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カタオモイの両想い

作者: 兵藤




ーー 赫々と燃ゆる西の空の煌めきに、少しばかり肌を焦がすその橙色の陽光に、ふと感じる眩しさを左腕で覆う。

濃淡のない黒一色の影が顔に張り付けば、待ってましたと鮮明化する眼前の風景。

それは、何ら違和感のない普遍的な山奥の中。

湿った涼風が木の葉の合唱を誘う雨上がりに。

白いワンピース姿の彼女がその純白に所々似合わない汚れを纏い、風音にさえ負ける声で訴える。

「...して」

ーー真っ赤に染まる濡れた両手が光を反射して真紅の宝石のように煌めく。

何も心配はいらない。

一人分の濃い影を落としていた茜色の空だけ、この淡い顛末の見届け人なのだから。



街全体を鍋に突っ込んだかの蒸される暑さに、運動から生まれる内部からの暑さ。それらが悪意を持って彼を蹂躙する季節。

このうんざりする暑さは皮膚を炙られ内腑を煮やされる感覚を彼に覚えさせる。

この世界を丸ごと暗闇に浸してみたい。

そんな思考に全神経を囚われるまでに、うだるような暑さに憎悪を抱いている。

しかしながら、今日は彼にとって特別な日に変わりはない、嬉々として帰路につくべき理由しかないのだ。それを念頭に置けばいつもよりかは幾分かましな気分であった。

鬱陶しい服のボタンを外しつつ、緩急に乏しい坂を踏破していく。すると間もない内に彼の家が見えてきた。

意外性も何もない、凡庸な彼に見合った平凡な家だ。

「.............ただいま」

果たしてその小声が聞こえたのか、玄関に踏み入れた刹那母親が飛び出してくる。否、ドアの閉まる音が彼の帰宅を報せただけだ。彼の声は届いていない。

唐突に現れた母親は大変よと大声で彼を気圧し、ぎこちない動きで何かを説明しようとする。だが、その全てはパニックによって支離滅裂かつ稚拙に変容し、理解できるようなものではない。意味不明だ。怪文書を眺めている気分になった彼は説明を一蹴し、母親を落ち着かせた。

何が起きているのかを改めて問いただすと、母親はしどろもどろになりながらも今度は纏まった説明を繰り出し始める。つとつとと流れ出す言葉。

「あんたの彼女が、天子ちゃんが、ーー。」

途端に表情を曇らせた彼は、何かに弾かれたように出来得る最大限の脚力で走り出す。床に滑り転んでも膂力を活かし蜘蛛を模倣してなおも這い進む。行き先は自室。

母親の放つ言葉の最後を聞き取らなかったのは、真実からの逃避だったのかもしれない。

まさか、そんなはずは。

ふと過る最悪の結果に頭を振り、自室の扉を勢いよく開ける。薄暗いそこには。

ーーおかえり

椅子に腰を掛け、微笑みを携えた白いワンピースに身を包んだ彼女ーー天子の姿があった。

よかったと安堵の息をつき、おずおずと扉を閉める。自然、彼女の瞳孔を見つめた。何、と照れ笑う彼女に、彼はカラーコンタクトを付けようと提案した。君の瞳は少し小さすぎるよ、と。

彼女は嫌がらなかったが、コンタクトに慣れていないのか、少し目を痛めてしまった。彼は自分の小指を爪で強かに抉った。君を傷つけるわけにはいかないんだ、言葉と共に血が流れる。

次に彼は部屋に備え付けてある化粧台からいくつかの化粧品を取り出し、女性の肌はデリケートだから、と鼻歌混じりに溌剌と準備を始める。どれもこれも、思い出の品ばかりである。

化粧水、乳液、化粧下地、ファンデーション、口紅。これらは思い出に反して残り少ない。毎夜過剰に彼が潤滑剤として濫用してしまったからだ。我ながら馬鹿だと自嘲する。

慣れた手つきで彼女の顔面に塗り込んでいくと彼女はくすぐったいとクスクス笑う。それが可愛らしくてつい悪戯をしかけるが、なんとか自制心で堪えた。彼女が傷ついては大変だ。

化粧を終え、彼女の端麗な顔がより整うと、彼は満足気にソファーにもたれた。己の仕事の出来栄えに、漂う充足感と疲労感。今となっては消えたが、少しばかりの焦燥。全てを丸めて沈む身体に染み込ませる。彼にとってソファーにもたれる行為とは快感を永続的に受け止めるものに等しく、快楽そのもの。極楽の中。

ふと、部屋のドアをノックする音が聞こえた。母親である。

「天子ちゃんのことは、その、悲しいけれど......それでも......」

妙に言葉に詰まる母親に、極楽を抜け出しドアを開けはせずとも聞こえる距離で言う。

「......大丈夫だよ」

作りものみたく落ち着き払った彼の声で平静を取り戻した邪魔者は、ドアの向こうから気配を消した。

ーー日を食らう闇がじわりと襲ってきて、彼の薄暗い部屋をより一層黒へ落とす。もっとも、天子を愛でる彼には関係のないことであるが。

その日、彼のドアを訪れるものはもう闇以外あり得ない。はずだった。

地を揺らす大怒声が聞こえる。

怒声は壁を叩き壊し散弾して飛び散る。こんな声を出せる人間は、もう泥酔した父親以外にあり得なかった。帰宅するなりいつもこれだ。

父親は所構わず家内を歩き回ると、あれがダメだ、これがダメだと喚いて物に当たり、母親に当たり、家財に傷を付ける。普段ならそこで終わるはずが、不幸にもその矛先が部屋の中の彼に向いてしまった。父親にすっかり萎縮してしまった彼は慌ててドアを抑えにかかるが時すでに遅く、ドアは半分以上家の光を受け入れてしまっていた。僅かながらに天子の肢体をそれが照らす。

まずい、生命の維持を危惧した彼は死をも顧みない意気で押し返すが、相手は大の大人。成人にも満たないうえ運動不足の彼にこの苦境を乗り越えろというには無理がありすぎた。少しづつ押されるドアは悔しくも中をしっかり見渡せるほどに開いてしまった。

ここまでかと限界を悟ったその時、母親が後ろから父親の睾丸を蹴り上げて牽制した。死には至らぬとも激痛を呼ぶその強力な一撃は、暴君の如く暴れていた父親を瞬殺。父親は白目を剥いて膝から頽れた。父親が脱力した瞬間を好機と見た彼はすぐさまドアを閉め、出て行けと怒鳴り返す。母親がいなければ死すらあり得た。

彼は母親にだけ感謝の呟きをドア越しに伝え、天子の安否を確認した。勿論外傷は一つも無いのだが、問題は精神面である。顔を覗き込むと彼女は平気と歪に微笑むが、恐怖が目から顔から滲み、がくがくと震えている。壮絶な修羅場を見せつけられて相当参ってしまったのだろう。

ごめんねと震える肩を抱きたかった。

もう大丈夫だと優しく頭を撫でたかった。

手を繋いで安心させたかった。

でも、あの時のようにはいかない。

君を傷つけることは、もうできないんだ。

自分の情けなさに、一雫何かが溢れた気がした。




夢を見た。

数年前の、まだ幼い頃の追憶。

僕は、君といつも一緒だった。

素直で、可愛くて、元気な君と。

あの夏を、覚えているかな?

あれは確か手を引かれて廃村に訪れた時。君は臆病なくせして行動力だけは誰よりもあって、いつも周りや僕を巻き込んでいた。あの時だって、きっと僕がいなきゃ大変なことになってたはずさ。

「でもさ、あなたがいてくれた」

僕がこう叱責がましく言えば、君は僕の手をぎゅっと握って真面目な顔で僕を見つめる。その度どきりと跳ねる心臓。気づいて僕は僕に呆れる。

ヘンな奴を好きになっちゃったなぁ。

それから、僕らはたくさん冒険をしたよね。

寂れた工場に真夜中の森、未開の洞窟、墓地。

今思えば君と同じくらいヘンな場所に行ってたけど、みんなうっとりするくらい刺激的で愉快だった。この幸せは、時間が経てば止まっちゃうけど、僕らの記憶に克明と刻まれてるよね?

ふと見回せば、僕は虚空に浮いていた。目の前には僕に背を向ける君。

あぁ、これはーー

懐かしい情景だ。よりにもよって思い出したくもない記憶を見せてきた。

そうだ。僕は、振られた。長年想ってきた君に、たったの一言で振られた。

ううん、その一言は生憎にも思い出せないな。君は何て言って僕を振ったんだっけ?

ここまできたら教えて欲しくて、虚空に浮かぶ君の肩に手をかける。硬いな、よいしょっ。

君がばきっと振り向いた。首だけ、べきばき振り向いた。

恐ろしい形相をして、顔をどろどろ液体塗れにして君は言葉を放つ。

「ーー死ね」

いや、君はそんなこと言ってない。

君は君のようで実は君じゃない君だ。君はそんなこと言わない君だから僕を否定する君は君か?

えっと、君って誰だっけ?

「!!」

街が眠たげな表情を見せる早朝、小鳥のさえずりが微かに聞こえる浅葱色の空に、彼が顔を見せる。

「おはよう。天子ちゃんは元気かい?」

小鳥に挨拶されたので曖昧な返事をし、汗でぐっしょりの寝巻きを着替えるためシャワーを浴びる。

また、あの悪夢を見た。

始まり方はそれぞれ違えど、結果はみな同じ。どこの誰とも知らない人に罵倒される夢だ。今回は少し過激だったが、恐らく明日は平気だろう。そんな予感がする。

シャワーを浴び終え自室に戻ると、天子が不満そうに彼を見た。一瞬は疑問を浮かべる彼だが、自分の湿った髪を掻いてようやく気づく。そういえば天子はお風呂に入っていない。彼の視点からすれば大したことはないので忘れていたが、彼女にとっては大事を極める行為なのだろう。目が睨んでいる。でも、それはできない。お湯に浸かってはその美が失われてしまうことくらい容易く予想できる。それは困る。

またしても傷を付けられない束縛に情けなくなるが、これもまた仕方がない。

代わりに、今日は彼女に新しい服ときれてしまった化粧品を買い直してあげよう。それで機嫌を直してくれたら嬉しいんだけど。

ようやく目を覚まし始めた街に、彼がふらりと蕩けていく。

売ってるはずのない夏服と、化粧品。

乾いた街並みに揺れながら、ふらりふらりと溶けていくーー




昼を回った。

「うおー......寒、いででで......」

まず寒さが身を包み、昨日の抜けきれない酒が頭部への殴打された痛覚を起こす。

相変わらずなパターンにまたかと自分が厭になる。呑んで、酔って、呑まれて、酔う。いつからか陶酔は狂酔に代わり、会話は一方的な罵詈雑言を吐くだけになった。

そして、あるタイミングで巻き起こる朧げな記憶の陥落。しかも、毎度人を傷つけた記憶を。他はしかと覚えているのにこれだけはどう試行錯誤しても思い出せない。そこに自分自身がいたのかさえも疑うほどに。

そこに、自分という存在が生きていたことを。

厭だ厭だ。こんな自責を続けることに何の意味があろうか。

頭痛を堪えながら寝床を後にする。そうだ、しじみエキス。アレが効くんだ。その後に遅めの朝食でも摂ろう。

重い身体を起こしてダイニングに向かう。まだくらくらするが歩けないほどでもない。その道筋に、思い出したように玄関を見やるといつもはあるはずの二足の靴が無いことに気づいた。珍しい、と口をこぼす。

妻はいつも家事と息子の世話をしてるし、その息子は当然かのように引き篭もりだ。こんなことは未曾有の出来事に等しい、何かあったのだろうか。一抹の不安、しかし痛む頭がより騒ぎ、とうとう我慢が効かなくなったため一刻も早くエキスを飲むことに気を回した。

いつもの納戸を開け、取り出す。開けて口に垂らすと一滴だけ飲めた。なんだ、もうないじゃないか。束の間の落胆。

そこで、頭痛さえも塗り替えるある異変に気づいた。

臭いがする。嘔吐感を誘う異臭が、仄かにだが漂っている。

例えるならばそれは、いや、例えたくもないその臭いは内腑を腐らせるようであった。

今すぐこの家、この臭いから脱しなければ。

しかしながら、二日酔いの所為だという妙な理性が思考を掠めてその行動に抑制をかけてしまった。

そしてふと過る愚考中の愚考。

ーー臭いの発生源は何だ?

頭では逃げろ。だがどうにも身体が動いて止まない。結局、家中歩き回って遂に息子の部屋前に到達してしまった。間違いなく臭いの発生源はここだ。

ドアの開放に酷く躊躇いながらも、余計な思案はしなかった。何かを自分の中で定義したら二度とここには近づけないと思ったからだ。

そろりと音もなくドアを開ける。

あの臭いがぶわっと突き抜け、あまりの気持ち悪さに胃のものが押し上がり、押し戻そうとする努力も虚しく吐き出してしまった。

ひいひいと喘ぎ、涙と鼻水を拭いながらも部屋を見やった。部屋は暗く、今は開けたドアからの光で少しばかり見える程度だ。

鼻と口を塞ぎながら恐る恐る部屋に踏み入れる。

部屋はもう、惨劇だった。

ぐちゃぐちゃの鏡のない化粧台、シミだらけで見る影もないソファー、本棚にみっちりと敷き詰められた本、年甲斐もなく女の子のもののように飾り付けられたベッド、開け放したクローゼットには女性ものの服が何着かかけられている。そして、後は、少女がいた。

椅子に座ったままの彼女は両手をだらんと下ろし座っているというか、乗っかっている印象を与える。背もたれに後頭部を任せ、顔はというとあんぐりと大口を開け、どこか空を見てるようであった。

目は、死んでいた。筋肉も、脳も、この部屋も。

ーー彼女は、死んでいる。

涙が溢れている。尿が漏れ出た。肩は笑い、哄笑と化した。

厭だーー。厭だーー。

ずんと鈍い頭痛がした。二日酔いがここに来て再発したか。後頭部をさすると血が付いていた。

厭だーー。 厭だ......。

暗闇の中、前のめりに倒れた。胃液が吹き上げその体勢で吐いた。また吐いた。

しじみエキス......。

この世の最後に呟いた言葉が、それだった。




ーーねぇ、ねぇ。ねぇってば。

「うるさいな。なんだよ」

ーーどうして、殺しちゃったの?

「殺してなんかない。寝てるだけさ」

ーー嘘つき。頭から血が出てた。

「......気にしないで」

ーー気にする、肉親なんでしょ?

「罪悪感なんてない」

ーーまだ何も言ってない。

がらがらと大きめの荷車に天子と幾つかの必需品を乗せ山を登っていく。もう街は遠く、豆未満に小さい。随分歩いた割にそんなに疲れていないのは、幸いにも坂がなだらかだったことだろう。そうでなければ今頃荷車と共に斜面を暴走していたはずだ。

「よし、着いた。降りて」

ーーよく言うわよ。

眼前に聳えるのは放棄された山荘だ。きっと誰かの別荘が老朽化して放棄されたのだろうが、そんなことはどうでもいい。とりあえず夜を凌げさえすればどうでも。

中も見た目通りに朽ちているが、予想通り住むには充分すぎるほど整っていた。

「ここで新生活を始めよう」

ーー悪くないわね

こうして、彼らの新生活が始まった。

初めてばかりの生活には苦が長く続いたが、彼女の博識によって生み出されるアイデアが着々と状況を改善させていき、一週間をすぎる頃には、贅沢とは言えぬとも人並みな生活はできていた、と思う。

山荘を肝試しだと言って近づく若者や、雨風を凌ぎに来る放浪者などに困らせられることもしばしばあった。その度に腹が立ったので彼らには問題解決の手段となってもらった。

所々汚れが目立つようになったので、彼らから服を拝借した。

段々苦が看過できなくなってきた。彼女もお手上げといった様子で、もう何も言わない。

それでも彼女を愛した。寄り添い、言葉を交わした。

季節は苦境に入る。肌が痛い。吐く息が白い。

食べる物も尽きた。彼女の肌がカサカサになってきた。

それでも彼女を愛す。愛し続ける。

夢の中の知らない人が哀願し始める。「もう埋めて」、「助けて」うざったいので夢の中で殺して食べた。空腹は治らない。

彼女を愛した。幸せな気持ちだ。

微睡んできた。目が霞んでいる。もう限界なのかもしれない。

愛。愛のみ。愛だけ。愛愛愛愛愛アイアイアイ。

「ーー! ーーい! おい!」

汚らわしい顔が目の前にあった。

「大丈夫か君! 生きてるか!?」

視界がまともになってきた。見れば声の主は警官であった。

「おい! どこへ行くんだ!? 待て!」

逃げなきゃ。

彼女を抱えてよろよろと走り出す。自分の腕が骨みたいに細いからか、彼女の身体はかなり重かった。それでも逃げなければ。

「待て! そんなことをしたら......!」

ここへ来るときに使った以来の荷車に彼女を乗せ、山裾を目指して斜面に押し出す。スピードが付いてきた時点で自身も乗った。

まるで、風になったようだった。

身を斬る空気を直に感じつつも、銀色に染まった山肌を駆け抜ける圧倒的疾走感、快走感。

ジェットコースターのそれに僅かながらに笑みが覗く。彼女もきっと。

振り向いて、血が凍る。

ーー腕が、ない。

きっと何処かへ落としてしまったんだ。どこに? あぁ勘弁してくれ。くそッ!

デコボコしている地面にがたんと強い衝撃を受けた。彼女の身体が浮く。必死に抑えるが、どうやら岩肌にぶつかってしまったらしく、荷車と共に無残にも空中を舞った。

君が、弾けた。

頭、胴、足。

落ちつつも仰ぐ空に、君達が舞っている。

嘘だと言ってくれ。

落ちた衝撃は雪のクッションにも関わらず尋常じゃない痛みを以て知らしめられた。背骨の折れる感覚。痛みはない。

君を探したい。這うことしかできない。君を見つけた。頭だけだ。他の君は見当たらない。

ゆっくり這って、君の頭を抱きかかえた。冷たい。この雪よりも、何よりも冷たい。

そうだ、僕が殺した。荷車になんか乗せなきゃよかった。事故死なんて浮かばれない。

ああ、視界に黒が多くなる。焦点が定まらない。心臓がのろまになる。

最後に、君を見た。逝く前に。

骨と、肉塊がいくつかついてるだけの君。

あれ、さっきまでの君と違う。君はそんな、残酷な姿をしていなかった。

どうして、動かない唇を震わせて問う。

彼女が口を開いた。

「ぜんぶ、おまえのせいだ」

どうして、もう一度問う力はもうなかった。

からだが温かくなってきた。

おとも聞こえない。

しんしんふる雪がきれいだ。

ーーしあわせ。









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