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今日から学校と仕事、始まります。①莞

たぶん、天草

作者: 孤独

「単純に強い奴?」


そう訊かれて、山寺光一は答える。


「鮫川の爺や、伊賀も、藤砂も、ラブ・スプリングも、ダーリヤも強いがな。俺はもっと強いけど。”単純”って言葉を付け足すなら」


とても単純。シンプルに強いと言われたら


「たぶん、天草試練だな。俺はあいつを推すわ」



◇       ◇



幼少の頃、単純な肉体のみで熊を屠ったことから天草試練は始まった。

とにかく単純な強さ。

精神的な面を考慮せずとも、クソ単純に肉体が頑強故に成立している強さの定義。

引き締まり凝縮された良質で重厚かつ柔軟さも合わせる筋肉と、その筋肉を支える太さと鋼ですら砕く硬さを持つ骨。内臓器官もまた人並み外れた性能を持ち、この肉体を働かせるに相応しいものとなっている。



バキイィッ



『あ、悪い』


ただの刀でも、槍でも。刃は通らず。



バギイイィッ



『眼球はさすがに弱いから狙うな!頬で良かったー』



銃弾は壁にでも当たったかのように、跳弾していく。

並の攻撃では天草の肉体に傷が付かない。また、肉体が攻撃と化した場合。砲弾や刃、それらとはまったく違っており、シンプルな破壊しか生まない。

拳の一発、蹴りの一撃。大地を割り、ビルを砕く。

耐久力、防御力、破壊力、瞬発力、持久力。それらの”力”という強さが、トップクラスの性能を持つため、単純に強いという意味では彼が実に単純で強い。


味方からは頼られ、敵からは恐れられる。

ほとんどの攻撃が彼の肉体には通じず、厳重な防御や要塞ですらその肉体でぶち壊す。


『すまん。失礼するぞ』


そうそう。これは当時の天草の青春の1ページ。直属の上司にして、自分の師でもあった鮫川隆三から出された特別任務のお話。

任務の内容は……


【国外から10億円をかき集めてこい。期間は2週間。元手は1億くらい出そう】


という任務である。政治的なお勉強も兼ねたものであるが、天草はとても簡単に鮫川に伝えた。


『何カ国の総資金を奪ってきます』


なにも分かっていない事を伝えていた。そして、それができる事を本人は思っていた。今現在、小さな国に乗り込んでのお買い物。

天草はこれが資金をかき集める事が任務であると、純粋な思考を持って行っていた。それが鮫川や光一などの仲間達には恐ろしく思われた。とにかく、やべぇ……。怪物や化け物、そーいった類いではあったが、彼の意識がこちらに向かないことが良いこと。スカウトした鮫川は一番、命を大切に思った。

光一も、こいつのやばさを語るに


「あーいうのを戦闘、戦争として敵に回すと、とにかく厄介だ。ノーマルでクソ強い肉体を持っている上に、ここ一番で力を発揮するタイプの精神力。未だに本気で戦ったことがない奴」


計画、会談、技術、科学。

それらを容易く弾き出す、肉体という生物の元来がんらいの武器を、一番にし。大犯罪や秩序の乱れであろうと、彼の生物としての強さの前ではどれも行動の一つで終わってしまう。肉体の強さ、暴力の恐ろしさ、抗争を沈静化させる巨大な力。体現する。


国に乗り込み、金を奪う。相手の命を詰む。その3つで達成しちまう暴の強さ。


この任務に天草が苦労した事を挙げれば



『口座に金を振り込むの面倒なんだが……。時間掛かりすぎ……!』


パァァンッ


戦うことよりも金を送り込むこと、振り込むことだったという。命を狙われることすら、彼にとっては何も気にしないほどに、強すぎる肉体を誇っていた。後ろから狙撃されようとも



『おい!ATMに銃弾が当たったら、壊れるだろうが!』


そーいう心配……?

敵さえも呆れるほどの強さに至った人。


◇       ◇


そんな彼も成長し、部下を持ち、離すわけにはいかない立場を手にした。強さと同じ程度の組織の指揮権。


「……………」

「どーした、天草」

「いや。俺が組長をやると、やっぱな。命をもっと大事にしなきゃいけねぇよな」

「お前、今更か……?昔から危機感がなかったな」

「戦いにならないと出て来ないんだよ。もう習慣になった」


ただの兵士としてなら良かったその強さ。しかし、今の自分は多くの部下を預かる組織のトップに座る者だ。昔のように、買い物感覚で任務をやってはいけないと思う。しかし、その強さがどれだけ支えとなっていた事か。自分自身分かる。


「だから、強くなんなきゃいけねぇー」


肉体的な強さは生物としても随一の物を持つ彼であるが、精神的には不安定。ムラッ気がある。とはいえ、彼の強さが肉体であることは変わらず。立場と同様に変えることもないだろう。


「鍛えるペース上げるか。まだ衰える年齢じゃねぇ」



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