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7、今後の方針は

大変おまたせいたしました…!


よろしくおねがいします。


不思議な空間から意識が戻った時は驚いた。

意識が戻り机に突っ伏していた頭をあげ、ヒリヒリする額を撫でながらわたしは目の前で心配顔をしているユランお兄ちゃんにどの位寝てしまってたのか問うと、まだ一分も経ってないよと訝しげな表情で返事をされたから。


話を聞くと魔素感知を習得し始めて直ぐに気絶しその数十秒後に目が覚めたという。


そこで一度驚いたが、妙に納得がいくというか疑問に思わなかった。この世界は魔法も精霊も神様だっている。きっと神様の不思議な力の影響だと考えた。


因みに意識が戻ってからの身体の具合は頗る良くて、魔素感知も自然と出来るようになってた。

左右の手を見つめ感覚を覚えてユランお兄ちゃんに目をやったら、一体この数十秒の間に何があったのかと問うようにブルーの瞳をパチパチさせてて、それが少し可愛くて思わず頬が緩んだ。


ふとあの場所で貰ったブレスレットを見る。意識が戻ってからユランお兄ちゃんにブレスレットの事を聞かれなかったので、もしかすると通常は特定の人物しか見る事が出来ないように魔法をかけてくれたのかも知れないと考えた。


その後は特に変わった事は無く、魔法も使わなかったので手袋を外したまま秘密部屋を出た。ユランお兄ちゃんから「もう今後絶対今回みたいに無理しちゃダメだよ!急に意識が無くなるから、凄く心配したんだから」と優しく叱られ、何かのスイッチが入ったみたいに過保護になりつつ一通り部屋を廻り、昼食の時間までずっとぴったり横に張り付いていた。


そして家族揃って二回目の食事時間。ジェイン司書官から両親に報告が入ってると思うと体に緊張が走る。朝と同じく席に座る時に椅子を引いてくれる従者にお礼を言い席に着き食事の際の挨拶を皆で言い食べ始める。


両親がどんな表情をしているのか知りたくも見れない…。

いや、堂々としてもいいのでは?何で気まずそうにするのか分からないもんね?うんうん。


並べられた昼食を見ながら、その流れで両親の顔をそっと見た。


「エル?体調が悪いのかい?元気が無いように見えるが…」

「エルの属性診断の事は把握してますよ、ジェイン司書官から報告は来てます」


前に座ってる二人の様子を伺うと、エリアスお父様は凄く心配そうにこちらを見ていてマーシャルお母様も落ち着いているが慰めるように優しく話しかけてくれた。


あれ?思ったより気遣いの言葉を伝えてくれた…?

めちゃめちゃ優しい両親じゃない?ちょっと身構えてたけどどうやら杞憂に終わったみたい…?


「僕は家族皆が健康で過ごせるだけで幸福なんだから、あまり気負わなくても良いよ。それに今は我が家の大切な食事の時間だ、気楽にね?僕達の可愛いエル」

「そうよ。私とエリアスの可愛い子供達なのよ?何があっても私達は子供達の味方よ。ねっ、あなた」


ラブラブな二人を恥ずかしそうに眺めるが、隣に座ってるユランお兄ちゃんはいつもの事のようにニコニコしてて食事と会話を楽しんでいる。


なるほど、これはデフォルメだったのか。わたしは理解したぞ。


わたしの属性については食事の後会議を開くというので、温かい料理と家族に和み自然と笑顔になる昼食の時間を過ごして、食後にダイニングルームから退出し別室に向かった。


「さて、ではエルの今後について話し合おうか」


わたし達が入った部屋はダイニングルームの2つ隣にある汎用部屋で一応従者は外の扉の前で待機状態になった。

室内にはわたし含め家族四人、そしてジェイン司書官とフィルランド医師にも同席してもらった。

わたしの隣にユランお兄ちゃんで両親は横面の位置に座っている。ジェイン司書官とフィルランド医師はわたしの前方に。つまり両親を中心にコの字型に着席した。


「昼食の時に話したが、ジェインから報告は受けている。フィルからもエルの体調検査の時に以前と違っているとも聞いていた。…理由は未だ不明だが、今できる事は今後について話し合う事だ」


緊張感が漂う空気で最初に話を切り出したのはエリアスお父様。皆もさっきと打って変わって真剣な面持ちをしている。


「勝手に属性診断を行ったのはあまり褒められた事ではないが…」

「それはもう本当に申し訳ございません…」


申し訳なさそうに言いながら項垂れるジェイン司書官と同じくわたしも反省する。


「すみませんお父様。僕が勝手にエルちゃんを連れて行ってしまったんです」

「まぁ、今回の事態が学園に入る前に気付いて良かったと思って大目に見よう」

「ありがとうございます…」


よく考えると確かにと思うし、図書室で本を物色すると思ったら気づいたら属性診断受けてたし。普通に1・2個の属性だったらそこまで問題になら無かったとは思う。まさか会議にまで発展するとは想像もつかなかったな。


「ユラン、ひとつ訊かせてくれ。以前のユランなら突発的な行動はあまりしなかった性格のはずだが、今回の件はどうして行動に移そうと思ったのだ?」


まっすぐに見つめるエリアスお父様に対し、ユランお兄ちゃんは一度わたしを見て視線を落とした。そして直ぐにエリアスお父様に視線を戻した。


わたしにその視線の真意はわからないままだったが、一瞬だけ見えた彼の瞳はわたしを見ていたにも拘らず、わたしを通して何かを見ているようでなんとなくだけど寂寥感が漂っていた。


一体どうしたのだろうかと一声かけたかったが今の空気で話しかけれなかった。

また後で機会があったら聞いてみる事にした。


「……。お見舞いの時にエルちゃんが魔法について興味深そうにしていたことを思い出しました。今日は屋敷の中を散策するということでしたので、図書室に案内して魔法学書などを見せたくての行動でした。そこでジェイン司書官に会いましたので、ついでにエルの属性を見せて喜ばせたかったのです」

「そうか…。フィルからエルの魔素が以前と違うと報告があり疑問があったのもあるせいだろう」


そう言いながら納得したというように頷き話を続けた。


「今のところエルの属性は確定では無いが、ジェインの報告では虹色…ほぼ全属性だ。正直、驚きで言葉を失ったよ。知っていると思うが、我が公爵領は代々、天空神を祭る土地だ」

「はい。主神格の一人、天空神・カルトゥルムの事ですね」

「天空神…」


そういえば神様がいるって事は、それぞれ神を祭る家系いるのは当然だよね。ここの家系は天空神を祭ってたのか…。

ふいに家族を見回すと母親以外髪色が青系だった事に気がついた。もしかして関係あるのかな?とも考えた。


ユランお兄ちゃんが発言した言葉に対し、その通りだ。とエリアスお父様が褒めるように頷いた。


「我が公爵家はカルトゥルム神の保護下にあり、その象徴としてフランドール家に産まれてくる子は光・風に特化した属性が高確率で産まれ、魔力も非常に高い。…だが、エルの属性については皆目見当がつかない。情報が不十分であるからして、秘密裏に調査していく」


それを踏まえた上でエルには約束して欲しい事がある。と付け加えた。

ジェイン、とエリアスお父様が呼ぶと、呼ばれた彼が立ち上がり用意していた一枚の茶色い紙をエリアスお父様に差し出した。


手渡された紙の内容はジェイン司書官の秘密部屋で言われた時と同じような内容だった。


他人に能力のことを自分から説明したりしない事。


もし家族や側近以外の人に目撃され、話さないといけない状況になった場合、ノエル一人で決めずに家族でどうするか話し合い、結果に応じて契約書を相手と結ぶ事。


どうしても能力を使わなきゃいけない状況が無いとは断言できない為、状況に応じて判断し問題を最小限にする事。


学園の件や予想できなかった件は、順次追加。



この取り決めは一回目と同じ内容だったから、すらすら頭に入ってきた。

紙の内容を話し終えると、今度はわたし達兄妹の方に顔を向け口を開いた。


「エルの魔力などはまだ不明点が多すぎる。ジェインとフィルが調査の責を主に担ってくれる。そこに加わりユランも一緒に進めるということで、間違いないかい?」

「はい」

「国学と魔法学に剣術学も今と変わらずに学ばなければならないが…、それでもいいのかい?」

「構いません。覚悟はしていましたから」


迷わずはっきりとそう答える彼の顔を無意識のうちに見入っていた。

それに、と続けながらわたしの方に顔を向け


「今現状で、エルちゃんが一番辛いと思うから」


ユランお兄ちゃんの声は、さっきのしっかりした声色と違って、傷口に絆創膏を貼るみたいに優しく撫でるように言葉を発した。


「……そうだな。ユランの気持ちと覚悟はよく分かった。ただし無理はしないようにな。ユランも僕達の大切な息子だ、何かあっては困るからな?」


エリアスお父様の隣に座って静かに会話を聞いていたマーシャルお母様も、心配そうな面持ちをしているが、あなたなら大丈夫というように温かな笑みを返しゆっくりと頷いた。


「私たちの可愛い子供達。私たちは何があっても味方です。たとえ血が繋がっていなくとも、ジェインもフィルも大切な家族です。なにか困った事があれば、ジェインやフィルでもいい。相談していきなさいね」

「ありがとうございます」


二人でお礼の言葉を述べると、エリアスお父様が次の話をするようフィルランド医師に促した。

こくりと頷き返した彼はノエルの魔素について話し始めた。


「ノエル様の体内を巡る魔素がとても複雑になっておられるみたいです。ですが、今現状の事を申すのであれば、危険ではございませんのでご安心ください」

「仮に同時に魔法を使ったとしても、問題なさそうか?」

「二種なら今のところ問題はない筈です。これから成長していくにつれ、同時に発動させても影響は及ばないと、推測します」


あくまで推測での話ですので、魔法を使う際には注意した方がよろしいと思います。と忠告を添えた。


「なるほど…。わかった、ありがとう。それで、エルは公式で使う属性は決まったのかい?」


そうだったとお父様のその言葉で思い出した。


考える時間は短かったとはいえ、すぐ決められる内容だから今決めちゃおう。

無難に行くとすれば光と風属性かな?レアと元素の二属性。うん、決めた。


「わたしは光と風属性にします。この家系は今の二属性が多く産まれると言ってたので。それにあまり目立つのは良くないみたいなので、二属性で留めようかと思います」

「うん。その方がいいだろう、いい選択だ」

「そうですね。この家は風属性の者が多くいます。それに私も光と風属性ですので、何かあれば相談に乗りますわね」


仄かに優しく温かく包み込むようにわたしの心を安心させた。味方がすぐ傍に存在しているという事実が心地よく、わたしの奥深くに沈んでいた何かが湧き出てくるようだったが、きゅっと堪えお礼の言葉を伝えた。


「では、みんな。エルの件そのように覚えておくよう、よろしく頼んだよ」


そう言って本日の話し合いは終了した。


まだこの世界で目覚めて一週間なのに、自然と居心地がいいと思えるほどにこの家族が好きになっていった。





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