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勇者召喚なんて起こるわけがない  作者: 蒼原凉
勇者召喚対策本部、始動
7/13

「まあ、いいわ。うちにはもっとすごい人材がいるんだから!」

 何の反省もしてない様子で透華は叫ぶ。おい、少しは反省しろよ。

「うちのエース、ウィザードの飛鳥よ!」

「いかにも」

 そう言って、中二病魔女っ娘が前に進み出る。いたい。こいつらいろいろといたい。ウィザードって中二病にしても酷くないか。

「我こそは、過去と未来を見通す大悪魔、地獄の公爵にして序列29位。あるいは豊穣の女神。その名もアスタロトである。って痛い」

「まじめにやれ」

 ふざけた口上を述べる自称ウィザードに軽くチョップをかます。

「うう、宮原飛鳥です。飛鳥って呼ばれてます。これでも魔法使いです」

「そうよ、彼女はれっきとした魔法使いなのよ!」

 うそくせ。というかこの世界に魔法なんてあるわけがない。

「その目は何? ちゃんと彼女は魔法使えるわよ。何だったら、飛鳥! ここで見せてあげなさい!」

「ふっふっふ、わかりました。見せてあげますよ」

 透華が俺の目を怪しんで言うと、飛鳥(たぶんこう呼んだ方が透華は満足するんだろう)はしおれた様子から一気にスイッチを入れる。そして右手に持った杖を掲げた。

「ファイアーボー……」

「おいちょっと待て!」

 慌てて杖を取り押さえる。こいつ、今何をしようとしやがった!

「ちょっとセイギ、これじゃあ飛鳥が魔法唱えられないじゃない!」

「お前も場所を考えろ! 部室棟は木造だぞ! ファイアーボールって言いかけてたし、燃え移ったらやばいだろ! 時と場所を考えてやれ!」

「うう、痛いです」

 こいつら、何も考えてなっかったのか? 万が一にも魔法なんてないが、いやな予感がしたぞ。

「わかったわよ。それじゃあ運動場でやるわよ」

「おい、運動場は運動部が使ってる」




 というわけで俺たちは中庭に来ていた。

「ふ、それじゃあ早速行きますよ」

 そう言うと、飛鳥は右手で杖を高々と抱え、意味ありげに振り回す。

「ファイアーボール!」

 そう叫んだ飛鳥の胸元から、燃えた火の玉が飛び出し、そして放物線を描いて落下した。その途中で燃え尽きる。


 ……こいつ、本当にファイアーボール出せたのか。

「すごいわ飛鳥! さすが私が見込んだウィザードよ! 魔法よ魔法! 本物の魔法よ!」

 そう言って透華が飛び跳ねる。礼奈さんも驚いているようだ。

 しかし、あれは魔法ではない。どう見てもあれはただの手品だ。右手に注目させといて、左手で油でもしみこませた球を火をつけて投げる。マジシャンがよくやる手法だ。どうやら、この部活のmagicianは魔法使いでなく奇術師だったらしい。魔法って、そこまで大仰なものじゃないじゃん。まあ、透華の夢は壊さないでいてやるか。

「ふっふっふ、とくと見たわね。それじゃあ、さっさと部室に帰るわよ」

 そう言って透華がさっそうと歩きだす横で、俺は飛鳥に声をかけた。

「おい、えせ魔法使い」

「えせじゃない! ちゃんとした魔法使いだ!」

 いや、魔法じゃなくて手品だからね。

「あれ、手品だろ。左手で何か投げたの、ちゃんと見てたぞ」

「うう、それは」

 途端にしおらしくなる。

「そ、そうだただの手品だ。でも、いいではないか! かっこいいのだから!」

「ウィザードを詐称するのか?」

 そう言うと途端に黙ってしまった。

「まあ、中二病から手品師になるやつはなかなかいないが」

 本心を言えば、魔法使い云々はともかく、マジックはすごいと思った。中二病からあそこまで昇華させられるやつはなかなかいない、と思う。相当ひどいやつでも、マジックを極めようとはしなかったし、な。

「で、セイギは私をどうしようというのだ。できれば恥ずかしい秘密は暴露しないでもらいたいのだが……」

「別に、言う必要のないことは言わねえよ。透華にも言わない。別に、夢を壊したくはないからな。そこに俺が含まれてるかどうかは別として」

 まあ、本人が成り切ってるならいいとするか。俺に被害が及ばなければ。

「それを聞いて安心しました。それより早く戻りますよ! 透華が待っています」

 そして俺は飛鳥に引っ張られながら部室(予定地)へと戻っていくのだった。だって、忍者が見張ってるんだもん。




「すごいでしょ、本当に飛鳥は魔法が使えるのよ」

「あー、はいはい」

 しかし、手品だと知ったものを魔法と言い張られるのは困る。主に俺が。

「だったら、入ってくれるわよね!」

「断る! そもそも、勇者召喚なんてないし、俺は変人の仲間入りはごめんだ!」

 どうしてこの流れでだったらになるんだ! 何度も俺は嫌だって言ってるだろうが!

「あんただって感心してたじゃない!」

「それとこれとは別問題だ! それに魔法使いっつってもファイアーボールだけじゃねえか!」

「何を言う! 私だって本気を出せば『エクスプロージョン』だって使えますからね!」

「嘘つけ!」

 というか、それ、某ライトノベルの必殺魔法だろうが! そんな破壊力のある魔法使われてたまるか! というかそんなマジックがあるか!

「それはすごいわ! セイギもこれから一緒にやっていく仲間として、心強いでしょ!」

「誰がするか!」

 というか一発だけだろうが!

「何度言っても俺は入らないからな!」

 どいつもこいつも変人ばっかりだ! この部活(予定)は!

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