バケモノ
「いやーーーっ!!!こっちくるなーっ!!……っこのバケモノっ!!!私に近づくなっっっ!!!」
岩に強く打ち付けられ死んでいる男性の傍で、泣いている女性にそう言われた。
レイは、力持ちな修道者として知られ、荷物持ちとして引き入れられることが多かった。
しかし、レイはなぜか能力の発動がランダムで、味方へ耐性弱化の祈りをしてしまったり、敵モンスターの傷を治癒してしまったりと、予測のつかない事態を引き起こすことでも有名だった。
そんなレイを仲間にしてくれる人は少なかった。
「何でもします!どうか、仲間にしてください!」
「ね〜♡ダーリン♡」
「なんだ〜い♡ハニー♡」
「あの荷物係に全部持たせて、私たちは仲良く愛の冒険でもしな〜い♡」
「それは名案だね、ハニー♡」
「さっそく話してくるからダーリン♡ここで待っててね♡」
「ありがとうハニー♡頼んだよ〜♡」
「ねぇあんた、私たちの荷物持ちにさせてあげるわ。そのかわり、私たちの邪魔はしないでよね」
「あ、ありがとうございます!!」
「お待たせダーリン♡ちょっと離れるだけでも寂しかったよ〜♡」
「まったく♡可愛いやつめっ♡」
(よかった!やっと仲間にしてもらえた!今度こそは役に立たないとっ!)
剣士と魔法使いのカップルに、修道者兼荷物持ちとして仲間にしてもらうことができた。
ダンジョンに同行するレイは、大量の荷物も軽々と背負いながら2人の後についていた。
「見ててくれハニー♡モンスターなんて2人の愛の力で一瞬さっ♡」
「きゃーステキ♡ダーリンかっこいい〜♡」
(あの2人いつも楽しそうだな〜。2人とも強いし、私、本当に荷物持ちしかしてないや…何かできることないかなぁ…)
「おっと、見てくれハニー♡あんなところに小さなモンスターがいるよ♡」
「あら、随分弱そうね♡ダーリン♡」
「サクッと片付けて、愛の冒険を続けようか♡ハニー♡」
「キャン!キャンキャン!キャッ……」
軽い一突きで小さなモンスターが横たわった。
誇らしげな男性と嬉しそうに見つめる女性の奥で、大きな影が蠢いてるのをレイは見ていた。
(…も、もしかして、あのモンスターの母親…!?)
グォォギャャャーーー!!!!!
「危ないっ!!!」
レイは振り下ろされる大きな爪から、男性を守ろうと必死に手を伸ばした。
ぎりぎりで手が届いてほっとしたのも束の間、目を開けたレイは自分のしてしまったことを悟った。
助けようと突き飛ばした男性は、とてつもない勢いで岩に叩きつけられたことが見て取れるほど、無惨な状態で死んでいた。
その威力に恐れたモンスターは逃げていく。
「………あ…あの……」
「いやーーーっ!!!こっちくるなーっ!!……っこのバケモノっ!!!私に近づくなっっっ!!!」
そう言葉を投げ捨てると、レイの前から去っていった。
(…まただ……なんで?………なんで私にこんな力があるの?……こんな力なんていらないのに………)
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