第12話 フランはアルベルトを助けたい
「こらフラン! お行儀が悪い」
「はいはいすみませんでした!」
ユウの言葉を適当に流し、未だに痛みに悶える院長を見下ろす。
「院長。お前なら知ってるんじゃないのか? 地下のこととか……魔物を操る呪術のこととか」
「な、なんだって?」
「獣型の魔物は魔法を使えないし知能も普通の獣並みだ。何より魔物には脳をコントロールする呪いの印がつけられていた。魔物を統率し、誘導し、わざわざアルベルトの部屋から登場させて彼に罪をなすりつけようとしたんだろう」
「何も知らない……」
「お前」
「フラン、そこまでだ」
もう一度蹴飛ばしてやろうかとしたところで、ユウが止めに入る。
何で止めるんだよ。ここから本番だろ。
……。
……あっ、もしかしてこれは魔族式だった?
「人間でもやる人はいるが、正しいとはされない」
俺の心を呼んだように答えられてしまう。
そっか。人間にはダメなんだ……。裏切った魔族は話し合いで解決なんて到底無理なので、物理が最適解なのだ。
転生してからこんな場面無かったから忘れてたよ……。
「それに院長が犯人と決めつけるのはよくない」
「少なくともアルベルトが犯人だとコイツにとって都合が良いんだ。今までの態度でわかるだろう」
「それでもだ」
ユウに諭されてしまえば何も言えない。
でもどうしても気になっちゃうんだ。俺は見物人達の方へ振り返る。
「なあ、修道士のお前らもアルベルトが犯人だと思うのか? あんなに優しい人がお前らを傷つけることをするのか?」
「フラン……」
「邪魔するなよユウ。俺は知りたいんだ。アルベルトがお告げとやらで嫌われた話は聞いたよ。でもアルベルトは何もしてない! 今だって何もしてないはずなのに、味方になってくれる人がいなかったんだ。どうしてだ?」
俺も故郷にいられなくなった時は誰も味方してくれなかった。ユウと再会してなきゃ傷ついたまま彷徨っていただろう。
「……アルベルトは、悪い人ではありません」
修道士の1人がおずおずと口を開く。
「聖女の件は信者として思うところがありますが、アルベルトは真面目で模範的な修道士です。少なくとも私はそう思っていました」
他の修道士は気まずそうにしているが、反論する人はいない。
「じゃあ何で仲間外れにした」
「それは……」
また黙った。これだから……。
いや、人間だからとか関係ない。コイツらが卑怯なだけなんだ。
もしかしたら院長に何か言われたのかもしれない。誰かに同調することを迫られたのかもしれない。
だから従って、アルベルトから離れて、町で何を言われても見て見ぬふりをして彼を孤立させた!
俺にはわからない。わかろうとも思わない。
だって俺の魂は魔族のままだ。
俺は欲張りだから、今の俺は何の使命もないから。
こんな奴らどうでもいいんだ。関係ない。
俺は俺の勝手な理由でアルベルトを助けたいんだ。
「ユウ、俺の封印を解いてくれ」
「え? だが……」
「本来の魔力が戻ればもっと感覚が鋭くなる。魔法の痕跡から犯人を辿れる。ソイツをとっちめて吐かせれば解決だ! こんなクソみたいな場所とっととおさらばするぞ!」
俺の覚悟が伝わったのか、ユウは何も言わずにうなずき俺のおでこに手を当てる。
淡い光に包まれたと思うと、心臓から強い熱が湧き上がってくるのを感じた。
魔族の魂が生み出す闇の魔力。漏れ出す力に周囲は異変を察した。
蓋ができてない状態だから、嗅覚でいうとプンプン臭ってくる感じなんだろう。
「ひっ! 何だこの禍々しい魔力は」
院長が尻餅をついて俺に恐怖の眼差しを向ける。抑え込まれていた分、魔力が弾けるように俺を包み込み全身に強い力が巡っていく。
魔力のコントロールは上手くできない。でも単純な魔法を発動させるだけならどうってことない。
イメトレだけは赤ん坊の時からやってたんだ!
『フラッガー=シェン=アステリア!【我を導け】』
ドクン、と視界の色彩が反転する。
さっきまで痕跡しか見えなかった魔法陣は白く浮かび、ドロリとした赤い糸をピンと張ってある方向を示している。
壁が透けて見える、建物が透けて見える、人、生き物、植物。
赤い糸は繋がる、繋がる、繋がる。
導く。主が求めるその先へ。
五感を繋ぎ、先へ、先へ、先へ。
「オエぇッ!」
生理的な吐き気が込み上げ思わずしゃがみこむ。周囲の環境音や肌に感じる空気が、先ほどまで自身の感覚を遮断していた事実に気づかせた。
危ねぇ!コントロールが上手くできなくて魔法に精神を持っていかれるところだった!
視界の色もぼやけるけど戻っていた。
「フラン、大丈夫か!」
「見えた。ユウ、俺をおぶって追え! 最短ルートで行く!」
ふらつく体でユウにしがみつくと、奴は迷わず俺を横抱きにして通路に飛び出た。見物人達は勢いに押され慌てて道を開けてくれる。
「フランさん! ユウ様!」
騒動と見張りがいなくなったのに気づいたのか、アルベルトが閉じ込められていた部屋から顔を覗かせていた。
オロオロしてるな、色々不安だよな、大丈夫だよ。
「もうちょっと待ってて!」
「どうしてそこまでして……っ」
ユウの足が速いから答える前に遠くなっちゃった。
居住区域から出るとユウは壁を駆け上り屋根の上へと飛び乗った。俺を抱えて両手塞がってんのにだぞ?
強い風が顔を打って頭がガンガンする。でも先ほど捉えた目印は今も真っ直ぐ行き先を示してくれている。
「フラン、わかるか?」
「調節誤ったせいで五感がギンギン開いてキツい〜! でも見える! この先の森に潜伏してる」
町に隣接する森は荘厳さを感じさせるほど大きい。だけどユウの体力なら大したことないだろう。
『風よ誘え!』
ユウが足に風の魔力をまとい大きく跳躍した。次々と遠いところにある屋根を渡っていき加速していく。
「フラン、お前の視覚を共有すれば俺にも見えるか?」
「多分!」
瞬間何かが繋がる感覚が体を走り、大きく心臓が揺れる。
え、この一瞬で繋いだの?さっきから勇者何でもありすぎじゃない?
「見えたぞフラン!」
一際強く足を踏み込むと、森に隣接した屋根から森の上へと迷わず飛びあがった。
雲が近い。空を飛んでるみたいだ。
でもユウは翼がないから重力には逆らえないよな。
眼下に深い青の木々が広がる。
「ちょ…っ! このまま突っ込むのかうわああああああぁぁぁ!?」
ガシャンッバキバキバキ=͟͟͞͞('ω')=͟͟͞͞( ε: )=͟͟͞͞(.ω.)=͟͟͞͞( :3 )=͟͟͞͞('ω')<ウワアアアア
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