初めての市場
「レモネード!美味しいレモネードはいらんかねー?」
ここはアルカンシエル王国の隣国、フレッシュ王国の首都レアーにある市場だ。
「あ、そこの人!レモネード飲むかい?」
「では、1つ頂こう。」
「はいよ、500ペドロだよ。」
「む、金がいるのか………?ペドロって何だ?」
店の女が俺をじろじろ見る。
「あんた、何言ってんの?」
俺は後ろから来た少年に手を引っ張っられる。
「わー!すみません!この人ボクの連れで………ほらら、行くよ。」
「ええ?あ、ああ。」
少年は人混みから出ると、突然土下座した。
「申し訳ありませんでしたぁ!!陛下にタメ口を使うなんてぇ!」
この少年は、今回の旅の従者、ゴンザレスJr。アルカンシエル王国の下級兵士で、この国の出身だ。話し方にはややクセがあるが、小さくて童顔で、可愛らしい奴だ。
「気にするな。この格好から分かるように、私の身分がバレては困るしな。まあ何だ、とにかく顔を上げてくれ。」
そう、俺は身分バレ防止のためにフードを目深まで被っているのだ。
「それにしても初めて市場に来てみたが、案外楽しかったな。」
「それはよかったですぅ。でも、お金はあまり使わないでくださいねぇ。ボク達、名目上は陛下の奥様を探しに来たんですよぉ。何日滞在するか分かりませんからぁ。」
そうだった。救世主探しの旅に出ることになったのはいいが、万が一他の者に怪しまれるようなことがあっては大変だ、という貴族の言い分で、名目上は俺の嫁探しということになっているのだ(それでも十分変だがな)。
「あはは、すまんな。金の方はそなたに任せるとしよう。」
「かしこまりましたぁ!ところで、やっぱり行き先は王城ですかぁ?」
「そうだな。案内を頼む。」
「はぁ~い!」