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もふもふ元大魔王の成り下がり冒険譚  作者: あらまき


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たこ焼きたこ抜き紅しょうがマシマシ


「モテるってのは……どんな気分なんだ?」

 唐突に、レストはそんな馬鹿な事を口にしだした。

 机の腕に肘をつき、いかにも重要な話をするかの様神妙な面持ちで。


 本当に何の脈絡もない。

 レスト、グラディス、ルークの三人が居る教室にユーリィが向い、何か言葉を投げかける前にこれである。

 まあ、レストが女性に関する事で馬鹿になるのは彼らにとって何時もの事に過ぎないが。


「なあ。ルークは当然先輩もモテるんだろ?」

「俺も一年未満だ。呼び捨てで構わん」

「あいよ。ユーリィてめぇもモテオーラ出てんだよ! 早く白状しろやおらぁ!」

「そんな事言われても……別に俺女性とそういう経験全くないぞ?」

「そりゃがっついてないからだろ? ユーリィがナンパしたらその日に彼女とかゲットできるに決まってる」

「……いや、そうとは決まってないし、そもそもそうやってがっつくからモテないんじゃないか? あんた見た目は悪くないんだし」

「そんな正論は聞きたくない」

「めんどくせぇ」

 ユーリィからぽろっと本音が零れ堕ちた。


「うちのが何か、すいません」

 困った顔で笑い、ルークはそう口にする。

「何時もこんななのか?」

「まあ、大体いつもこんな感じですね」

「苦労してるな」

「慣れたら案外楽しいですよ」

「そうかい。それで、そっちのもう一人は何をしているんだ?」

「全くわかりません。たぶん料理ですが……」

 ルークの言葉にグラディスはキレた。


「は? お前たこ焼き知らないとかマジで言ってんのか!?」

 ルークは困った顔でユーリィに目を向ける。

 ユーリィも首を横に振った。

「俺も知らんな。どこの民族料理だ?」

「あ? 民族料理じゃねぇよ世界中どこにでもあるわ!」

 マジギレしながらくるっくるくるっくるとたこ焼きを転がすグラディス。

 製法的な意味で言えば、間違った事はしていなかった。

 教室の中でたこ焼きを作っているという行為そのものが間違ってはいるが。


「まあ、美味いなら俺は何でも良いけど……タコってまた随分と珍しいな」

 レストは感心した様に呟く。

 ハイドランドは内地で、それも王都はど真ん中。

 一部例外を除けば海なんて物はなく、海産物は非常に高価である。

 にもかかわらずタコ焼きなんて作っているのにも一応は彼なりの理由があって……。


「大変ではあったけど、恩人に対して何もせんってのは義理に反してな。まあ、何もなかったけれども」

 グラディスは自嘲気味にそう呟く。


 何もなかった。

 あのゾンビ騒動にて、レスト、グラディス、ルークの三人は何も見ていないし関係していない。

 学園より言われ、そう言う事になった。 


 新入生程度の実力なら、関わらずに済むのなら関わらない方が良い。

 そういう学園側の新入生に対しての配慮ではある。

 だがその所為で彼らはクリス、リュエル、ユーリィの三人に対しお礼を言うチャンスを失った。

 彼らはその反対で、積極的に関わる事を目論んでいるから。

 しかもそれどころか、トラブルの見舞金という名前で口止め料まで貰ってしまう事となってしまった。


 そんな事情があってあまり仰々しくお礼をする事を学園は好ましく思ってないからお礼を言い辛く、かといって何もしないというのは冒険者的心情からもやっとする。

 故にグラディスの選択は、たこ焼きだった。

 どうしてとか何故とか、そんな理屈はない。

 たこ焼きこそお礼に相応しいと思ったから、部屋から鉄板持って来て、コンロを用意して、そして今練習も兼ねて作っていた。


「気にしなくても良い……とは言うが、そういう礼ならうちのリーダーは喜んで受け入れるだろうさ」

 そう言ってユーリィは苦笑する。

 馬鹿な事をしてるなと思う。

 そしてだからこそ、クリスの気に入るポイントである可能性は高かった。


「そうかい。そう言ってくれるならうれしいもんだ」

「……ふむ。外見に見えないって事は中にたこを入れているって事か」

「ああ。内容はシンプルだぞ。小麦粉中心の粉の中にたこ入れて、焼いて後はソースをだばー。だけど味は保証するぜ」

 グラディスは楽しそうにそう言った。

 よほどたこ焼きとやらが好きらしい。


「お前さんにそんな特技があったとは驚きだよグラの字。中々の手さばきじゃないか」

 レストは楽し気にそう言った。

「よせやい」

「んでマジでたこ焼きなんて聞いた事がないけど、そんな有名な料理なのか?」

「三大国家全てで売られている位には広まってるぞ。ハイドランドじゃマイナーかもしれんが」

「俺は首都生まれ首都育ちだからなぁ。お二人さんは出身どちら?」

 レストの言葉にユーリィは表情を曇らせる。

 だがそれは一瞬ですぐに取り繕って見せた。

「北の方だな。国が滅んで逃げて来た」

「あー悪い事聞いた感じ?」

「いや、気にしないで欲しい。それと丁度良いから俺もルークに質問がある。ルークのその服装、もしかして近しい場所の出身ではないかと思ってな」

 ユーリィの居た国、メイデンスノーの研究員の服。

 それと似た様な意向がルークの服から感じられていた。

「そうなのですか? 確かに私も北の方出身ですが……」

「そうか。どの辺りか詳しく聞いても良いか?」

「いえ、渡り鳥の様に移動してましたのでどこかに住んでいたという訳ではないので……」

「そうか……。まあそう言う事もあるか」

 あまり納得出来ないものの、狭い小国の常識しか知らないユーリィはそれ以上深くは追及しない事にした。

「すいません。あまり話に乗れなくて。ところで出身と言えば、グラディスさんはどちらなのでしょうか?」

「あん? 俺?」

「ええ。たこ焼きの事もありますので、どちらかなと。レストさんはリオン育ちと聞いてますが」

「リオン生まれリオン育ち。旅とかもした事ないから他所の国の事はなーんもわからん」

「それは……幸せな事ですね」

 ルークの言葉にその場の全員が頷いた。


「まあ、そうだろうな。俺の両親共に俺や兄貴をリオンに置いて出てたしそういう事なんだろう。んで、グラディスはどこだ?」

「俺もハイドランドだ。首都じゃなくて魔都出身だが」

「ほほー! 随分と珍しい場所だな。いや、らしいと言えばらしいか」

 レストは納得した様に頷いた。


『魔都グラウグロ』

 ハイドランドの端の方にあるその小さな都市は、元々ダンジョンを封じ込める為の要塞であった。

 そこを封鎖出来る実力を持つ人を集める為に金を使い、そうして冒険者が集まって暮らし、そして気づけば街となった。

 そういう場所であるが故に冒険者、それも戦闘に秀でた者が多い。

 その反面素行の面に問題のある冒険者も多く、一般的な人にとっては非常に立ち寄り辛い場所となっていた。


「という事は、グラディスさんはここを卒業したら魔都に帰るという事ですか?」

 ルークの言葉にレストがショックを受けた。

「な、何!? そうなのか相棒!? もしもそうなら言ってくれ! 俺もついて行くから。俺を置いてなんてつれない事を言うなよ!」

「そんな事する訳がないだろうマイブラザー。俺達の絆は永遠だとも! ブラザーが童貞であるうちはな」

「ああ、そうだな相棒! 俺達はずっ友だ!」

 ひしっと抱き合うレストとグラディス。

 その様子をルークは微笑みながら見つめ、ユーリィは何とも言えない呆れ顔を見せた。


「まあ真面目に言うとだな、別に帰る気もないし帰らないと決めた訳でもない。つか俺の家もうないからどっちでも良い。魔都で稼げそうなら行くけど、正直首都で暮らせるなら首都にいたい」

 グラディスはそんな現実的な事を言いながらたこやきを鉄板から取り、更に盛り付けていく。


 そしてソースをかけてからめた後青のりをまぶし……。


「ところで、今から俺はとても重要な事を言う。良いな?」

 グラディスは真剣な表情で、皆の目を見つめた。

 全員が頷いた後、グラディスはゆっくりと、語り替える様に話し出した。

「最初の話に戻るが、たこ焼きってのはたこありきの料理だ。たこは高いからな。手に入れるのは大変だった。それでもお礼の気持ちをという事で冷凍物ではあるが上物のたこが入手出来た」

「……グラの字。結局何が言いたいんだ? 金の話なら俺も出すぞ?」

「もちろん、私もです。お礼という事なら三人で、でしょう?」

 レストとルークの言葉にグラディスは頷いた。

「そうだな。だけどそういう話じゃあないんだ。……しょうがない。回りくどい事をやめ、結論だけを話す。良いな?」

「もったいぶらずに早く言ってくれ。何が問題なんだ?」

 グラディスはゆっくりと息を吸い、そして答えた。


「タコ――入れ忘れた。全部……」

 小さな、沈黙が流れる。


 その沈黙は、ルークが珍しく呆れた様子で吐いた溜息によって破られた。




 そんな理由で、ちゃんとしたたこ焼きは明日とし、今日はこの場にいる皆で試食会にしようという流れとなった。

「まあ、美味いのは認める。認めるけど、これ何だろうな?」

 たこ焼きをフォークで刺して食べながら、ユーリィはそう呟いた。

「たこ焼きですけどタコ入れ忘れですからね。……小麦焼き?」

 ルークは苦笑しながらそう呟いた。

「いや、むしろただの焼きじゃない?」

「焼きじゃ意味が伝わらないって。ここはたこ焼きたこ抜きで」

 レストの言葉にルークとユーリィは「あー」と同意の声をあげた。


 グラディスは笑いながら、言った。

「うるせぇ黙って食え」

「やーい。タコ入れ忘れー」

 レストは気にせずいじり続けた。

「ガキかよ。まあそれはどうでも良いからおいておいてー。話戻ってルークとユーリィに尋ねたいんだけどさ」

「ん? 何の話だ?」

「モテの話」

 ユーリィは顔を顰めた。

「まだするのか?」

「おう。いやだってさ、明らかにルークとユーリィ空気違うジャン。俺達と何か違うじゃん。俺達が普通の黒パンだとしたらそっちなんか高級サンドイッチとかそういうお洒落な感じじゃん。なんで?」

「なんで?」

「なんでなんで?」

「なんでなんでなんで?」

 レストとグラディスは二人に纏わりつきながら「なんで?」を繰り返しだした。


「うるせぇし怖いわ! 何でと言われても、正直まあ、ルークが美形なのは認めるけど、俺とあんたらはそう変わらないだろ?」

「違うのだ! あんたもルーク側なのだ! というか服装とかなんか垢ぬけているしアクセとかもじゃらじゃらしてないし。何と言うか……女性にも評判良さそうな感じ」

「まあ、それなりに努力してるし」

 飄々とはしているし、あまり口に出すのは好まない。

 だけどユーリィはただ一人の人間に恋しその為に多くの努力をしてきた。

 その努力の中には興味のないファッションも含まれる。

 本を読んで女性の意見を取り入れ、自分が少し高いと思う衣服を身に着ける様にして、そして髪型のセットも常に意識して。

 具体的に言えば、気軽なレベルのデートならいつでも行ける程度にはユーリィは人目を常に意識している。

 その差がユーリィとモテない二人の差であった。


「辞めろよ! モテ男が努力したら俺達どうしようもないだろ! 何だよ合コン行って誰が良い? 全部! とか言いたいのかよ俺も言いてぇよ!」

 レストは叫んだ。

「合コンとか行った事ないんだが」

「あれだろ。お洒落なファッション雑誌とか買って研究してるんだろ! なよなよしやがって!」

「月刊誌を買う位だし言う程の努力でもないぞ」

 モテない二人は口を『イー』として不満を見せた。


「つまりそれは、努力すればユーリィさんの様に成れるという事では?」

「やめろルーク(天然物)! そんな正論聞きたくないのだ!」

「そうだよルーク(ナチュラルモテ人間)! 俺達が欲しいのは正論の拳ではなく優しい言葉と誰でもモテ男になれる簡単なアンサーの方だ!」


 そうして彼らは、まるで猿の様に騒ぎ出した。

 愛を独占するなー。

 モテない男達に愛の手をー。

 愛の共産革命だー。


 わいやわいやと騒ぐ馬鹿二人をユーリィは指差しルークの方を見た。

『お前のパーティーだぞ。どうにかしろ』

 そう言わんばかりに。

「ああ、放置して良いですよ。いつもの事ですので」

 ニコニコしながらルークはそう言い放った。


 そうこうしていると馬鹿二人は勝手に落ち込み、そして勝手に立ち直った。


「おっ。たこ焼き風何かもなくなったな。んじゃ俺鉄板とか洗わないといけないからそろそろ帰るな」

 そう言ってグラディスは片付けに入る。


 それが、何となくの解散の合図となった。


「じゃあ、明日は予定を開けておけば良いんだな?」

 ユーリィの言葉にグラディスは頷いた。

「ええ。こんなもんじゃない。本物のたこ焼きをみせてあげましょう」

 ドヤ顔でそう言葉にするのを見て、ユーリィは苦笑した。

「了解」

「まあ明日忙しいなら明後日でも良いけど、タコの鮮度と冷凍庫レンタルしてる都合もあるから早めに頼むわ」

「ついでに俺達で色々買ってパーティーみたいにしようぜ」

 レストはルークにそう提案した。

「それも良いですね」

「あんたら仲良いな」

 ユーリィのことばにレストは笑った。

「当然だろ? 女を作らないという堅い誓いを結び合った仲だぜ」

「……いや、まあ、それで良いなら良いと思うけど……」

 ユーリィはレスト、グラディス、ルークの顔を見比べる。


 ルークは何を考えているのかわからない感じでニコニコしているが、レストとグラディスは顔に『こいつより先に彼女作ってやる』と書いてあった。





 そうして翌日――。

 ユーリィは、レスト、ルークからグラディスが行方不明になったという報告を聞いた。


ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
タコパからの事件!?関係ないけど、うちの母はたこ焼きからたこを抜いて食べます。小麦粉焼きやんと思ってしまう。
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