黄泉比良坂の詐欺師
それに相手は
「あー、それはいらん」
とさっぱりと断った。
…。
…。
火無威は目を閉じると
「お前、漫画家に向かってそのさっぱりとした拒否やめろ」
と言い
「出雲に来たら奢ってやる」
それでどうだ?
と返した。
受話器の向こうの相手はそれに
「OK、OK」
じゃあ調べて送ってやる
「パソコンで良いか?」
と返った。
火無威は頷くと
「ああ、早急に頼む」
明日の昼までだ
と告げた。
巳湖斗はそれに
「うわっ、期限きつっ」
と心で叫んで時計を見た。
午後8時だ。
「今夜、徹夜だよ」
相手はそれに
「了解~」
楽しみにしてるからな
「火無威」
と通話を切った。
火無威は深く息を吐き出し
「…しょうがない、何処か探しておくか」
と呟いた。
巳湖斗はジーと火無威を見て
「ごめん、叔父さん」
俺のせいで
と頭を下げた。
火無威は微笑み
「俺がやりたいと思ったからやっているだけだ」
気にするな
と巳湖斗の頭を撫でた。
両親からはされたことが無い。
物心ついた頃から両親の仲は険悪で正にダブル不倫の修羅場であった。
だから両親がしてくれることは全て叔父がしてくれていた。
巳湖斗は笑顔で
「叔父さん、ありがとう」
と答えた。
火無威は頷くと
「さ、明日は早いから寝ろ」
俺も寝る
とベッドに身体を預けた。
翌朝、列車が東京駅に到着するとJR東京構内銀の鈴待合所へ行き、巳湖斗はLINEを入れた。
その30秒後に恐らく待っていたらしい大きな帽子をかぶった少女が
「ありがとう、神蔵君」
と前に立った。
有栖川美玖であった。
巳湖斗は驚いて
「あ、ありす、が、わ…さん」
俺こそごめん
「早くに」
と告げた。
美玖は笑顔で首を振ると時折チラチラ見ながら行き交う人の目を気にしながらそっと封筒を鞄から出すと
「これ、お友達と」
私、凄く楽しみにしてる
「会場では会う時間無いけど…見つけるからね」
とにこっと笑った。
巳湖斗は帽子から覗くその笑顔に微笑むと
「ん、俺も楽しむし…見つけたら手を振る」
と告げた。
「色々あると思うからスルーしていいからね」
美玖は「ごめんね」というと
「じゃあ、午後から映画祭の宣伝とかあるから」
と手を小さく振ると
「あの…美玖でいいよ」
と告げた。
巳湖斗は笑むと
「じゃあ俺のことは巳湖斗で」
と返して手を振った。
火無威は少し離れた場所からそれを見つめ
「学生とアイドルの秘密の純愛…にするか」
と心で呟いた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




