背景世界 要約版
歴史は、人が竜に滅ぼされようとしていた時に始まる。名のない魔術師は竜を魔法によって殺し、死んだ竜の魔力を元に巨大な結界を張って、およそ三千人の人々を救済した。これが現在まで残る人々の祖先となった。それまで孤独であった魔術師たちは一箇所に集まり、人と竜との戦いについて研究した。その結果、月の魔力によって竜を殲滅する方法が見出される。三人の魔術師が月の天頂にかかる位置で魔法陣を張り、月を鈍くも破壊した。月から溢れた魔力は世界を覆い、竜を喰らい尽くした。ただし弱い竜の一部は生き残り、その後も人々を苦しめた。名のない魔術師は結界内部に閉ざされ、およそ千五百年後に肉体が朽ちた。
救済された人々は各地へ広がった。内域の北東には無尽森林がありクドゥルが住み、西にはドーブニウ山脈が走り、多くのデンバクドゥルが住み着いた。人々は大河周辺、とりわけ剣河流域に集まり、そこでは架空の王の名を共有する魔術師たちが文明の発展を主導した。公共事業として多くのピラミッドが築かれ、使用期限のある貨幣によって経済も発展した。
レイスには早くから王権が成立したが、暗断裂によって一度滅んだ。その後、環レイスには失われた魔術の知恵を集める図書館群が築かれ、やがてその知識はオープ・パルクによって建てられた大図書館へ移された。
エンス、カン、ルガム、ドレイスは主要な文明地域として繁栄した。エンスでは天の神と地の神への信仰が発達し、カンでは「能」と呼ばれる才覚が重視され、演劇や歌唱、魔法による放送が栄えた。魔術の学校も多く置かれた。ルガムは短期間で急速に発展し、権威を失った王たちが西側の細長い宮殿群で暮らした。南西のドレイスは地熱地帯で、温泉と精霊信仰、ポルケの卵にまつわる信仰が知られた。
一方、レイスには暗断裂後、悪魔とも魔王とも呼ばれる悪しき魔術師たちが集まり、その土地を自らの思い通りに作り替えていった。中央レイスではハールワー人が勢力を持ち、東の内海周辺では都市国家が同盟を結んで海の帝国が成立し、貨幣経済が大きく発展した。
やがて魔術師たちは、魔術を使い続ければ世界そのものが滅びに向かうと観測した。そこで段階的に魔術を廃止することを決め、各地の図書館にあった知恵を廃棄し、大図書館へ知識を集中させた。魔術の使用が抑えられたことで世界は半安定に至り、魔術は大・中・小の状態でしか顕現しない離散化を起こした。
この時代、無尽森林からクドゥルがエンスやカンへ進出し、後に鉄の王国と呼ばれる王国群を築いた。デンバクドゥルの青銅の王国と合わせ、クドゥルとデンバクドゥルの時代が二百年近く続いた。
しかし魔術禁止に従わない悪しき魔術師たちは、人々を命糧として監禁し、魔力の根源として利用した。彼らはレイスで強大となり、なかでもザナレルは巨大な宮殿を築いた。その大きさは人が百年かけても巡れないほどで、現在もダンジョンとして残っている。魔王たちは多数の人々を犠牲として対妻と呼ばれる人型の霊体を維持することもあった。
やがて善き魔術師と悪しき魔術師の対立は魔法戦争へ発展した。これは人類史上最大の戦争として記憶され、ザナレルをはじめとする強大な魔王はこの世界から追放された。ただし弱小の魔王は各地に残り、新たな魔王も起こり続けた。魔法戦争後には海の帝国と、ルガム周辺の砂漠に勢力を持つ魔王たちが二つの大きな権威となった。
魔術の離散化から後、魔法革命がルガム南方で起こり、魔術の数値化が実現した。これによって魔術は以前より運用しやすくなった。一方でデンバクドゥルは次第に衰退し、レイスでは穢と同一視されるようになった。
中央レイスではオノノンド王国が勢力を伸ばし、その王ハーデンは大きな支配権を得た。だが建国千年祭の際、武闘大会に現れた名のない英雄との直接対決に敗れて死に、王国は崩壊した。その数年後、月が崩壊して六つに分裂し、破片が地上へ落下した。
ここから月の魔力を支配する者が覇権を争う月魔世が始まった。六つの月にちなみ六大魔王が起こり、レイスではダイマゴン・テイロクが台頭した。彼は牢獄に閉ざされていた魔王たちを解放し、竜や穢の軍勢を用いて全地に覇権を唱えた。
月魔世を終結へ導いたのがゼウンンレエエルである。彼は大図書館の館長を務め、全地の暗断裂を回避し、魔王と同一視される結界を消失させた。月魔世の終結を記念して甲魔歴が制定された。また名のない魔術師が朽ちる際に示した十戒が公表され、特に魔術師による人々の支配が禁じられた。
大図書館の危険な知恵と魔王の残骸を封じるため天空城が築かれ、七人の空帝が選ばれた。彼らは現在まで天空城を維持し、危険な魔術や魔骸の封印を担っている。
甲魔歴二百年代には日本から池田誠一が転移し、アトンハトンにイケダ王国を築いた。しかし王国は新・海の帝国を中心とする連合に攻められて数代で滅び、池田の存在も歴史から薄れていった。彼の残した霊的遺産として仏教とキリスト教が伝えられた。
甲魔歴千二百年代、世界中央部には中央八王国、あるいは中央八主国と呼ばれる国々が存在する。フィーネシア、セムル、ドーブニウ、イクツドゥーク、フェンフレイユー、フォーンフェヴォー、アーゲスティア、デレクタードである。




