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8/20 3:32 オレ、マグロ、食う

ってことで。

リープのフリー文章のコーナーです。

ここではリープが適当に文章を書いてます。(突然のコーナー説明)

今回の「※」は全部読んだ後から、あとがきを読んでもらえると助かります。



「リープ/THE POLE-AND-LINE FISHING」※1


 リープは急に刺身が食べたくなった。しかも、マグロ。普段はなんともないのに食べたいと思ったら欲望が止めれない。


 インターネットで調べたところ、評判の鮮魚店が見つかった。なんでも漁港に近く、一本釣りしたマグロが安価で食べられるという話だった。


 マグロ、赤身、中トロ、大トロ、トロ、トロ、トロ。

「オレ、マグロ、食う」と、「俺、人間、食う」のテンションで鮮魚店に急いだ。


 鮮魚店には沢山のお客さんがいて賑わっていた。店内には店主のこだわりのようなものが掲示されている。


「釣り人の手に持たれた一本の釣り竿。

ここでのルールはただ一つ。

一本釣りでパフォーマンスをすること。


ありのままのマグロを。

ありのままの新鮮さを。

一本釣りにこめる。

THE POLE-AND-LINE FISHING

とろけるような美味しい世界へ」※2


 店主のこだわりに一瞬、うさん臭さを感じたものの、新鮮、一本釣り、の言葉にリープは期待を寄せた。ショーケースや平台には、さまざまな大きさの切り身が売っていた。家庭ですぐに食べられるような刺身用に切ってあるものや寿司屋が買い付けにきそうな大きさの切り身まで。


 リープは魚の良し悪しはわからないが、色つやも良さそうなマグロの切り身はとても美味しそうだった。たしかにネットで評判だけのことがある。客層も年代幅広く男女がひしめき合っている。


 リープが聞き耳を立てなくても、お客の「一本釣りなんだって」とか「やっぱり天然に限るよね」だとか「養殖とは味が違うんだよ」なんて会話が聞こえてきた。

 これは正解だな。と思い、赤身と中トロの刺身を買って家に帰った。


 家に帰ったリープはお酒をたしなみながら、刺身を口に入れる。

 お、美味しい! と心の中で叫んだ。

 中トロは脂乗りも良い、口の中で溶けていく……赤身だってやわらかくて臭みなんて全然ない。と満足げに舌鼓を打った。※3


 上機嫌になり、テレビをつけると夜の報道番組が放送されていた。

 そこには大きなタイトルで「ネットで評判の鮮魚店、偽装表示か!?」と表示されていた。画面が変わり、問題の鮮魚店が映し出されると、リープは驚いた。


「これ、さっき刺身を買った鮮魚店じゃん……」


 レポーターが鮮魚店前でレポートを始めた。


「ここはネット評判の鮮魚店です。一本釣りのマグロのみを扱うという触れ込みで人気を集めていたのですが……なんと、店内で販売されているマグロは養殖物のマグロだったようです」


 レポーターは店から出てきたお客にインタビューした。


「今、あなたが買ったマグロは養殖物なんですよ。知ってました?」

「え!? 天然モノじゃないの? ……騙された」


 別の客にもインタビューすると、客は顔を真っ赤にして怒り出した。


「一本釣りじゃなかったのかよ! 一本釣りっていえば天然に決まってるだろ!」


レポーターは満足げに頷きながら客の話を聞いた。


 客の不満をさんざん聞いた後、お店へ突撃取材を敢行した。

 ちょうど店長が店内にいたので、インタビューを受けることになった。

 意気揚々とインタビュアーは店長にマイクを向ける。


「ここのお店のマグロは天然のマグロじゃないんですよね?」


 すると店長は表情を変えずに答えた。


「こちら養殖のマグロになります」

「え!? 天然じゃないんですか? じゃあ、表示偽装してたってことですか?」

「いえ。そんなことは一切ないですよ」


 なかなか強気だな。なんて思いながらインタビュアーはマイクをさらに前に突き出しながら、非難するように言葉を強めた。


「でも、お客さん達は皆、天然モノだと思っていますよ!」

「まぁ、それはお客様がご勝手におっしゃってることなので……」


 店長は困った表情を浮かべた。苦笑しながら言葉を繋ぐ。


「養殖場のマグロを一本釣りで釣り上げてるんです。そもそも私どもは天然モノだとは言ってませんし、貼り紙だって天然って書いてないでしょ? 新鮮と一本釣りとしか書いてません」


「いやいや。お客さんは騙されたって怒ってますよ」


「私どもはお客様が何を考えるかまではコントロールできませんので。現にこの報道があってからもお客様の数はそれほど減っておりませんし。美味しくて、新鮮な一本釣りのマグロを提供させてもらっていることは変わりございません」


 店長の自信に満ちた表情にインタビュアーは眉間に皺を寄せた。


 店長へのインタビューを諦め、店を離れたインタビュアーは首をかしげなら取材を締めた。


「『一本釣り』という言葉で消費者を騙していた面はあったと思います。しかし、この客足をみると美味しくて新鮮なマグロを食べたいという希望は叶えられている気もします。天然とはなんなのでしょう。議論の余地はあると思いますが、マグロの楽しみ方は人それぞれ。お店で一度、その眼で確認してはどうでしょうか。皆さん、美味しいマグロライフをお送りください。現場からは以上です」


 CMに移ったテレビから目を離したリープは刺身を口に入れた。


「あ。美味しい」


おわり



……えっ? つまり『THE FIRST TAKE』の炎上ってこういうことでしょ?(違う)※4


今日はここまで。

では、夜にでもお会いしましょう。

※1

『THE FIRST TAKE』のタイトルの付けのパロディです。

「POLE-AND-LINE FISHING」は日本語で「一本釣り」のことです。


※2

『THE FIRST TAKE』のYOUTUBEでの概要を参考にしたパロディです。


※3

ネットで調べたところ、

養殖物は脂乗りも良くて、やわらかく、臭みが少ないらしいです。

ちなみに天然物は身が引き締まってて、臭みが強いものがあるそうです。

さらに余談ですが、ものによっては養殖物より天然物のほうが安い場合があるそうです。


※4

知らない人は調べてみよう。

簡単に言えば『THE FIRST TAKE』が一発録りと言いながら、あとでピッチの調整を行っていたことが発端で炎上になった件です。


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