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黄泉比良坂の名探偵  作者: 如月いさみ


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黄泉比良坂の子供

そして、翌日。

夕方が迫る中で巳湖斗は有栖川美玖にちゃんと向き合うと決めたことで何処かスッキリとした表情で玄関へと向かった。


それに火無威は巳湖斗を玄関まで送ると不意に唇を開いた。

「巳湖斗、亜和次兄さんも玲子さんの結婚のことを話しておく」

そう切り出した。

今まで火無威が両親の事に言及することはなかった。

だが、恐らく今それを言うべきだろうと思ったのだと巳湖斗は理解したのである。

「うん、何?」

そう冷静に聞いた。


火無威は静かに笑むと

「俺は2人の結婚は不幸な結婚だったと思っている」

と告げた。

「亜和次兄さんと玲子さんは愛し合って結婚した訳じゃなかった」

互いの家の為の政略結婚だったんだ


巳湖斗は目を見開いた。

「そうなの?」


火無威は頷いた。

「愛のない結婚は2人にただただ溝を作るだけだった」

お互いに不満だけを抱きお互いに相手を思いやる気持ちが無かったからな

そう言い

「ただ、その中でも一番辛かったのはお前だったな」

お前の生い立ちを考えれば誰かに背中を向けられることを恐れることは仕方ないと思う

「だが愛する人に背を向けないで欲しいと俺は思ってる」

お前には愛の無い結婚じゃなくてお前の両親が出来なかった愛のある結婚してほしいと思っている

「だからこそ愛する人に背を向けないで例え振られても向かい合える人間になって欲しい」

振られたとしてもそれはお前を本当に待っているお前と愛し合える人と上手く向き合うためのレッスンだと思えばいいから

「お前には悲しみに沈んだ時に支えてくれる人が沢山いるだろ?」

俺もその一人だ

「だから頑張れ、巳湖斗」

と頭を撫でた。


巳湖斗は火無威を見ると涙を滲ませて

「叔父さん…ありがとう」

そう言って笑みを浮かべると

「行ってくる!」

と強い気持ちで踵を返して歩き出した。


武士も叔父の火無威も己の気持ちから逃げるなと言ってくれているのだと巳湖斗は分かっていた。


自分は有栖川美玖が好きだ。

黄泉比良坂と言われるこの平坂で彼女の手を握りしめた時に…振り向いた彼女に…恋をした。


だからずっと頑張って来れたのだ。

そして、今も頑張ろうと思えるのだ。


巳湖斗は平坂を一度坂下の学校の門前まで降りて、踵を返すとゆっくりと登り、途中で立ち止まって逢魔が時に振り返った。


空は闇と茜が混濁し濃い紅色を広げている。

坂は除雪車が避けた雪が両サイドに積もり壁のように高くなっていた。


その道を小中学生くらいの男の子が下っていた。


巳湖斗はその子を見ると

「飯島…元気…13歳だ」

と呟いて、踵を返して坂道を上り切った。


知らない子供である。

彼がふわりと消えていく様子を見つめ、巳湖斗は踵を返すと坂を登り自宅へと戻った。


戸を開けると火無威がダイニングから姿を見せ

「見えたか?」

と聞いてきた。


巳湖斗は頷くと

「子供だった」

と答え

「飯島元気、13歳」

中学生だと思う

と告げた。


火無威は腕を組み

「中学生か」

と言い

「お前のクラスメイトとかの弟とか」

と告げた。


巳湖斗は少し考えて

「いや、俺のクラスには飯島って苗字の奴はいない」

けど同学年か1年か3年の兄弟って可能性は否定できない

と答え

「取り敢えずいつも通りにネットで調べながら、武士にも聞いてみる」

と笑顔で答えた。


一昨日からの顔と全く違う表情である。


火無威は一つ越えたのだと理解すると

「わかった」

全く手掛かりが無かったらいいに来てくれ

「夕飯まで原稿しているから」

と答えた。


巳湖斗は頷いて時計を見た。

冬の日入りは早い。

夕食には時間があった。


「じゃあ、おれ、夕食作ってから武士に連絡してネットで検索する」


火無威は「わかった」と答えると階段を上って二階の作業室へと向かった。

巳湖斗はダイニングに行くと夕食の準備を始めた。


出雲の冬は寒い。

しかも雪が多い。


巳湖斗は冷蔵庫から豚と白菜とシイタケと野菜を取り出し、常備している鍋の元を見ると

「今日は豚汁鍋だ」

と深い土鍋をコンロの上に置いて水を張って火にかけながら手際よく野菜を切っては鍋の中へと投入した。


一通り具材を入れて鍋の味付けをして一煮立ちさせると火を止めて自室へと入った。

浅見武士に電話を入れて今日平坂で見た死にゆく子供のことを報告して

「俺、今からネットで調べようと思っているんだけど」

と告げた。


武士は頷くと

「おお、了解」

俺の方で学校に飯島元気っていう中学生の関係者がいないか調べてみる

と答えた。


巳湖斗は笑顔で

「悪いな、ありがとう」

と答えた。


武士は笑って

「気にするなって」

八重ちゃんには女子の方を調べてもらうから

と告げて、通話を切った。


巳湖斗は携帯を机に置くとパソコンを立ち上げた。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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