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第1話(Aパート) 異世界は朝の7時

勉強のために初めて小説を執筆しています。

シンプルで王道な作品を目指しています。

少しでも楽しんでいただければ幸いです。

「……ま…」


「………さま…」


薄い意識の中、遠くから声が聞こえる。


「…ど……ゆう……さま…」


声が近づくにつれ、意識も次第にハッキリしてくる。声の主は女性のようだ。


「どうか……を…勇者様…」


「どうかこの世界を救ってください。勇者様!」


ハッキリと聞こえた言葉と共に祈るような女性の姿が見えたその瞬間、意識は完全に覚醒した。


◇◆◇◆


飛び起きるように目を開くと、そこには知らないようで知っているオーソドックスなファンタジーな町並みがあった。

これはもしかして…


「異世界転生だーーー!!!」


考えたと同時に叫び声をあげていた。

声に驚いた周りの人々の視線を感じ、ハッと我に返る。


本当に異世界転生だろうか…?


そう思うと体は自然に頬をつねり痛みを確かめる動作を行っていた。

漫画やアニメ特有の仕草だと思っていたが、信じられない光景に直面したとき、人は意識に染み付いたそのテンプレートな行動をとってしまうようだ。


「うん…痛いな。」


ただその痛みだけで全てが確証に変わる程、単純な思考の持ち主でもなければ、整理できるほど頭が冴えた状態でもなかった。


開始早々、ステータスは【こんらん】状態だ。


整理をしよう。

名前は半出(はんで) 逸斗(いつと)

27歳でアニメとゲームを愛する会社員4年目の独身男性だ。

今日は確か憂鬱な月曜日で、いつも通りに電車に乗って……その先は思い出せない。


ただ、この世界に『転生』しているならば自分の身に何かがあったのは間違いないだろう。


「死んだのか…俺……。」


正直何かこれといって人生に大きな目標があったわけでもないし、すごく充実していたわけでもない。

それでも、ただなんとなく生きて、好きなものを追いかけている人生は嫌いではなかった。

これまで、死んだ時に特別な未練が残るような生き方はしていないと思っていたが、改めるとこみ上げてくるものはあった。

そんな感情に耐えきれず、いつの間にか自分でも分かるくらい情けない声をあげながら泣きじゃくっていた。


異世界の町中で泣きじゃくる成人男性はこの世界にどのように映っていたのだろうか。

数分程泣き続け、涙が枯れてくると先程までの憂鬱な気持ちや混乱が消し飛び、思考はクリアに冴え渡っていた。


「さて、異世界ライフを楽しむか!」


この男、逸斗の気持ちの切り替えの早さは正にS級スキル並のものであった。


「目覚め際に聞こえたあの声…勇者と俺を呼んでいたのか?それならやっぱり俺は…この世界を救う勇者として転生したんだ。間違いない!」


となるとこれからするべきことは…。


生前は異世界物のアニメをよく視聴していたし、RPGもよくプレイしていたので、異世界物におけるおおよその流れは理解していた。


だからこそ1つの疑問が浮かんだ。


ここまで約数十分の時間が経過している筈だが、一向になにも起こらない。

こういうのは大抵、道を指し示してくれるキャラクターが近くにいたり、お告げがあったり、なにかイベントが発生することで物語がスタートしていく…はず。なのにそれが一切ない。


まさか…チュートリアルのないオープンワールドゲー?!

こんなコテコテのRPGの世界観なのに?


困惑しながらも、辺りを見回していると街の中央と思われる箇所に一際目立つ大きな城が見えた。


なるほど。あそこが王様の城で魔王討伐の命令を受けるに違いない!

確信した逸斗は意気揚々と城へ向かった。


◇◆◇◆


「どうすりゃいいんだぁー!!」


城に着いた数分後、逸斗は再び叫び声をあげていた。

この城は確かに王様の城。それは間違いなかったのだが、門番に追い返された。

それもその筈、いきなりアポ無しでやってきて自分は勇者だと名乗るような危険人物を国の王に会わせてくれる訳もない。


「となると…フラグが足りないのか?」


とはいえイベントが発生しなかった以上、待ってては何も起こらない。

仕方がないのでまずはアイテムや装備を揃えるとしよう。

こういう時RPGで取る行動と言えば――


▼100Gをてにいれた!


「そう、民家漁りだな!」


謎の壺、タンス、何故か置いてある不自然な宝箱からあれよあれよとアイテムが見つかっていく。


流石RPGの異世界!

というかなんで大きな壺の中にコイン一枚だけ入っ

ているのだろう?


実際に現実として直面するとシュールなものである。

上々の成果を得てすっかり調子づき4件目の民家の2階の部屋のタンスを漁っているその時だった。


「キャーー!!下着泥棒!!!」


民家の家主とのエンカウント。

思いもよらぬ自体が起こった。

いや、ここはゲームの世界ではなく異世界の現実なのだ。予想しておくべきだったと逸斗は後に思ったが起こってしまってはどうしようもない。


「ちがっ…冤罪です!!」


「なにが違うのよ!しっかり下着を握りしめてるじゃない!この変態!!」


「!?下着なんて…っ」


慌てふためきながら自分の左手を見ると確かに女性物の下着を握りしめたいた。

無我夢中でタンスを漁りすぎた。


――終わった。


そこから先は早かった。

女性の叫び声を聞きつけた近隣住民が警察を呼び、弁明もさせてもらえぬまま現行犯で牢屋へブチ込まれたのだ。

当然、手にしていた下着だけでなくそれ以前に手に入れたアイテムも全て没収された。


ここは現実としての異世界でありながらゲームの世界ではないのだ。

現実と創作を混同してはならない。

そんな当たり前の常識を異世界にて突きつけられる。


逸斗は牢獄の中で再び情けない声をあげながら泣きじゃくり途方に暮れるのだった。

以降何話分か既に考えてはいるものの、まだ慣れていないので更新にお時間いただくかもしれません。

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