第23話 フランは生みの親と再会する
「おわっ! なんかすごい賑やかなんだけど」
昼過ぎにたどり着いた所は王都の反対側に位置する、この国で2番目に大きな町。国境近くにあるから交易が盛んで人の出入りも激しいらしい。
「どうやら祭りがあるようだな」
パパも物珍しそうに辺りを見回している。至る所で華やかな衣装を来た人達が楽しそうに歌ったり踊ったり騒いだり。
屋台もいっぱい出てるし、音楽もあちらこちらから聞こえてくる。
「なんだか酔いそうです……」
人の波に流されてたママは目を回している。
どこかで一旦休んだほうが良さそうだな。
「ママ、はぐれないように手を繋ごう」
ママの手を取って道の脇に移動する。この1年で10cmくらい背が伸びて、引っ張る力も強くなった。まだまだ人混みに埋もれてしまう身長だけど、どうにかかき分けて進める自分に成長を感じる。
海での一件から1年が経った。
俺は変わらずパパ達と一緒に旅をしている。
魔物の活発化や魔族の動きも噂されてるけど、まだ大事件といえるようなことは起きていない。エイモンを始めとした騎士たちも各地を回って国民を守るために頑張っているらしい。
きっと魔族達は統率が取れていないんだと思う。
俺の予想だけど、魔族の残党をまとめていたのはヴァンだ。
戦闘面では平凡なヴァンだけど、魔物を生み出すことができるし俺の側近だったし、何よりも俺に期待を寄せていたのが奴なんだと思う。
俺を連れて行こうと単身で暴走するくらい魔王を信じ、他にいないと確信していた。
そんな強い信仰者のいない団体はまとまらない。
また組織を立ち上げる魔族が現れるかもしれないけど、それがいつになるかはわからない。きっと心配して過ごしても意味が無いんだと思う。
「私は少し休むことにします……」
宿を見つけひと息ついた俺たちは、祭りを見に行こうかと話していた。しかしママは思ったより人混みで疲れ切ってしまったらしい。
「じゃあパパと一緒に行ってくるね。何かお土産見つけてくる」
「楽しんできてくださいね」
ママに見送ってもらい、俺はパパと手を繋いで再び人混みの中へと戻った。
「これじゃあ撮影も難しそうだなぁ」
パパはカメラを持っていたが、なかなかシャッターチャンスを見つけられないでいるようだ。ギュウギュウに人に押されているし仕方ないだろう。
「どこか出店で食べ物買おうよ」
「そうだな、もしかしたら珍しいものがあるかもしれない」
海の近くということもあり、海産物系の食べ物も多い。
俺もパパも実は大食漢だ。ママには「胃袋は親子そっくり」と言われたくらいで、ある村に訪れた時は大食い選手権に参加してパパが優勝していた。
ある町ではナイフ投げ祭りがあって、俺は入賞した記念にへんてこな置物を貰った。
ある村では湖に主がいると聞いて、一日中ママと釣りをした。
ある森ではキノコ採りに参加して三日三晩キノコを食べ続けるハメになった。
ある港ではママが色んな漁夫に口説かれて俺は激怒した。
ある寂れた城ではパパが「幽霊!」と何かに驚いてひっくり返っていた。
この1年は本当に楽しいことがいっぱいで、毎日が幸せだ。
「おっ! お兄さん良い物を持っているね」
出店の店主の1人がパパのカメラを指差して話しかけてくる。
「それは勇者一行の魔法使いが開発した魔道具だろう」
「え、魔法使いが作った物だったのか⁉︎」
「しかも試作品だから素材にこだわりすぎて高級品になったっていう代物だ。一部の魔道具マニアには人気らしい」
「そうか……そうだったのか」
パパはカメラを見つめ嬉しそうに笑う。まさかこんな所でカメラのルーツを知ることになるとは。人が多い分、知れることも多いんだろうな。
「ウチの店も色んな魔道具を揃えているよ。お手頃価格で祭りを楽しむのにもってこいな派手な物もある」
「おおっ、それは気になるな」
ちょいちょい、完全に乗せられているよ。
やっぱりこの店主は販売目的でパパに話しかけたんだな。
「ちょっとパパ。変なの買うのはダメだかんね。ママにまた叱られるよ」
俺はパパに近づいて店主を牽制するように軽く睨んだ。
「……オリヴァー?」
相手は俺を見て驚きの声を出す。
オリヴァーは現世で俺が生みの親に貰った名前だ。それに聞き覚えがある声……。
店主がしゃがんで俺に目線を合わせたことで、逆光でよくわからなかった顔が見えるようになる。
「……父さん」
それは現世の俺の父親だった。
どうしてこんな所に?
俺の故郷の町からは遠く離れているはずだ。
「父さんって……」
パパも戸惑いの表情で父さんを見る。だけど父さんは顔をくしゃくしゃにして俺を抱きしめた。
「オリヴァー! よかった……生きていたんだな。ずっと探していたんだ!」
「俺を探してた……?」
「そうだ、あの時はすまなかった。私も母さんもお前に寄り添わずに冷たく突き放して……ずっと後悔してお前を探していたんだ」
まさか商売をしながら俺を探して各地を回っていたのだろうか。
「母さんは……?」
「母さんも一緒に来ている。今は買い出しに行ってるがすぐ戻ってくるはずだ。ああ……本当に良かった」
心がズシっと重くなる。俺を忌み子と罵る住民を止めず、ただ悲しそうな目で俺を見ていた両親。
なんて答えれば良いのかわからず、俺は助けを求めるようにパパの方を見た。
パパは虚をつかれたような、呆然とした表情で立ち尽くしていた。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次でラストです。




