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勇者召喚なんて起こるわけがない  作者: 蒼原凉
勇者召喚対策本部、始動
5/13

 明日から、透華の攻勢をいかにしてしのぐか。そればっかり考えていた俺にとって、それは全くの盲点だった。まさか、俺の家まで押しかけられることになろうとは。しかも、一番おとなしく見えた、あのメイド少女が。


 ピンポーン

 チャイムが鳴り響く。宅急便か何かだろうか。そう思って俺は扉を開けた。


 ……。よし、扉を閉めよう。

「あ、あ、あの、ま、待ってください!」

 扉の前に立っていたメイド少女が足を扉に挟む。閉められない。

「あの、セイギさん、話があるんです。上がらせてもらってもいいですか?」

 どうしよう。らちが明かない。閉じこもれない。仕方ない。一応招きあげるか。それにしても、あなたまで俺をあだ名で呼ぶんですね。

「わかりました、お茶でも用意するんでリビングにいてください」

 そう言って俺は扉を開ける。決して美少女だからどうこうというわけじゃないからな! 美少女だけど。

「あの、セイギさん」

「何の用だよ、いったい」

 お茶を飲みほしたメイド少女に、不機嫌になりながら俺は言う。いやな予感しかしない。

「あの、勇者召喚対策本部に入ってください」

「いやです」

「お願いします。私が大変なことになるんです」

 そう言って俺の方に身を乗り出してくる。ちょっと、近い、近いって!

「わかったから、話だけでも聞くから、とりあえず落ち着け。な、な? ちょっとこの体制はやばいって」

「あ」

 今更ながら気づいたのか、顔をカアッと赤く染める。そして、うつむいて話し出した。

「えっと、自己紹介がまだでしたよね。成瀬礼奈っていいます。あの、一応、礼奈と呼ばせるように言われてます」

 消え入りそうな声で言う。にしてもなんだ、言わせるように言われているって。上司でもいるのか?

「あの、今更ですけど私がどうしてメイド服着てるのか、気になりませんでした?」

「ああ、実際かなり。よほどのことがない限り、制服以外の着用は許可されないはずだからな。それにオッドアイなのも天然であってるか? カラコンは校則には禁止されてたはずだし」

 そう言うと、メイド少女は左目を抑えた。

「ええ、そうです。ちょっといろいろありまして、あんまり話したくはないのですが、これはカラコンではないです。でも、セイギさんって校則に詳しいですね」

「ああ、ここに入る前に調べたからな」

 近くにある高校の校則を調べて、ここが身体的特徴が結構厳しそうだったから私立一条学院高校にしたわけで。あいつはこういうところを選べないだろうと思ってきたわけだったのに。ほんと、どうしてこうなるかなあ。

「それより、どうして礼奈さんは、そう呼べって言われたらしいからそうよばさせてもらうけど、メイド服を着てるんだ? 校則じゃよっぽどの例外じゃなきゃ禁止されてるだろうに」

「実は、私、そのよっぽどの例外なんです」

 は?

 いや、例外があるのくらいは知ってる。でもそれは、身体的障害で制服を着るのが困難な人が許可されることじゃないのか? それ以外、聞いたことなんてないぞ。

「実は、理事長直々にお墨付きをもらいまして」

 どういうことだよ! 理事長は生徒の自主性どうのこうのじゃなかったのかよ!

「セイギさん、落ち着いてください! その、実は、私、透華様のお屋敷のメイドでして」

「だからと言ってメイド服で通っていいことに話ならないだろうが!」

 あ、いたのね、上司。いや、それより、何こいつしれっと爆弾発言投下してるの!? 今、透華様のお屋敷って言ったよね!? あいつお嬢様なの!? って、名字一条だし、もしかして……。

 さっと血の気が引いていくのを感じた。まさか、まさかね。そんなわけ、ないよね? ないよね?

「あの、まさかとは思うけど、理事長さんって」

「はい、透華様のお父様です」

 マジだった。どうしよう、これ。

「だから、許可されたと……」

「ええ、そういうわけです」

 どうしよう。言葉が出て来ない。どうやったら逃げ切れるの? これ、理事長権限使われたら俺やばいんじゃね? あ、でも、生徒の自主性を重んじるって言ってたし、言ってた気がするし、言ってたはずだし、大丈夫だよね、これ。ね?

「にしても、なんでメイドなんて」

「実は私両親がいなくて。それで、透華様のお屋敷で働かせていただいてるのですが、今回の件で不評を買うともう行く当てがなくて」

「わかった、わかったから! 考えておくから! 頼むからそんなヘビーな話しないでくれ!」

 ただでさえ頭が痛いのに、その上一人の人事までかかってくるって、俺どうしたらいいの? あ。言っとくけど礼奈さんが美少女だからじゃないからね! だから、手を顔に当ててなくなって。

「わかった、今日のところは考えておくから! とりあえず、落ち着いてくれって、な? な?」

 二日目から女子を家に連れ込んで泣かせた。有罪になりかねんから! 頼むから、落ち着いてください。

「はい、くれぐれも、よろしくお願いします。私の、将来のためにも」

 そう言って、礼奈さんは帰っていった。ポケットティッシュ一つで十分だったかな?

 それにしても、頭を抱える案件が増え過ぎだ! 透華とはできるだけ関わりたくないけど、礼奈さんが大変だし。でも、俺は考えておくとしか言ってないから、断ってもいいよね? というか、透華が別の人材を見つければいいんだよ! そうだ、そうしよう。

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