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勇者召喚なんて起こるわけがない  作者: 蒼原凉
勇者召喚対策本部、始動
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 結論から言おう。何も思い付きはしなかった。

 いや、実際何も思い浮かばなかったわけじゃないんだ。興味がありそうだった立川に押し付けるとか、そもそもかち合わないように、さっさと逃げ帰るとか。流石に学校を休む気はないし、親に離婚して母姓に戻るとかも考えたけどダメだった。というか、親に聞いたら旧姓桜庭だった。十分珍しいし。ことごとくダメでした。

「セイギ、迎えに来たわよ」

「だから俺をあだ名で呼ぶな! それから憐みの視線で見るな! 俺は巻き込まれただけだ!」

 結局、肘を決められながら俺は連行されたのだった。荒井、気の毒な目で見るな! 変なことをしゃべるんじゃないぞ! それから肘痛いから!




「昨日は私以外自己紹介できなかったから、今日はちゃんと全員聞いてもらうわよ。もう、今日は目を離さないんだから。それじゃあ、まず、礼奈からね」

「それは昨日聞いた」

 連れて来られた部室(予定地)で透華がさっさと話を進める。おい、俺の事情は省みないのかい。知ってたけど。こいつが傍若無人だって知ってたけど。

「えっと、礼奈です。昨日話した通りです」

「あれ、昨日自己紹介してたっけ? ま、いっか次、友梨ね」

 透華はその辺の事情を知らないらしい。まあ、知っていたところでどうなのかって話でもあるんだが。

「どうも、友梨と呼ばれている者だ」

 ってどこから現れた!

 どうやら、また窓の外に潜んでいたらしい。こいつは忍者かよ。

「彼女はすごいのよ。なんとパルクールの達人なの。それだけじゃなくて、縄とかその辺の扱いも長けてるの」

 おい、まじで忍者じゃないか。パルクールってもともとそういうスポーツだったよな。しかも、縄って。あとは手裏剣とまきびしがあれば完成するんじゃね。この時点で忍者で決定でいいな。

「というわけで、そのすごさを見せてほしいの」

「承知した」

 そう言うなり、俺は透華に窓に押し付けられた。だから痛い、痛いって。わかったから、おとなしく見るから!

 友梨は、恐らく名前で呼べと言われそうだから名前で呼ぶけど、その動きは素晴らしいものだった。流石はパルクールの達人。窓から飛び降りたかと思うと、サッカーのネットをよじ登り、前中で飛び降りる。それから校舎にとりつくと、排水管だったり、細いパイプだったりをつかみながらひょいひょいと上っていく。生で見るのは初めてだが、パルクールってすごいものだよな。一回やろうとして挫折したけど。

「ふっふっふ、我らの斥候役として申し分ない実力ではありませんか。やはり我の目に狂いはなかった」

 黙れ中二病魔女っ娘。それから横に立って俺に同意を求めるな。俺は勇者召喚なんてされたくもない。第一起こるわけがないだろ。無駄な技術だ。

「そうよ、しかも彼女はボルダリングで全国大会に出場してるのよ!」

 透華が後ろから大声で言う。うぜえ。マジでどうでもいい。パルクールはすごいけど、だから何なんだよ。少なくともお前の功績ではない。

 視線を元に戻すと友梨は鉤縄を部室棟に向かって投げつけていた。そのままターザンロープのごとく校舎の屋上から飛び降り、その間に少し縄を上って俺たちのいる部屋に飛び込んできた。そして蹴られた。

「申し訳ない。誤った」

「いや、それはいい。すごかったぞ」

 一応俺にだってすごいものをすごいとほめるくらいの志はある。俺が関わらなければだが。蹴られても、まあ許す。痛かったけど。

「しかもね、友梨は由緒正しい忍者の末裔なのよ! くのいちなのよ! すごいでしょ」

 それよりも透華がうるさい。にしてもほんとに忍者だったんですね。

「いかにも。私の名は服部友梨。由緒正しき、風魔一族の末裔なり」

「服部半蔵じゃねえのかよ!」

 思わず突っ込む。おい、服部って名字なのに、半蔵の子孫じゃないのかよ! 普通は風魔一族の末裔とは思わないでしょ!

「いかにも。私の最大の汚点なり。母が恋をしたのが服部という男だったのだ。しかし、それは仕方ないと思ってくれ」

「そうよ、名字がどうのこうのより、彼女は忍者なのよ! 重要なのはそこなのよ!」

 あっそ。だから何なんですか。俺入らないから関係ないし。忍者と、中二病魔女っ娘と、メイド。あと、立川でも誘ってよろしくやってくださいよ。俺、関わりたくないんで。

「どう、すごいでしょ。このメンバー」

「ああ、確かにすごいな」

 というかどうやってこの面子を集めたのか気になる。まあ、俺には関係のないことだが。

「でしょ。これなら入る気になるよね」

「誰が入るか!」

 絶対に入らんからな!

もう一話だけ自己紹介パートが続きます

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