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【完結】魔族の若様は転生して勇者の養子になります  作者: 城崎
第二章 母親は聖女(♂)です
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第11話 フランは院長のすねを蹴飛ばす

 町の中で主張するように建っている修道院は想像より立派で少し驚いた。というか謙虚さから遠い気がするが、こういうものなのか?

 年季が入っているが居住区域もなかなか大きくて、何十人も住んでいるんだろうなって思う。


 そしてアルベルトに与えられた個室は対照的に修道士らしい慎ましい空間だった。ベッドと小さな机と椅子。後は衣服を入れる物入れがひとつ置いてあるくらいだ。扉は魔物たちがぶち破ったのか半壊していた。


 机の上には経典と思われる分厚い本と古そうなランプ。そして手のひらサイズの花瓶に野花を生けていた。


 ああ、アルベルトらしいな。出会ったばかりなのにそう感じてしまう。

 

「その……事件現場なのであまり踏み入らないで欲しいのですが」

「ああ」

「知らん」


 ユウも俺もズカズカ中に入り込んでやった。勇者特権最高〜。壺とか割っても許されそう。


 アルベルトは今自由にできないという理由で他の個室に軟禁という形で入れられていた。手足を縛られることは無かったが、首に特殊な枷をはめられている。


 アレは何だとユウに聞いたら、どうやら魔力回路に作用して魔法を使えなくする道具らしい。まるで犯罪者みたいな扱いには不満を感じてしまう。


 だからこそ意趣返しと言わんばかりにおっさんこと院長の言葉を無視して無遠慮に乗り込んだワケだけど。


「あった……」


 魔法は人間より魔族の方が身近な存在だ。散々見慣れていた俺はすぐに魔法の痕跡……いわゆる魔法陣があった場所を見つけられた。

 肉眼ではわからないが、魂から「ここだ」と告げられる異変。わかるのは限られた人だけらしい。


 でもユウにもわかったようで、すぐに同じ場所を見てうなずいた。


「確かに魔法を使用した気配がする。種類までわからないけど……フランはどう感じる」


 やはり人間だと感じ取れる限界があるようだ。ユウも対生物ならわかっても無機物は専門外らしい。


「通過魔法だ。つまり生み出したんじゃなくて魔法陣を通って壁とかをすり抜けてきたんだよ」


 生き物を自分のエゴで生み出す召喚魔法は「命の冒涜」として聖職者には禁術として扱われているらしい。でも単に物をすり抜ける魔法なら別だ。


 俺たちがコソコソ話している間、院長は不安そうに扉の前でウロウロしている。


「あの、何も無いと思いますしそろそろ……」

「静かにしてくれ」


 ピシャンと言い切るユウに黙る院長。

 お前意外とハッキリ言うタイプだったんだな。出会って間もない頃の初々しさが懐かしいよ。


「院長、あなたはこの部屋を見て何か感じないか?」


 突然ユウに呼ばれた院長はビクリと肩を震わせて中の様子を見るが、不思議そうに首を傾げた。


「いえ……特に何も。ただこの部屋から魔物が7体飛び出たという目撃情報があります。加えて彼の部屋に入った者は誰もいないと言っておりました」

「じゃ、いいや。下がってくれ」


 ユウの言葉に律儀に従ってまた扉の辺りに下がる院長。出会った当初の威厳はない。


 アルベルトがいつまでも犯人扱いされるのは嫌なんだよな。

 そういえばと俺は先ほど魔物をとった転写用紙を取り出した。ユウの言葉ではシャシンと言ったか。


「何だ、さっき撮ったのか」

「ああ。狼型の魔物でも生息地域で特徴が異なる」

「ふむ、これは森に住むタイプだな。頻繁に木に登るから草原のより爪が湾曲して鋭いんだ」


 あー流石は勇者様ですね。よく見てらっしゃる。


「……? いや、待てよ。森に住んでるにしては……」


 ユウはもう一度シャシンを指差す。首元に何かのアザがあり、目を凝らすと模様に見える。


 ああ……なるほど。


「そもそもこの魔法の陣は床に直接というより、もっと向こう側に描かれてたみたいなんだよな」

「つまり完全にアレというわけだ」


 ユウの言葉に首肯し、俺は確かめるように奴の目を見る。


「大丈夫、勇者特権だから」


 ニコリと笑うとユウは拳を床に叩きつけた。


 ドォン、という轟音と共に床が砕け、1mほどの穴が空く。


「はああああ⁉︎」


 院長の素っ頓狂な声を無視して2人で穴の中を覗き込む。暗くてよく見えないけど、通路があった。


『光よ集まれ』


 ユウが手のひらサイズの床の破片を拾うと、呪文を唱えて中に放り込む。間も無くして破片は発光して辺りを照らした。


 薄暗い地下通路には獣らしき足跡があり、奥からこちらに来ている。

 俺はもう一度シャシンの魔物を確認した。うん、足の形が似ている。


「ここから登ってわざわざアルベルトの部屋から出てきたんだろう」

「わざとらし過ぎる。きったねぇことしやがって」


 気づけば音を聞きつけた修道士達がわらわらと集まり、こちらをうかがっている。


「おいお前ら! この下に通路や空間があることを知ってる者はいるか?」


 俺の声と状況に驚きながらも何人かの修道士はふるふると首を横に振った。


「知りません……何かあるのですか」

「私も聞いたことがありません」


 きっとアルベルトも知らないだろう。


「お前たち! いいから戻れ。騒ぎが落ち着くまで各自の部屋で待機しろと言ったはずだ」


 慌てて呼びかける院長を無視して俺は言葉を続ける。


「魔物を呼び込んだ犯人はアルベルトに罪を着せようとした汚ねぇ人間だ! そしてお前たちが傷つこうとちっとも気にせず事件を起こした最低な奴だ。思い当たることがあれば何でも良い。俺たちに教えろ!」


 修道士たちは戸惑うばかりだ。多分本当に何も知らない。


「勇者様! それに君もこれ以上事を荒立てるな!」

「うるせぇ!」


 あんまりにも院長が騒がしいので、思い切りすねを蹴飛ばしてやった。クリーンヒットしたようで院長は「ギャッ!」とうずくまり足を押さえている。


 ふぅ、ちょっとだけスッキリした。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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