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1、状況確認が必要です

ちょくちょく編集してます。


昨日わたしは前世の死と転生を確認し、今この場がどんな状況なのか整理する間もなくみんなの前で泣きじゃくった。

感情の溢れだすまま泣いたわたしは、着ている服が涙で湿るのも気にせず母親のマーシェルに抱きしめてもらった。使用人らしき人が静かにお水を用意してくれて少しずつだけど飲み始めると干からびていた喉は徐々に潤いを与えはじめた。


冷たい水が全身に沁みてきて何かが満たされるように幸福感が流れてくるのは、この水に特殊な魔法がかかっていたのかそれとも単にこの身体が水に飢えていたからなのか。疑問を抱くまでに到達しない。

この状況で確信できるのはただ一つ。


わたしは今、ちゃんと生きている。


それだけを頭で理解し噛み締めながら水を飲み干したら、まだ体力が完全に回復していない為受け答えだけ軽く頷く程度で済ませ、もう一度横になった。



ここまでが転生初日の記憶。

あれから1週間経った今日は安静期間が終わった日で、家族と一緒に朝食を食べるのだ。


「おはようございます、ノエル様。お身体の調子はどうですか?」


ノックをし入ってきた彼女はノエル専属の侍女、名前はマリー・ツェルトン。ひまわりみたいなオレンジの髪色が特徴で頭の上にお団子をしてまとめている。

今日も彼女に支度を手伝ってもらうべくドレッサーに移動する。


「おはようございますマリー、とても調子がいいですよ」

「それはよかったです。元々病弱なお身体でしたから…1週間経ってもまだ心配です」


この一週間でわかったことはたくさんあった。

ノエル・フランドール(5歳)はわたしの名前でフランドール公爵家の長女ということと、この国はグラントレアス国といい、その北側に位置するのがフランドール公爵家の領地。

この体の持ち主ノエルは私室のバルコニーから誤って転落してしまったらしい。


「心配してくれてありがとうございます。でも本当に大丈夫になりましたよ」

「そうですか…。でもなにかあればちゃんと言ってくださいね!」

「はぁい」


思うところは複雑だけど記憶に支障があるだけって判断されて他に異常ないみたいだし、せっかく転生したんだからこの世界を楽しまないと。大事なのは今どうするかだ。

本物のノエルの分まで生きていかなきゃ、がんばれわたしっ。


「ノエル様、お支度が整いました」

「ありがとうございます、マリー」


最初は皆の派手な髪色に驚いたけど、異世界だしそういうものだよなぁ。わたしの髪色も前世と比べ変わっていて深い夜のような濃い青でとても綺麗だ。青色好きだからとてもうれしい。


身支度を済ませ、ダイニングに向かう。


むぅ…。さっきからずっと廊下歩いてるけど…長すぎじゃない?体力はまだあるんだけど、足が短くてなかなか目的地に着かないよー!

もぉこういう時に瞬間移動とか浮遊魔法でサーーっとスムーズに行けたら良いのになぁ。うぅー、早く魔法習いたい。


安静期間中はなるべく部屋から出ないようにと言われていたわたしは、家の中を歩くのが初めてだった。ダイニングに向かうときはマリーとは違う侍女が案内してくれる。彼女はエリー・ツェルトン。マリーの双子の妹である。オレンジ味がかかった赤色でショートカットの彼女は歩くスピードをわたしに合わせてくれている。


「ノエル様、到着いたしました」

「案内どうもありがとうございました、助かりました」

「いえいえ、これぐらい当然です。何かあればお申し付け下さい、お役に立てる様にいつでも傍にいますから」

「ありがとうございます」


大きな扉を開けると目の前に広い空間が広がっていて、初めて見る大きさの長テーブルとイスが設置されていた。

座っていたのはノエルの父親で公爵家当主エリアスと母親マーシェル、そしてわたしの2歳上の兄ユランシスだ。海のように青い髪色で7歳と幼いがどこか達観して大人びている印象だ。


ユランお兄ちゃんはわたしが目覚めたと聞いて直ぐに会いに来てくれたらしいけど、わたしが記憶の混乱状態でまともに会える状況じゃなかったから次の日に会いに来てくれたんだよね。しかも見舞いに来てくれたのはその日だけじゃなくて昨日まで毎日ずっと様子を見に来てくれた優しいお兄ちゃんだ。


「おはようございます。遅れてごめんなさい、おまたせしました」

「おはようございますエル」

「エルちゃんおはよう、やっときたね」

「おはよう、エルまっていたよ。さぁ座って、みんなで食事をしよう」


エルはわたしの愛称だ。愛称とは家族や婚約者・友人が親しみを込めて呼ぶ本名以外の名前である。前世は愛称で呼ばれる事がなかったから結構気に入っている。会ったばかりだけど愛称で呼ばれると親近感がわくよねー。


わたしがテーブルに近づくと部屋にいた男性の使用人が失礼しますと一言いい、スッと椅子を引いてそのまま乗せてくれる。


「っ、ありがとう、ございます」

「いえいえ」


すごいっ、すごいよ貴族って!確かにどうやってこの大きな椅子に座ろうかな?なんて考えてたけども、こんなにスムーズに座れるとは感激です…!


入口入って奥の方の上座にエリアスお父様。左にマーシェルお母様。手前上座がユランお兄ちゃんでその左がわたしの定位置となっているらしい。

わたしが席に着くと同時に食事が出され始めた。サラダにフルーツ、小さくカットされたお肉にスープだ。料理を運ぶ使用人と一緒に料理長が来て、直々にメニュー構成を説明してくれた。


「とてもヘルシーで食べやすそうだね」

「料理長がエルの体調を配慮し食べやすく調整してくれたのよ」

「身体に良さそうだね、さすが僕たちの料理長だね」

「すごく嬉しいです、ありがとうございます料理長さん」


ノエルが嬉しそうに料理長にお礼を言うと、彼は少し照れたように頬をピンク色に染めた。


「っ、喜んで頂きとても光栄です!私はこのまま調理場に戻り食材の管理をして参りますので、何かあればお呼び下さい」


彼はそう言い残しお辞儀をして調理場に戻って行った。


「さあ、じゃあいただこうか。いただきます」

「「「いただきます」」」


とってもおいしそう、どれから食べようかな?

んー、やっぱ最初はスープかなぁ?胃を温めてから固形物を食べたいからそうしよう。


各自料理を食べ始める。先ほど料理長が説明してくれていたが、実は食材の名前が日本で使っていた名前だったのだ。


「このスープおいし~い。ジャガイモもちゃんとやわらかくて食べやすいよぉ」

「エルちゃんがおいしそうに食べる姿を見れてとても幸せだよ、僕は」

「あ、ありがとう…」


隣で満面の笑みで褒めてくるなんて!天然なの?天然たらしなの?!顔立ちの良さも加わってすごく毒だよっ!


「こうやって家族みんなで食事ができて幸せだね…ぐすっ…」

「ええ、そうねあなた。今日からまた家族そろってお食事しましょうね」

「お父様…。お気持ちはわかりますが、嬉しい場なので湿っぽくならないでください」

「うっ、ごめん」


すごい家族愛が伝わってくる、ノエルって本当に愛されてたんだねぇ。

それにしても本当にこのスープおいしい、胃に沁みるなぁ。ご飯らしいご飯を食べられなかったからすごく嬉しいよぉぉ。


もちろん安静期間中にもご飯は食べていたが栄養中心で作られていた為、しっかりとした味付けの物を食べていなかったのだ。そしてこの世界の食材が日本の名前を使っていることが信じられなくて、食べていたご飯を詰まらせむせ返ってしまった事があった。


名前の由来は1000年以上前に現れた聖女がこの世界に新しい文明を与えてくれたらしい。それを聞いたノエルは驚きながらもなぜか誇らしくなった。いつか1000年以上前にきた聖女について詳しく聞いてみたい。



きっとその聖女様も日本から来た人なのだろう。そう期待を胸に、そのいつかを待ち遠しく思った。



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