星になっておやすみ
かつて瞳に蓄えた希望は流れ落ち
私は人になりました
ならば心に描いた夢が溢れたとして
私は一体何になるのでしょう
---
「僕達、明日には死ねるんだって」
「けど死にたくないね」
「そうだね」
病巣を寄せ合い、二本の影が言葉を交わす。
「あれ……」
「泣いてるの?」
片割れの頬を、一筋の希望が伝う。
「枯れた瞳にも、涙なんて残ってたんだ」
「貴方の涙は、なんだか甘いね」
「そうなんだ」
その希望が、もう一方の喉へと溶ける。
「あ」
「どうしたの?」
涙は既に消え、言葉と共に柔らかい表情が浮かぶ。
「ずっとね、君との夢を見てたんだ」
「夢を?」
「身体もまともに動かせなくたって、心に貴方との日々を思い描いていたの」
「なんだか素敵だね」
「けれど、それも今日で終わりだよ」
そして終わりは幸福に
「貴方の涙で僕の心はいっぱいに溢れたの」
「ならもう、夢は見れないの?」
「うん。だけどこれからは夢を見れなくても良いんだ」
見なくたって
見れなくったって
「今度はね、僕が夢を受け取る番なんだ。夢を受け取って希望をみんなに届けられる、そんな素敵な番なんだ」
「私もそんな風になれるかな? なりたいな」
「きっとなれるよ」
「どうして?」
「だって僕が貴方に希望を届けるから」
だから
「僕が貴方の希望の星になるから」
「それなら私は、君の夢の月になるんだね」
星になっておやすみ