは持ってきていないの。学園から持って来れたのは下着と緊急用にまとめていたお金、それからひとつかみの飴玉だけだったもので」


「緊急って、その制服は貴族子女ばかりの魔法学園だろう? 何かあったのか?」


「父が亡くなったので学園を追い出されましたの」


嘘ではない。

はしょらずに説明すれば、父親が亡くなって後ろ盾が無くなったからと婚約破棄され、ついでに私の友人と彼に浮気行為が会った事も暴露された。そして彼らの背信行為を正当化するためなのか、彼のご学友が私を魔女とでっち上げて来たから、私は学園から逃げるしかなかった、だけど。


学舎から寮に逃げ込んで、誰かに拘束される前にと寮を飛び出すには、鞄に下着とお金程度しか詰め込められなかったのよね。

でも、常に緊急用にお金と下着はまとめておきなさいというお父様の教え、とってもとっても役立ったわ。


「腐ってやがるな」


私の手首からオークの手は外れる。

なんだか彼は私の事情に同情して怒ってくれた感じもする。

ぶっきらぼうで人間じゃない人なのに、今まで出会った誰よりも情がある人ね。


「どうして座る?」


あ、私は彼の横に腰かけてしまっていた。

人寂しかったのかしら、情けない。


「ええと。お喋りをするのに立ったままでは無作法ですわ」


「はっ。俺に頼られても何もできんぞ。俺は逃亡者だ」


「まあ。あなた様も逃亡者でしたの?」


「も、ってどういうことだ?」


「いえ、べつに」


「別に?」


オークは私を時とみる、見る、見つめ続けている!!

私はこの嫌な視線から逃れるために、己の秘密を晒すことにした。


「魔女だって弾劾されたんです」


「それでその姿か。あそこには第三王子がいるはずだ。時代遅れの魔女弾劾なんて愚行を止めることもしなかったのか?」


「――前回の魔法発表会で、私が一等を取りましたの。私が魔女だという事で学籍剥奪になれば、殿下が一等に繰り上がります」


「それで一等になっても誉れにならんだろうに。躾が必要だな、あのガキは。で、魔法発表会で一等取れる程の力があるくせに、君は黙って逃げただけなのか?」


「私の魔法は置物とかに刻まれた記憶を映像化するだけです。無害そのものなんです。あと、抵抗して、誰かをケガさせたそこで自分が魔女だと認めたも同じになるではないですか!!全校生徒が敵な状況なんですよ。人間は猪突猛進だけではだめなんです」


オークは私を睨んだ。

あ、猪突猛進で、オークをディスったとも取れる!!

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