黄泉比良坂の詐欺師
相手はそれに
「火無威…何しているんだ?」
漫画家辞めて探偵にでもなかったのか?
と心配そうに聞いた。
火無威は「今度会ったらゆっくり話す」と答えて
「とにかく頼む」
と携帯を切った。
「探偵か…」
次のネタは探偵と少女のスリリングな恋愛漫画にするか?
巳湖斗は冷静に
「叔父さん…」
と名前を呼んだ。
火無威は苦笑すると
「まあ、漫画のネタを集めないとな」
と言い
「とにかく出入りを見張っておくか」
と告げた。
火無威の携帯に田村兄妹の写真が届くのは早かった。
午後3時には届いたのである。
メールには『きっちり聞くから覚悟しろ』と書かれていた。
巳湖斗はそれを見て
「このポニテの人か」
と呟いた。
兄妹仲が良さそうに山の風景を背に腕を組んで写っている。
本当に仲が良いのだろう。
だからこそ、兄を騙した女性が許せなかったのかもしれない。
太陽は既に西に傾き始め、空の色が茜色に変わり始めていた。
巳湖斗は携帯を出して
「4時か」
と呟いた。
すっかり周囲の客層も変わっており、自分たちが長々と座っているのが漸く気になり始めた時にマンションの前に田村初音の姿が現れた。
二人とも立ち上がると店を出て彼女の元へと足を進めた。
巳湖斗は彼女の前に立つと
「田村、初音さんですね」
と呼びかけた。
彼女は驚いて
「誰?」
と聞いた。
巳湖斗は笑むと
「知り合いに似ています。彼女は詐欺師です」
気を付けてください
「そう警告をくれた人ですね」
と告げた。
初音は目を見開き
「まさか、囁きの」
と呟いた。
巳湖斗は頷いた。
「彼女が結婚詐欺師である可能性が高いことはもう警察に伝えています」
証拠も取りました
「だから復讐なら止めた方が良い」
彼女の為じゃない
「貴女の為に」
初音は俯き
「兄が…あの女に騙されて」
強盗なんて馬鹿な真似をしなかったら死ななかった
「兄も悪い」
でもあの女は
と顔を上げた。
そこに派手な服を着た中川まゆりが姿を見せたのである。
彼女は初音を見ると目を見開き
「執念ね」
でも恨まれても彼が勝手にしたことよ?
「私の方が困ったんだから」
と嫌そうに告げた。
初音は鞄に手を入れかけた。
が、それを火無威が止めた。
巳湖斗は携帯を入れているポケットに手を入れて
「今日の昼に会っていた早川さんに言っている事と全然違いますね」
と告げた。
まゆりは少し視線を動かして直ぐに笑むと
「そうかしら?」
私はちゃんと話をしているわよ?
と告げた。
巳湖斗はそれに
「貴方は彼に老人ホームに母親が入るのにお金がいるのでスナックで働いているとか」
住んでいるところはここじゃなくて来年取り壊しになる旭日アパートとか
「そう言ってお金貰っていませんでした?」
来年結婚するって言って
と告げた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




