黄泉比良坂の詐欺師
「ご両親も色々あったから」
そう言われたのだ。
父親は会社を辞めて、母親は買い物三昧。
当時の美玖の稼ぎだけでは足らなくなって社長にもっと美玖に仕事を入れるように詰め寄って揉めたのだ。
その時は社長が借金を払って収まったが…それ以来両親と連絡を取ることも禁止され、両親からの連絡も途絶えた。
寂しい。
不安で不安で寂しい。
美玖は泣きそうになりながら
「でも泣いちゃダメ」
私、頑張らなくっちゃ
「仕事を沢山して社長が肩代わりした借金が無くなったらきっとまたお父さんとお母さんに会える」
二人とも来てくれる
と携帯を鞄から取り出し電源を入れて目を見開いた。
見知らぬ着信があったのだ。
もしかして。
もしかして。
美玖はドキドキと鳴り響く心音を抑え
「何ドキドキしてるんだろ、私」
べ、別に…その夢に出て来ただけで気になっただけで…うん
「ただそれだけなんだよね」
と自分で自分に突っ込むとマンションの駐車場で停まった車から降り達治と共に部屋の前まで行き
「じゃあ、ありがとうございました」
お疲れさまでした!
と笑顔で言って部屋に入ると鍵を閉めて携帯に入っている留守番メッセージを流した。
『は、じめまし、て…神蔵…巳湖斗です。また電話…します』
彼であった。
美玖は笑顔になると入っていた番号に電話を入れた。
二回の呼び出し音の時に時計を見て
「あ、夜中の1時…」
非常識だ!
とあわわと切りかけて返ってきた応答に目を見開いた。
「あー、ごめん」
寝てた
…。
…。
「…あ、ごめん、なさい」
あの
「俺…電話、入れました」
美玖は小さく笑うと
「私こそごめんなさい」
夜中に
と言い
「電話、ありがとう」
また電話します
と告げた。
巳湖斗は身体を思わず起こしながら
「うん、あのさ」
その、時間無かったら無理しなくて良いから
「その、ただ…俺は絶対に3日後には電話入れる」
それを聞いたら夜中でも良いから電話欲しい
と告げた。
美玖は意味が分からなかったがそれでも誰かから連絡が欲しいと言われるのは嬉しかった。
必要とされているのかもしれないと思えるからである。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。