黄泉比良坂の自殺志願者
すると少しして上の階から受け付け側の待合所にいた巳湖斗たちの元へと姿を見せた。
少しヤツレタ顔をして
「あ、あのすみませんが」
どちら様で?
と告げた。
それに火無威は名刺を出すと
「私は少女漫画家をしている神蔵という者なのですが」
と言い
「実はお話があって」
と告げた。
氷室ひろしは名刺を見て
「は?はぁ」
と応接室へと彼らを案内した。
部屋はすっきりとした作りでソファだけが豪華であった。
巳湖斗は座ると
「あの、本当は俺が貴方に話があってきたんです」
と言い
「鈴木政一さんをご存知ですよね?」
貴方と同期でとても仲が良かったと聞いています
と告げた。
ひろしは目を見開くと
「もしかして、鈴木に何か?」
と腰を浮かした。
巳湖斗は冷静に
「彼は自殺します」
と告げた。
ひろしはそれに息を飲み込みふらりとすると椅子にパフンと座った。
「…まだ…していないですよね?」
巳湖斗は頷いた。
「けれど、会社のことで悩んでいて…死にたいと」
ひろしは息を吸い込み吐き出すと暫く沈黙を守った。
両手を組み合わせ忙しく動かしている。
それだけで恐らく彼自身の中にもジレンマがあるのだと巳湖斗は理解した。
火無威もそこに着眼し
「もし、お話しいただけたら…何があったのか?」
と告げた。
ひろしは困ったように視線を伏せたまま
「それは」
と言いかけた。
その時、扉が開き50代の男性が姿を見せた。
「失礼します」
氷室に来客がと聞いたので
「何か商談でも?」
ひろしは顔を一瞬向けて直ぐに背けた。
男性は名刺を出すと
「私は氷室の上司で営業推進部部長の浜俊三と言います」
氷室は営業職ではなくて
と告げた。
「何か商談ならば私の方が」
巳湖斗も武士も八重子も心で舌打ちした。
巳湖斗は慌てて
「あの」
と言いかけた。
が、それを火無威は手で止めて
「いえ、商談ではなくて」
と名刺を出して
「実は少女漫画を描いていまして」
弟たちの同級生が氷室さんの知り合いで輸入倉庫などに詳しいと聞き
「漫画の取材でお話を」
と告げた。
「いや、恥ずかしながら密輸入に絡んだサスペンスを含んだ恋愛漫画を描こうと思っていたので輸入会社の方ならと」
浜俊三は一瞬ピクリと眉を吊り上げかけたが、渡された名刺を手に
「なるほど」
少女漫画の取材ですか
「いや、失礼なのはわかりますが…少し確認してきますのでお待ちください」
と部屋を出た。
火無威は冷静に
「え?俺…漫画家自体を疑われているのか??」
と呟いた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




