僕の考えた最強の魔術
どうも、テスト前日に友達とゲームセンター行ったところ別の友達を見つけた赤鳥です。
今回は文章が更に酷く読みづらいかもしれないのでご注意ください。
僕の血液浪費事件から一年の歳月が過ぎた。しかし、見事に一切変化が無かった。新たな研究を始めて一年も過ぎているのに未だに『僕の考えた最強の大魔術』が完成していない。
別にスランプに陥っている訳では無い。今回の研究している大魔術の研究中に躓いた事など一度も無い。ただ、作業量がとてつもなく多いのだ。
ピラミッドの様に積み重なった祭壇の数々。その大量の祭壇に血で複雑な魔方陣を書き連ねるだけの単純な作業。永遠に続くような錯覚に陥りながらも僕はこの単純作業を一年も続けた。なんだか社畜という生命体の気持ちが少しは理解できる気がする。
そんな地獄の研究もようやく終わりが見えてきた。もう既に百を越える祭壇に魔方陣を書き終えており、現在は巨大祭壇の回りに大魔術の儀式用の魔方陣を青色のチョークで書いている。
これが終われば後は儀式用の石柱を作ったり、血のチョークで立体魔方陣を描いて、最後に血を百リットル巨大祭壇に捧げれば僕の大魔術は完成する。
以外まだやらなければならない事が残っていたようだ。あの重い呪術なんか使用される石柱を運ぶ作業を考えると先が思いやられる。あの石柱を運ぶだけで一週間は筋肉痛に襲われて、まともに作業が出来ないからだ。
石柱を運ぶ作業を考えれば今日は早めに就寝した方が良さそうだ。僕の胃もどうやら空腹らしいのでキッチンに行って夕食を作ることにした。
魔導式のオーブンで焼けるラザニアの様子を見ていると寝不足で今にも過労死しそうなベインが覚束無い足取りでやってくるとソファーに上に倒れた。
「何やってるんですか師匠?ここで寝ないで下さいよ」
「五月蝿い、最近研究に追われていて寝不足なんだ。流石に一日中なにも口にしないのは不味いと思ってな」
「そう思って師匠の分のラザニアも焼いていますよ」
ちょうどオーブンから時間を知らせる音がなりテーブルの上置こうと思ったがテーブルには数々の魔導書やチョークやメモ用紙が散乱しており、落ち着いて食事どころでは無かったため簡単にテーブルの上を掃除をして赤色のテーブルクロスを掛けた。
テーブルの上にこんがりと焼けたラザニアを二つ置くといつまにかベインが椅子に座って魔導書に何やら書き込みをしていた。
「流石に食事する時は止めませんか」
「やはりお前の料理は味が濃すぎる」
「次は文句ですか。本当に師匠って遠慮しませんね。いやなら食べなければ良いじゃないですか」
「いや、早く研究に戻りたいから食べるよ」
この人どれだけ研究に取り付かれているのだろう。一日一食などもはや研究中毒症ではないだろうか。そういえば最近のベインの様子がおかしい。まるで何かに追われているかの様に焦っている。
「そういえばお前の研究は後何日で終わりそうだ」
「大魔術の儀式用に血を大量に消費しなければいけないので、血の入手を含めて後二週間程度ですけど、どうかしたんですか?」
「長い、一週間で終わらせろ。血は保管棚の血を使えばいい。その研究が終ればここから出ていけ」
ベインから衝撃的な事を言われ僕の思考は一時的に停止した。勿論すぐに復旧したが。一週間で研究を終了させる必要がある。これが表す言葉の意味は僕は筋肉痛に苦しみながら研究を続行させなければならないということだ。
因みにこの研究所から出ていけという命令以上に衝撃を受けた。どうやらその時僕の思考回路は衣食住より筋肉痛を優先させたらしい。
「どうしたんですか?そんなに焦って」
「帝国の連中が行方不明の魔術師達の捜索を始めた。恐らくここがバレるのも時間の問題だ。無関係のお前を巻き込む訳にはいかない」
「意外ですね、師匠が僕の事を心配してくれるなんて。分かりましたよ。筋肉痛は我慢して一週間以内に完成させて見せますよ、僕が考えた最強の大魔術を」
僕は目の前のラザニアを大急ぎで掻き込むと、ご馳走さまも言わずに研究所に戻って研究を再開した。因みに儀式用の石柱は触手を使って運んだため筋肉痛に苦しむ心配はなく快適に大魔術の研究に打ち込む事が出来た。
そして運命の一週間後になった。既に大魔術は完成しており、儀式もなんの問題なく終了した。僕の考えた最強の大魔術は簡単に言い表せば不老不死だ。血魔術における最大の欠点は頻繁に魔法の行使が難しいということだ。
まあ、自分の血を使わなくても出来なくは無いのだがリスクが大きい。現にベインは血の大量確保の為に回復魔法を習得した魔術師を誘拐していたが結局は国に追われる事になった。
そこで僕はリスクを背負わずに大量の血を確保する方法を考え、結果不老不死に行き着いた。不老不死となり死ねない体に成れば出欠多量で死ぬことは絶対にない。お陰でノーリスクで無限に血を確保する事に成功した。
確認の為に結合剣で右腕を切断したところ、切り口から突如青い炎が吹き出てあっという間に右腕は元通りに再生した。切断した右腕も残っているため完全に質量保存の法則に喧嘩を売っているが血魔術だから仕方がない。処分に困ったため切断した右腕は炎の印章で塵になるまで燃やした。
「おい、準備は出来たか?恐らく帝国の連中はこの場所を特定した頃だ。早く出ていかないと俺のおまけで殺されるぞ」
「相変わらずそのノックしない癖、直りませんね。まあ、今日が最後なので別にいいですけど。勿論、準備は終わっていますよ」
元々荷物が少なかったため荷造りはさほど面倒ではなかった。最低限のサバイバル用品と短剣数本。ここまで少ないとは正直思っていなかった。お陰でリュックサック一つの快適な旅が送れそうだ。
因みに服装は何時もの血塗れのローブでは不味いので、異世界転生初日に来ていた男性用の制服を着ている。こちらはこちらで珍しい服装で目立ってしまうかも知れないが仕方ない。この二つ以外に衣服が存在しないのだから。
「お前って身近な人が死んでも悲しくないのか?それとも俺はまだ身近な人に含まれてないのか?」
「え?急にどうしたんですか師匠」
「もうすぐ俺が死ぬかも知れないのお前はどうして平然でいられるか疑問に思っただけだよ。すまないな変なこと聞いて。だけどこれだけは答えてくれ、お前は人との永遠の別れは悲しくないのか?」
「悲しくありませんよ。だって幸せを知りませんから。僕は幸せも不幸もどちらも知らないので、どちらも分かりません」
「分かりませんか。やっぱお前は狂ってるよ」
「当たり前ですよ。血魔術師に弟子入りする時点で狂ってない訳ありませんよ。それじゃあ師匠、今まで有り難う御座いました」
「待てよ、少し頼み事を聞いてくれないか?報酬に血魔術の魔導書をお前にやるからさ」
湖の階段へ向かおうとすると急にベインに呼び止められた。そして血魔術の魔導書と地図と一通の手紙を渡された。
「何ですか、この手紙?」
「その地図に書かれたところに行けば分かる。その場所に住んでい奴にこの手紙を渡してくれ」
「魔導書を一から作る手間が省けるなら引き受けますよ、その師匠の最後の頼み事」
「ありがとう、それじゃあ元気でな」
「はい、これからも血魔術の研究、頑張りますよ。それではさようなら」
そして今度こそ僕は湖の階段を昇って久しぶりに外に出た。外はまだ昼頃らしく木々の隙間から太陽の光が差し込んでいた。
これから僕一人だけの異世界生活が始まる。きっと大それた事は成せないけど思いっきり生きていこう。この世界を血魔術師として。
これにて無知の血魔術師ウィザー編は終了しておりとなります。次のシリーズは閑話と番外編を挟んでからのスタートとなります。