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勇者召喚なんて起こるわけがない  作者: 蒼原凉
勇者召喚対策本部、始動
8/13

「ねえ、入ってよ、お願い」

「あの、私からもお願いします」

 透華と礼奈さんから頼まれる。礼奈さん、すまない。悪いが、俺は変人の仲間入りをする気はない。高校ではごく普通の高校生として過ごすと決めたんだ。うう、だから緑の目で泣き落としをしないでくれ。

「俺は変人たちの仲間入りをしたくはないの!」

「いいでは、ないですか。どうせ、我らと関わった時点で変人扱いは決定しています。どうせだったらセイギは変態だという噂でも流してやりましょうか」

「情報操作は得意」

 おい飛鳥! 変な噂流すんじゃねえ! 俺はごく普通の男子だ! それから友梨もそんな馬鹿なことを言うんじゃない!

「ふざけんな! 刑法230条、名誉毀損罪だぞ!」

「あ、それいいじゃない。礼奈にセクハラしたことにでもしましょうか。ほら、飛鳥、カメラをもって」

 誰がするか! そんな都合よく罠に引っかかってたまるか! 友梨が忍者みたいな動きをするのが分かってたら、ちょっとは対応できるんだからな! そんなことで脅されてたまるか!

 というか、礼奈さんをいじめるのはやめろ! 泣きそうな眼をしてるじゃないか!

「お前らは人でなしか!? 思考回路がぶっ飛んでるけど、善悪感くらいはあると思ってたぞ!」

「何言ってるの? ばれなきゃ犯罪じゃないし、それに、合意もあるからセイギに悪評が出るくらいよ。ね、礼奈」

「ひっ?」

 礼奈さんが本当にかわいそうだ。オッドアイでメイド服という外観は仕方ないけど、この中で一番常識人っぽいし。とりあえず何か企んでそうな透華の右手を捕まえておく。

「とりあえず、本人が嫌がっていることはやめろ。いくら直属のメイドでも、やっていいことと悪いことくらいある」

「もう、仕方ないわね」

 何が仕方ないだ。お前は傍若無人すぎるだろ。

「そうなれば、何かセイギの弱みをつかんで脅は……、説得を」

「そうね」

 おい飛鳥! 今お前しれっと脅迫って言いかけただろ! 何考えとるんだ!

「確かに、人には知られたくないことの一つや二つや三つや四つくらいあるものね」

 やけに多いな。

「よし、そうしましょう。早速、友梨は何かないかクラスのみんなに聞いといてもらえる?」

「御意」

 おい、勝手に人のプライバシー調べんな! まあ、一応、クラスの人に弱みは知られてないはず。立川は中学時代には付き合いなかったし、荒井も人の弱みを話すような性格じゃないはずだし。だ、大丈夫だよね?

「それじゃあ、私の方もお父さんに調べてもらおうかしらね」

「それじゃあ、今日のところはこれで……」

「待ちなさい」

 腕をつかまれた。いや、用事がないなら帰してほしいんだけど。というか帰せ。家に帰せ。晩御飯作らされるかもしれないから早く帰せ。

「あなた、礼奈がどうなってもいいの?」

「は?」

 というか、かわいそうなんでやめてもらえます?

「礼奈は天涯孤独で、私の家に雇われてるの。それがなくなったらどうなると思う?」

「おいやめろ! 流石にかわいそうだろうが!」

「まあ、そんなことはしないわよ。美少女でオッドアイでメイド。これ以上の属性を持った人はそういないもの」

 ちょっと笑いながら透華が言う。

「でも、あなたが入らないと礼奈が困るのは確かね」

「困らせるのはお前だろうが!」

 礼奈さんを別に困らせたくはない。困らせたくはないし、できることなら協力してあげたいと思うが。だけれども、それとこれとは話が別だ。そう思っていたら透華が不敵な笑みを浮かべた。

「やっぱり。あなた、礼奈に惚れてるでしょ」

「べ、べべべべ別に、ほ、惚れてなんかいないし」

「ほんとに?」

「ほ、本当だし」

 な、何しれっと変なことを聞いてやがる! た、確かに礼奈さんは美少女だけど、美少女だけど、だからといってこの変な部活に入りたいとは思わないし、お、俺はリスクとリターンをちゃんと考えて行動できる男だし。

「この部活に入ればハーレム状態よ。もちろん、礼奈の他に私だっているわ」

「お前らは要らん」

 頭のおかしい人は要らん。たとえそれが美少女でも、頭の中が残念なやつ、例えば透華とか飛鳥とか友梨とかあいつとか、そんな奴は苦労させられる未来しか見えん。いやだ。断固断る。

「お前らは、ってことは、礼奈は別ってことかしらね? そう言えば、礼奈だけ、『礼奈さん』って呼んでたような気もするし」

 あ、しまった。

「それじゃあ、礼奈に色仕掛けでもさせて見せようか、ね」

「おい、礼奈さんを困らせるようなことするな」

 メイド服の胸元に手をかけようとした透華の腕をつかむ。ともかく、礼奈さんを困らせるようなことだけはするな。

「離しなさいよ! こう見えて着やせするタイプなのよ! セイギだって色気があったほうがいいでしょ」

「いいわけあるか!」

 もう怒った。軽くだが透華の頭にチョップを食らわせる。ほら、礼奈さんさっきからずっと思いつめたような顔で手を胸の前で組んでるじゃないか。

「あとお前は人に迷惑をかけないことを心掛けろ。特に俺と礼奈さん」

「いいじゃない! 目的のためには手段は選ばないわ!」

 いや、自重しろよ。


 結局、こいつは最後まで引き下がらず、下校時刻だと生徒会員が怒鳴りこんでくるまで俺は部室(予定地)に拘留された。はあ、疲れた。

 でも、大丈夫だよね? まさか、そんな、知られるなんてことないよね? うん。

更新頻度上げたい……

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