憂鬱なお茶会
一世一代の告白から1週間後。今日はついに王妃主催のお茶会当日である。
「シャーロット様、うじうじしていないで早く支度してください。」
「絶対に嫌われた。」
「まだ言っているんですか。」
「間接的どころからド直級の告白をしてしまったし。」
「後悔するよりいいという風にお考えすることにしたんでしょう。」
「セドリック殿下の静止の言葉を無視して、その場を離れてしまったし。」
「気が動転して、聞こえなかったのでしょう。」
「走ったまま馬車に乗り込んだし。」
「今後気をつけましょうね。」
「グレンお兄様も何も言ってこないし。」
「あ、旦那様がお呼びですよ。早く行きましょう。」
「絶対嫌われた!」
「ここ段差あります。」
シャーロットは話しながら、ティアに引きずられる形で流れるように玄関ホールに到着した。クリーム色のドレスに、紫色の刺繍がほど来れており、同じくクリーム色のリボンでハーフアップにしたしており、首にはアメジストのネックレスが輝いている。ティアに引きずられながらもシャーロットの美貌が変わることはない。
「あら?シャロ、まだご機嫌斜めなの?」
「やはり、城で何かあったのかい?もしや、セドリック殿下に何かされて…。」
「されたら良かったんだけど。」
「なんて言ったんだい?もう一度言ってくれる?」
「セドリック殿下は最後までお優しくして下さいました。」
「あらあら。それなのにどうしてお礼状はお父様に代筆してもらうことにしたの?」
母のメアリーの言葉にシャーロットはギクリと肩を震わせた。これが告白の次に、やってしまったランキング堂々の2位に輝いた問題である。
城から戻り、選び抜いた便箋に当然シャーロットは向き合った。しかし、向き合えば向き合うほど、言葉は出てこず、結果お礼状を出すのに適した期限をオーバーしそうになり、父オスカーが、公爵家としてお礼状を出したのだ。
「そうシャーロットを責めるな。何かあったのだろう。気まずいこともあるかも知れないが、今日の茶会には出てもらわなければならない。さあシャロ、嫌なら会場から外れてればいいからね。」
オスカーから差し出された手を取り、シャーロットは馬車に乗り込んだ。そして、城に着くまでただボケーとしながら、窓の外を見続けたのだった。
会場に着くと、前回のお茶会のおかげで婚約した者たちが、あちこちでエスコートされ、登城してくるのを見て、シャーロットは羨ましさで地団駄を踏みそうになった。
(分かってるわ。あの中に望まない政略結婚をした人たちもいることぐらい分かってるの。)
「まあ、シャーロット様よ。今日もお美しいわね。」
「エスコートされていないのを見ると、まだ婚約されていないのかしら。」
「シャーロット様なら、殿方からではなく、シャーロット様自身で選べますもの。吟味なされているのではなくて?」
「まあ、羨ましいわね。」
(ちっとも羨ましくなんてない。話したこともない殿方たちからくる縁談の数は確かに多いらしいわ。でも、本命の殿下からは来なかったんですもの。選べる中に本命がいなければ意味なんてないわ!)
「お二人の殿下の婚約も決まってないらしいわよ。」
「では、私にもディーン殿下のお相手の可能性があるかしら?」
「反対に考えるとセドリック殿下のお相手も決まってないらしいわ。」
「嫌だわ。指名されたらどうしましょう。」
殿下たちについて噂する令嬢たちの言葉は、シャーロットの耳にはもうすでに入ってなかった。
しばらくして茶会の開催の知らせを受け、シャーロットは王妃様の有難いお話を聞きながら、王妃様の側に仕えているセドリックをガン見した。
(次に見る時には、私以外の誰かがセドリック殿下の隣にいるのかしら。そしたら、今みたいにはっきりと見ることはできないかもしれないわね…。)
その後、始まったお茶会でも、シャーロットは、皆の話に参加する気になれなかった。何人かの殿方に話しかけられたが、簡単な挨拶で済ませてその場を乗り切っていた。
(セドリック殿下がだめなら、公爵家として他の殿方を探さないといけないのは分かっているんだけれど…。もういっそ、お父様に任せようかしら。)
すると、視線の先にセドリックが映った。視線が一瞬合わさったと思ったが、すぐにそらされてしまったことにシャーロットは絶望した。あまりのショックにティアに支えられながら、セドリックと庭師のやり取りを盗み聞きした場所まで来ていた。
「ティア」
「なんでしょうかシャーロット様」
「セドリック殿下が婚約を申し込んでくれる可能性は何%かしら?」
「正直に申し上げてもよろしいですか?」
「ええ」
「グレン様が何も言ってこなかったことと、先程視線を逸らされたこと、そしてお礼状を書かなかったことを考えるに、大きく見積もっても10%でしょうか。」
「貴方、主人を励ますって言葉知らないのかしら?」
「正直に申せと、主人に命令されましたので。」
「怒る元気もないので、今回は許しましょう。」
「シャーロット様、逆に10%の可能性があります。」
「ティアの試算によるとね。私の試算では0%よ。」
「いつもの自信はどこに置いてきたのですか?」
「貴方が言ったんじゃない。セドリック殿下のことになるとポンコツだと。そうよ。私はポンコツなの。結果が出せなければ、何もできない方たちと一緒だわ。」
「これは重症ですね。」
いつもの完璧令嬢シャーロットとは違い、根暗令嬢と化していた。
(最後にもう一度遠目からでもセドリック殿下のお姿を見ておこうかしら。)




