黄泉比良坂の子供
恋のライバルがそんな思いをしているとは知らず巳湖斗は有栖川美玖を守るべく飯島元気という少年の行方を捜していた。
彼を助けなければ飯島元気も有栖川美玖も死ぬのだ。
巳湖斗はパソコンを見ながら
「ちゃんと向き合う前に彼女を死なせるわけには行かない」
いやそれが無くても彼女を助けたい
とヒットした内容を一つ一つ確認していった。
その中の一つに『佐用東中学の飯島元気は人殺しです』という囁きの書き込みがあった。
巳湖斗は腕を組むと
「中学…名前…この書き込みの人物なのかな」
でも囁きってフェイク多いし
と言いつつも、それをプリントアウトした。
「佐用東中学か」
場所は兵庫県の佐用郡にある中学校であった。
JR佐用駅からバスに乗り佐用東高校前で降りて徒歩20分程の場所にある。
巳湖斗はふむっと息を吐き出すと
「この時期だから電車とか結構厳しいかも」
と呟いた。
年末である。
帰省ラッシュだ。
巳湖斗は時計を見ると
「あ、夕食の時間だ」
と言い、部屋を出て鍋を温め直すとその足で火無威を呼びに向かった。
2人で土鍋を真ん中に置いて食事を始めた。
火無威は白菜などを取り皿に取りながら
「それで?」
見つかったのか?
と聞いた。
巳湖斗は唸りながら
「らしいのは」
と言い
「けど兵庫県の佐用郡ってところなんだ」
年末だし行くのが
と告げた。
火無威は差し出された紙を見て
「ここなら今の時期だったら車の方がいいかもしれないな」
高速使えば2時間くらいだ
と告げた。
巳湖斗は目を細めて
「でも、車」
と呟いた。
火無威は腕を組むと
「しょうがないからレンタカーして俺が運転するか」
と呟いた。
巳湖斗はドン引きすると
「え?ええ!」
叔父さん運転できるの??
と聞いた。
火無威は冷静に
「免許は持ってる」
色々本人確認に役立つからな
と告げた。
巳湖斗は目を細めて
「…安全第一で…お願いします」
と頭を下げた。
それしか手がないなら命を懸けるしかない。
大げさだが…火無威が運転しているのを見たことがないのでそう言う気分になったのである。
食事を終えると火無威は出雲市駅の近くのレンタカー屋に電話を入れて一台確保した。
巳湖斗は武士に事情を話して明日行くことを伝えたのである。
武士は電話口で
「そうか…お前と叔父さんが平坂歩かないようにな」
と不吉なことを告げたのである。
巳湖斗は「誰が歩くか」と言い、携帯を切ると飯島元気の囁きに付いて調べ始めたのである。
佐用東中学…つまり佐用郡で事件が何かなかったかどうかである。
同時に囁き横からリプを送ったのである。
『それは本当なんですか?』
そこから引き出せる情報は引き出そうと思ったのであった。
だが、リプに返答はなかった。
それどころかブロックされたのである。
巳湖斗は目を見開くと
「…まあ、仕方がない…」
と呟きつつ
「それと兵庫県の佐用郡辺りで学生で何か事件が起きてないかだよな」
とパソコンの上で指先を動かした。
検索ワードは兵庫県と佐用郡と学生と事件であったが、それにヒットする項目があった。
学生や事件が消されたモノもあったが、全てがヒットするものもあった。
巳湖斗は全てヒットしたモノをクリックして内容を読んだ。
一つは高校生が数人ツチノコを見たという話である。
「…いや、事件?」
巳湖斗は思わず突っ込んだ。
そういう感じの何処かのんびりとした内容の事件が幾つかあった。
しかし、その中で一つ本当の事件が紛れ込んでいたのである。
それは中学1年の森瑠衣という男子生徒が用水池に落ちて意識不明の重体になったという記事である。
そこには同級生とふざけていて落ちた、と書かれていた。
年齢的には範囲である。
巳湖斗は記事を書いている新聞社の名前と記者の名前をメモに取った。
「京都日報社の七尾さんか」
一応聞いてみようか
そう呟き、京都日報社のサイトを検索した。
そこには代表の電話があり巳湖斗はメモを用意して電話を掛けた。
呼び出し音が2回なると電話を専門で受け付けている部門へと繋がった。
巳湖斗は出来てきた女性に
「すみませんが、今年の9月の記事で兵庫県の佐用郡の用水池に中学生の男の子が落ちたという記事が載っていたのですが記者の名前が七尾さんと言う方ですが」
確認したいことがありお電話を
と告げた。
応答に出た女性は
「確認と申しますとどのようなご用件でございましょうか?」
と返してきた。
記者本人に回すというわけではないみたいである。
巳湖斗は
「あの、一緒にふざけていた同級生の子の名前が飯島ではないかと思い」
その確認を
と告げた。
女性は「少々お待ちください」と言うと保留に切り替えた。
恐らく返事やどのように応答するかを確認に行ったのだろうと巳湖斗は考えた。
暫くして男性の声が返った。
「お電話変わりました七尾です」
俺が書いた記事のことと聞きましたが、どちら様でしょうか?
巳湖斗はおひょっと驚きつつ
「あの、神蔵巳湖斗と申します」
と答え
「実は飯島元気さんだったらと思いまして」
と告げた。
それに少し間が開き
「それで何のためにその情報が?」
と返してきた。
YesともNoとも無い返事であったが、巳湖斗は
「そうなんだ」
と理解した。
もし違っていたら恐らくもっと違う返答だっただろうと想像できたのである。
巳湖斗は息を吐き出すと
「彼なんですね」
と言い
「それが分ればいいんです」
と告げた。
七尾と言う記者…七尾雄一は慌てて
「いやいや、何故かお聞きしたいんだけど」
と告げた。
想定外の返事だったのだろう。
巳湖斗は少し考えて
「彼が危険な目にあう未来を見たので」
それで確認を
と返した。
雄一は「は?」と声を零した。
「あの、その方とお知り合いとか」
巳湖斗はあっさり
「違います」
と答え
「応答に出ていただき、ありがとうございました」
と告げた。
が、雄一はそれを引き留めるように
「いやいやいや、待ってください」
と言い
「あー、他にも情報があるんですよね~」
と手段を変えてきた。
巳湖斗に興味が湧いたようである。
巳湖斗はう~むと悩み
「時間が無いんだけど…」
と呟き
「あの、俺に他に何か聞きたいことが?」
と聞いた。
雄一は電話口で笑むと
「ええ、できれば会えればと思うんですがね」
と答えた。
巳湖斗はあっさり
「俺、明日佐用郡に行くのでそこで」
と答えた。
「その代わり詳細教えてください」
雄一は「いやにあっさりだな」と思いつつ
「ではどこで」
と答えた。
巳湖斗は少し考えて
「JR佐用駅の改札出たところで」
えーと
「ちょっとお待ちください」
と携帯を持ったまま二階へ行くと
「叔父さん、明日、JR佐用駅何時ごろ付きそう?」
と聞いた。
火無威は手を止めると
「んー、10時くらい」
どうした?
と聞いた。
巳湖斗は携帯をさして
「今、京都日報社の記者の七尾って人と待ち合わせの約束してる」
と答えた。
火無威は携帯を見て
「何故?」
と聞いた。
巳湖斗は頷いて
「飯島元気って子の事件の記事書いた人だから詳細聞こうと思って」
と答えた。
火無威は驚きながら
「良く電話に出たな…この人」
本当に本当の人か?
と言い
「まあ、いい」
明日10時にJR佐用駅で
と答えた。
巳湖斗は頷いて携帯に
「明日10時にJR佐用駅で」
と答えた。
雄一は一連の遣り取りを聞きながら
「…あ、ああ…わかった」
と答え、携帯を切った。
「確かに飯島元気…だが…彼の正体が不明すぎる」
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




