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【完結】魔族の若様は転生して勇者の養子になります  作者: 城崎
第三章 魔族を選ぶか、家族を選ぶか
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第16話 フランは初めて海を見る

「フランさん。こちらに綺麗なお花がありますよ」

「わぁ、本当だ!」


 アルベルトがいた町を出て1週間。俺はユウとアルベルトの3人でのんびり旅をしていた。

 元々これといった目的が無いから始終雰囲気はほんわかしてるし、道中で襲ってくる魔物や野盗はユウが軽く捻り潰してしまうので心配がない。

 俺はただ2人に構ってもらいながらあっちこっち楽しく歩くだけだ。


 今年は魔物が増えて来たなぁとユウはボヤいていたけど、奴がいるなら問題ないだろう。


 最初は物足りなくなるかなと思ったけど、考えてみれば前世でも今世でも自由に旅ができてないので全部新鮮で面白かった。それはアルベルトも同じらしい。


「この花はフランさんの髪色によく似合いそうですね。ほら、こっちを向いてください」


 優しい手つきで俺の耳の上のつけ根あたりに花を差してくれる。


「ふふっ可愛い」


 柔らかく微笑むアルベルトにつられて俺も笑顔になってしまう。


「でへへぇっ」


 思ったより気持ち悪い声が出てしまった。

 7歳でもギリギリアウトかもしれない。


 ダメだ、嬉しい。穏やかでいい匂いがする美人が俺に優しくしてくれる。

 まるで男のロマンじゃないか(相手も男だけど)。思考まで気持ち悪くなってしまった。


 別にやましい気持ちがある訳じゃない。ただこれは本能みたいなものでふあああ頭なでなでされてるぅ。


「ふひっ。ありがとママ」

「どういたしまして」


 ぎゅ〜っと抱きつくとまた軽やかに抱き上げてくれた。

 アルベルトには母親になって欲しいと無茶ぶりを言ってしまったが、案外慣れたようで今はママと呼んでも普通に返事をしてくれる。


 ユウのようなぶっ飛んだ思考はしないが結構考え方は柔軟らしい。そこはヒーラーの血筋なのだろう。

 俺の前世のことも簡潔に話したのだが、アルベルトは驚きこそしたものの「そうだったんですね」とどこか納得していた。


 その素直さは逆にヒーラーから何か吹き込まれていたんじゃないかって疑ってしまう。姉の孫に旅仲間の恋愛妄想話を聞かせるくらいのことはやるだろう。

 彼女はそういう性格なのだ。


「フラン。俺は今不満を抱えている」


 きゃっきゃっしている俺たちの様子を見ていたユウは、モヤモヤした表情を作っている。それでも手にはカメラを持っているから撮影をしていたのだろう。


「どうしたんだユウ?」

「なんでアルベルトはママと呼ぶのに、俺のことは未だにパパと呼んでくれないんだ」


 そういえばそうだな。ユウをパパと呼んだのは再会した日に1回だけ。それ以降はずーっとユウと呼んでいた。


「えっとぉ、無意識だな。アルベルトは出会った時からお母さんって感じだったけど、ユウは泣き虫坊やの頃の印象が残ってるから」

「えっ」


 かなりショックを受けたのかユウは涙目になっていた。うーん、俺を受け入れてくれて色々頑張ってくれている相手にちょっと心無い答えだったか。


「ごめんごめん。でもユウが一生懸命父親になろうとしてくれてるのは嬉しい! いつも感謝してる」

「逆に気をつかわれてしまった……」


 本心なんだけど想像以上にダメージが大きかったようだ。トボトボ先を行くユウを追いかけるため、アルベルトに声をかけておろしてもらう。


「待ってよ」


 ユウの手を掴んで横に並びながら歩く。相手はちょっと驚いたようにこちらに向いたけど、照れ臭かったから俺は視線を前に固定したままだ。


「……ユウが父親を頑張ってるように、俺も息子を頑張ってる途中なの」


 握った手は包み込むように握り返され、革手袋のゴワゴワ感が伝わってくる。少し硬いけど嫌じゃない。


「良かったですね、ユウさん」


 後ろからはアルベルトの微笑ましそうな声が聞こえてきた。


※※※


 そこからしばらく歩いてると空気に塩のようなしょっぱい香りが混じっているのに気づいた。遠くからはザザーンと何かがこすれるような音がする。


「ここら辺は一体何だ? 何かの工場でもあるのか」

「ん? フランは海は初めてか」


 海?


 海。話を聞いたことはあるし概念としては知っている。

 塩が混じったデッカい水溜まりのことだ。世界は海という水域が半分以上を占めていて沢山の恩恵を受けているのだ。


 前世は城にいる時間が長かったし、ユウ達といた時も海までは行かなかった。案外俺は箱入り坊ちゃんだったようだ。


「私も知っていますが見るのは初めてです」


 アルベルトは期待に目を輝かせて頬を紅潮させている。よっぽど嬉しいようだ。

 そんな反応を見せられると俺もなんだかワクワクしてきた。


「なぁなぁ、海で何ができるんだ?」


 ユウの手を何度も引っ張ってると、面白かったのかユウはクスクス笑う。


「そうだな、釣りとか砂遊びとか。でもやっぱり泳ぐのが俺の故郷の定番だ」

「え、海って塩水だろ」


 もし怪我とかしてたらスゲーしみそうだしベタベタしないのかなぁ。

 そもそも服を着たまま入るのか? それともすっぽんぽん?


 イメージわかない……。


「わざわざ沐浴以外で濡れるなんて変なの」

「前世は水遊び大好きだったくせに」


 途端にいたずらっ子のような笑みを作るユウ。

 柄にもなくはしゃいだ記憶を思い出して急に恥ずかしくなってきた!


「別に一回しかやったことないし!」

「あ〜んなに笑ってたくせに」

「うぎぃーっ!」


 ポカすか叩いても相手はもちろんノーダメージだ。

 逆に勝ち誇ったように大笑いをしている。このっ! ユウのくせに!


「ほら、もうすぐ見えてくるぞ!」


 ユウは怒ってる俺を抱きかかえると小走りし始める。しょっぱい匂いがどんどん強くなって木々に囲まれていた視界が開けていった。

 そして森を抜けると目の前に真っ白な砂の地面と奥には青々と輝く水域が広がっていた。


「わあ! これが海……」


 息を弾ませながらついてきたアルベルトが感動のあまり声が裏返っている。俺も同じくらい嬉しくなってユウにギュッと抱きついた。


「ユウ! あれが海?」

「そうだ。今日はフランとアルベルトの海デビューだな!」


第3章ゆるっとスタートします

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