プロローグ
活動報告で言っていたラノベです。一話だけでエタることは、たぶん……ないと思います。なのでぜひよろしくお願いします。
誰だって、小説の中の世界には一度くらいあこがれたことがあるだろう。幼稚園児の時は絵本の中のヒーローに憧れ、男子ならテレビの中の仮面ヒーローに、女子なら日曜朝の魔法少女に憧れ、そして年を取っていくにつれ、その対象は小説やドラマ、映画なんかに移っていく。恋愛小説や青春小説の主人公に、自分を重ね合わせてみることだって少なくはない。あんな風に自分もなれたら、あんな経験ができたら。少なくとも俺はそうだ。そしていわゆる中二病と呼ばれる時期を迎え、いろいろと暴走しながらも、結局は現実にはそんなことは起こりえないという結論に落ち着くのだ。そりゃ、野球部のような青春小説なら、才能のあるやつは小説の主人公のようにふるまえるかもしれないが、それは別枠だ。俺たちのようなごく普通の高校生は特にこれといったこともなく淡々と日常をかみしめればいい。そして、そこに小さな幸せを見つけて一喜一憂してればいい。
画面の中から魔法少女は出て来ないし、空から美少女が降ってくるなんてこともない。あるいは最近のライトノベルみたいに突然魔法陣が浮かび上がって光に包まれる、いわゆる勇者召喚なんて起こるわけがない。それらはすべて創造の産物であって、現実世界にはありえないのだ。それを、俺たちはよく理解してる。それを理解していないのは、まだ無垢な5歳児くらいなものだ。ごっこ遊びで満足できた頃の話だ。
ところがここに、5歳児のような思考回路と行動力のまま、15歳の知力を伴った人間がいる。それが、一条透華である。