表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚なんて起こるわけがない  作者: 蒼原凉
勇者召喚対策本部、始動
4/13

「それじゃあ、話の続きをしましょうか。まずは自己紹介から。私は一条透華。この部活、勇者召喚対策本部の副部長よ。透華でいいわ。で、こっちが」

「おい。いろいろと突っ込みたいところがある」

 メイド服の少女を紹介しようとしたところで割り込む。こいつ、今さらっと重要なところをすっ飛ばしたよな!?

「何、セイギ?」

「おい、何しれっと俺をあだ名で呼んでるんだ」

「え、だってセイギもこの部活の仲間じゃない」

「俺は入らねえよ!」

 こいつ、何しれっと脳内妄想を現実世界に拡張してやがんだ。俺はそんなこと一言も言ってないぞ。だからいきなり名前呼びしてくれてかまわないと言い出したわけだろうが、勝手に人を入れんな。

「それからあと二つ。まず、勇者召喚対策本部ってのはなんだ」

「あ、ごめん。説明してなかったね。これから私たちが作る部活よ。既に書類の方は仕立ててあるわ。あとはこれを生徒会に提出するだけよ」

 そう言って部活設立届とやらをかざす。この学校では5人以上の部員がいれば部活動を設立できることになっている。その動機がよっぽどおかしいものでない限りは、生徒会が許すだろう。にしても5人。5人か。こいつ、メイド少女、中二病魔女っ娘、忍者少女、あと俺。計5人。おい、何しれっと頭数に入れてやがる!

「そもそもそれ、区切りは部じゃなくて、本部だろう。無理やり合わせただけで」

「そのくらい、些細なことよ」

「全然些細じゃねえ!」

 例えるならあれだ。中二病を中と二病に分けるようなもんだ。もとは中学二年くらいに起こるから中二病って言われてたのに、意味が全然変わっちまうだろうが。

「いいではないですか。例えば国語で~からという形式にあうように答えろという問題でだからと書くようなものでしょう」

 お前は黙ってろ中二病魔女っ娘。それ、どう考えても誤答だからな!

「もういい、次だ」

 俺の予感が正しければ、俺はとんでもないことに巻き込まれている気がする。そんな不安になることをこいつは言いやがった。

「お前」

「透華って呼んで」

「透華、さっき副部長だって言ったよな。一体部長は誰なんだ」

「決まってるじゃない。セイギしかいないわよ。ね?」

「あ、はい」

「我も賛成です」

「……」

 おい、ねじゃねえ! それからお前らも同調するな!

「ふざけんな! 俺はこんな部活入らないし、ましてや部長なんてしないからな! お前らだけで楽しんどけよ!」

 絶対に嫌だからな。そんなことになったら、荒井や立川、それにクラスの連中、特に女子から痛い目で見られるからな。そんなことできるか。

「ふえぇぇぇ! 困りますよ!」

「そうよ、セイギみたいに勇者っぽい名前の人は他にいなかったんだから! おとなしく生贄、もとい部活に入りなさい」

「嫌だ! そんな消去法みたいな選ばれ方は嫌だ!」

 それにこいつ今生贄って言ったよな!? 間違いなく断言したよな。それから、メイド少女。服装と目以外はまともだと思ってたのに、擁護するような発言をするな。

「ふふふ、我は高尚なる眷属を求めているのです。その我に選ばれるなんて光栄なことではありませんか」

「ふざけんな! 俺以外にもイケメンとか、剣道全国大会出場とか、そういうやつはいるじゃないか! そいつらでいいだろ」

「ダメよ! 田中や山田なんて平凡な名前、主人公にふさわしくないわ!」

 おい、今こいつラノベの主人公ほとんど否定しやがったな! 佐藤さんとか鈴木さんとか、ラノベの主人公にも登場するわ! ジャンルは違うけど吉井さんとか坂井さんとかもいるからな!

 それから中二病魔女っ娘。お前、俺を下っ端扱いしてるだろ。そうはならないからな。

「俺もそうだよ! 顔も成績も普通だからな」

「でも、何か特技くらいはあるでしょ」

「ああ、手先は器用だが……」

 って俺はなんでこんなことをしゃべらされてんだ!

「ってことは序盤はさえないけど、あとになって俺TUEEE的な展開になるのよね。迫害される不遇職業だけど、アーティファクトとか作って本業の勇者を超えるのよ。そして……」

 おい、何しれっと妄想にふけってる。透華が言う作品は恐らくアニメ化が決定したあれだろうが、そこまで重ねるな。俺は中二病じゃないし。冒頭でいじめを受けたいとも思わないからな!

「で、現地で美少女を見つけて王女と恋に落ちたりしてハーレムを気づきあげて……」

 今思った。これ、チャンスじゃね? ドアの前に立つのは透華とメイド少女だけ。で、透華は妄想にふけってメイド少女は気弱そう。よし、いける。逃げよう。

「ああ、ちょっと待ってください。小鳥遊さん!」

 メイド少女の叫びを無視して俺は走る。逃げるは恥だが役に立つ、三十六計逃げるに如かず。卑怯だなんて言うなよ。下駄箱までダッシュで履き替えてからまたダッシュ。忍者につかまりたくはないので、学校を出て河原の道に出たところで息を吐いた。

 ああ、疲れた。肉体的にも、精神的にも。とりあえず、今日は家に帰ろう。クラスのみんなに変人認定されてなきゃいいけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ