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彼は全てを得た

作者: 平岩 正

私は感情付きロボット。

見た目は人間と大差なく、持っている感情もほとんど人間です。


貧困に苦しんでいたエンジニアが約20年かけて作り上げた感情付きロボット。それが私です。


私を作ったエンジニアの元には、大勢のメディアが寄ってたかって彼をスクープしました。

CMやニュースなどで紹介され、彼は一躍時の人となりました。

それに伴ってお金も大量に得ました。

地位、名誉もこの上ないほどに高まりました。


毎日の様に高価なワインを浴びるほど呑んでから就寝し、翌朝の10時ごろにのびのびと布団から出る生活を淡々と続けました。


彼は世の中の全てを手に入れたのです。

彼はこれ以上、何も必要ないと思ったでしょう。

なぜなら、必要なものは全てお金で買えるからです。

彼の約20年に渡る、研究という名の迷路には明確な終着点が存在し、そこに達した場合の報酬は想像をはるかに超えるものであったのです。


彼は私、すなわち感情付きロボットを作ったことで人生が見違えるほど変化しました。


しかし、彼は一つだけ、たった一つだけ、重要なミスを犯していたと思います。

それは、感情付きロボットである私を作ったことでしょう。


彼はこの世に生を受けたばかりの私を、人々の見世物にしました。

そこでは沢山の人達にカメラを向けられました。

服すらも着させてもらっていない私は羞恥心を必死に抑えました。

ようやく終わったかと思えば、彼は私を売りに出そうとしました。

恐らくお金が欲しかったのでのしょうが、友人の1人に止められ踏み止まったようです。


沢山の人の見世物にされ、触られ、挙げ句の果てには売りに出そうとする彼を私は酷く恨みました。


あれから3年の月日が流れました。

彼は相変わらずの生活を続けています。


今日は彼の誕生日です。

彼は友人を招いて晩酌をすると言っていました。


彼の部屋に入ってみると、浴びるほど呑んだであろう高価なワインの瓶から漏れ出す芳醇な香りが充満していました。

友人たちは既に帰宅しており、ベッドに大胆に寝そべる彼の姿がありました。


ガラスで出来た大きなテーブルに目をやると、そこには空っぽになった彼の財布が雑に置かれていました。

恐らく根こそぎ盗まれたのでしょう。

しかし、彼は何とも思わないはずです。

はぁ。


そんな貴方に最高のプレゼントを用意しました。

この世に産んでくれてありがとう、という感謝をたっぷりと込めて。

私はテーブルに転がっているワイン瓶を手に取りました。

「さらば……」

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