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禁忌魔術師の後継者  作者: 赤鳥 異常
三代目血魔術師 マナ・ファイン
12/12

禁忌魔術師の幼女は強い

どうも、半年間失踪していた赤鳥です。

まさか新章を書くのに半年かかるとは思いませんでした。実際は新章を二話ぐらい書いていて気に入らなくて書き直していただけなんですが。

あと、ウィザー編を大幅に書き直して原型が消失していたり、トミヤ編が二話増えていますがご了承下さい。


誤字脱字、文章の矛盾がありましたらご報告お願いします。

異世界転生とは自分の住む世界とは別に全く違う文化や世界観を持った異世界に突如転生することである。転生とは別に転移という種類も存在するらしい。


ハーレムとは一人の主人公がたくさんのヒロインに囲まれる現象であり、今では一つの文明になって、この世界に確立している。

チートとは異世界転生者の一部が所有している一つの力であり、圧倒的な力を見せつけ、一方的に蹂躙する戦術でもある。


因みに俺は、この中では異世界転生のみに該当する。いや、この場合は異世界転移か。


異世界に転生してから十二年、俺は可愛い美少女に囲まれる事もなければ、圧倒的なチート能力も所有していない。いたって普通の村人Bになっていた。


俺が異世界転移したのは五歳の頃だった。昔の記憶は曖昧で自分の名前すら覚えておらず、首にかけていたネームタグを見て『鈴屋柊屋(すずや しゅうや)』だと分かった。


無一文で右も左も分からない俺は異世界生活一日目で餓死しかけた。しかし裏路地で死にかけていた俺は、となる魔術師の女性に興味本位で拾われ自分が異世界転移者だと知ると俺にこの世界について教えてくれた。


この世界は剣と魔法の概念が存在することや十三禁忌魔術について、ハーレムという文明がどれ程不健全で汚れているか。


他にもスリの技術を教わり一年後に女性が裏路地から消えた頃には一人で生きていくだけの技術と知識を習得しており、スリや火事場泥棒を繰返し生きてきた。


この世界で生活していく中で俺は鍛冶屋に興味を持つようになり昼間は独学で鍛冶に関する技術を習得して夜になるとスリで金銭を得るライフワークを確立した。


今では路地裏の奥にあった昔は鍛冶屋だったと思われる空き家でひっそりと暮らしている。たまに看板を表に出して営業しているが勿論客一人来ない。


多くの鉱山が存在し、多くの著名な鍛冶職人を輩出した鍛冶職人の街『マインナルタ』。そのためこの国には有名な加治屋が多く存在する。


その中心は既に真夜中にも関わらず多くの店が営業しており、たくさんの人々で賑わっていた。酒場では冒険者達が酒を浴びるように飲み、自身の武器を自慢しあっていた。あの聖剣、偽物なのに何であんなに高々と掲げているんだろう。


そんな街中を俺はただ目的も無く放浪していた。いや、一応目的ならある、女性に囲まれ油断しきっている冒険者や魔術師、国の運命を背負った勇者を見つけ金品を盗む目的がある。


勿論ハーレムに限る。ハーレムという汚れた文明に少しでも痛い目を見てもらおうとハーレムのみ対象にスリを行っている。


ぶらぶらと探していると街中であるのに関わらずイチャイチャしているハーレムの団体様を発見した。男女比が見事に一対九になっている為間違いなくハーレムの方だ。


俺はハーレムの団体に近づくとすれ違い様に俺の唯一の取り柄である固有スキルを発動させた。


「クイックチェンジ」


俺は自分専用の倉庫『ユニークストレージ』から適当に錆びた鉄の剣を選択すると、ハーレムの中心にいる聖騎士らしき男性の背中に担いでいた剣と交換した。


俺は十二年の異世界生活の中で二つの固有スキルを習得している。一つ目が自身の固有結界の倉庫にアイテムを収納する『ユニークストレージ』。このスキルはアイテムや金銭をあまり所持していない俺にとっては要らないスキルなのだが荷物を盗んだアイテムを直ぐに隠す時等に使っている。


そして、二つ目は指定した二つの対象の座標を入れ換えることが出来る『クイックチェンジ』。このスキルは本来は戦闘において武器を瞬時に切り替える時などに使用されるのだが、戦闘とはほぼ無縁の俺にとっては窃盗以外で使い道が無かった。このスキルのお陰でスリは格段に楽になったが。


「その剣、早く返した方がいいよ...」


「え、誰?」


ハーレムの団体から剣を入れ換えて奪った直後、耳元に幼い少女の声が聞こえてきた。慌てて振り返り辺りを見渡したが少女どころか子供の姿すら無い。結局見つからなかったため聞き間違いだろう。


薄暗く気味悪い路地裏に入り複雑に要り組んだ迷路のような細道をいつものように歩く。道中で物乞いに数人出会ってしまい、見て見ぬふり出来ずに今日盗ってきた銅貨を数枚投げつけた。


暫く進むと寂れた店に行き着いた。店先には何も置かれておらず『鍛冶屋』と簡素に書かれた看板が吊るされているだけだった。


鍵はかけていないため簡単に侵入出来てしまうのだが侵入したところで俺の家には何もない。所持品は全てユニークストレージに収納しており、店内にあるのは精錬炉と金床くらいだ。


家に入ると直ぐ座り込み、扉にもたれ掛かったて眠り込む。一応ベットを買うだけの金銭であればスリで稼げない事は無いのだが十年近く土の上にそのまま寝ていたため、こちらの方がよく眠れるのだ。











何時の出来事だっただろうか。まだ俺が異世界に転移する前の出来事だろう。友達と日が暮れるまで遊んだ日の事だった。つい夢中になりすぎて公園の時計を見たときには既に短針は六時を指していた。


親に言われていた門限を大きく過ぎだ事に気付いた俺は友達と別れて急いで家に帰ったんだ。家に着いたときは汗だくで息苦しかった事はよく覚えている。


しかし、その後が曖昧だった。玄関の扉に手を掛けて『ただいま』って言おうとした。けど急に目の前が暗くなったんだ。


再び目を開けときには俺の家は音と悲鳴を混ぜて燃え盛っていた。その時は何が起こっていたかを理解出来なかった。


「どうして僕は君を助けようと思ったのだろうか。君と■■は違うのに、何処かで君と合わせてしまったのかな。何故か不思議と吐き気がするよ」


後ろから少女の声が聞こえてきた。けど、振り返るのが恐ろしくて身動きが取れなかった事は確かだ。彼女の声から何も感じなかった。何も含まれない『ただの音声』に恐怖を覚えた。


「ごめんね、君の両親までは助けることが出来なかったよ。正直に言えば助けるつもりも無かったと思うけどね」


謝罪に似せた音声から後悔の気配など微塵も無く、ただその場しのぎの言葉を並べただけで心が一切籠っていない事など子供の俺でも分かった。


「でも安心しては駄目だよ。君はこの世界では生きづらい人間になってしまった訳では無いけど、僕はこの世界に君が存在する事は些か不適切だと思うんだ。だから、此方を向いて...」


向いては駄目だと身体中から危険信号が発せられているが俺は恐怖でまともな判断など出来なかった。ゆっくりと振り向くと、そこには綺麗な白髪は地面に伸ばした少女が白銀の薙刀の刃先を俺に向けて立っていた。


「君はきっと今まで体験した事の無いような不条理と理不尽をあじわう事になるだろう。それに、君と■■は違うから君は直ぐに死にに行くだけだよ。だから、強くあってくれ六花■■君」


俺が何を言っている理解する前に彼女が薙刀を高く振り上げ、そして俺の脳天に振り下ろされた。














「止めろ、止めてくれ!」


気付くと何時もの家の中にいた、何時もの異世界だった。どうやら先程の悪夢に魘されていたらしい。思い切り叫んだため喉が痛い。汗も大量にかいているため一度着替えることにした。


それにしても『あの夢』を見たのは何年ぶりだろうか。異世界転移した初めの頃はよく見ていたが最近は一切見なくなっていた。


しかし、今回の夢は昔見ていた夢とは少し違っていた。何時も『あの夢』を見ると必ず同じ台詞の時にノイズが入り聞こえなかったのだが、今回は一ヶ所だけノイズが入らなかった台詞があった。


「強くあってくれ六花? 誰だ、六花って。もしかして『あの夢』は俺の夢じゃ無いのか」


俺の名前は鈴屋柊屋であって六花では無い。今まで自分の夢だと信じて疑わなかったが実は俺の夢では無いかも知れない。


数少ない衣服を着替え終わると扉に取り付けてあったベルの音が鳴った。時計を見るとまだ午前六時を回っておらず、こんな寂れた店に来るのは明らかにおかしい。おそらく、鍛冶の依頼などでは無い事は分かるが、もしかすると道を聞きに来ただけかもしれないので普段通りの対応をした。


「すいません、まだ開店していないんですよ。八時に開店するので時間を改めてから来てもらえませんか?」


振り返ってみると扉の前には黒のマントで全身を纏った冒険者らしき人物が立っていた。頭にフルフェイスの兜を被っているため性別までは分からなかったが兜だけを見る限り、かなり上質な兜だっためA級位の冒険者だろうか。


しかし、今時視界の遮られるフルフェイスの兜など余程の物好き位だ。よっぽど変わった冒険者なのだろう。または。


「顔を見せたくない暗殺者とかね」


突如、冒険者の姿が消失したため反射的にユニークストレージからロングソードを具現化させると首を庇うように構えると、案の定ロングソードに短剣が突き当たった。


すると暗殺者は空いていた左手にアイアンピックを持つと今まで以上の速さで俺の首筋に突き立てた。


「なんだよ、殺さないの。てっきり殺しに来たんだと思っていたけど本当の目的って何?」


「聖剣を何処に隠した?」


声を聞く限り男性のようだが声の主は俺が思った以上に若かった。最近は熟練者だけでなく若手のルーキーがA級冒険者の大半を占めると聞いた事があるが、どうやら本当らしい。


「聖剣?聖剣なんて高価な物品は当店では取り扱ったておりませんが」


「お前が昨日盗んだ剣の事だ。知らないなんて言わせないぞ」


「ああ、あの時に盗んだ剣か。もしかして、あの剣が欲しいのなら生憎売るつもりはないよ。あの剣を素材に新しい武器でも作ろうかなって思っているんでね」


「ほお、これでもか」


男は右手の短剣を反らして右腕に突き刺そうとしたが、俺は大切な右腕に傷を付けたくないので首筋にアイアンピックを突き立てている左手を掴むとロングソードと『クイックチェンジ』で上下反転させて入れ換えた。


上下が反転したため男は頭から勢いよく床に落ちた。その時に左手に持っていたアイアンピックを手放したため、それを拾うと外に投げて窓を突き破って向かいの空き家に突き刺さった。


戦闘は苦手なので男には悪いが逃げる事にした。男が起き上がる前に『クイックチェンジ』でアイアンピックと自身の位置を入れ換えると一目散に逃げ出した。


しかし、逃げ切れはしなかった。どうやら男には仲間がいたらしく現在三対一の鬼ごっこを繰り広げていた。


相手には魔術師が混ざっているらしく、飛んで来る火の玉を避けながら逃げているといつの間にか倉庫の密集地帯にまよいこんでいた。


人目の少ない場所に逃げるなど、どうやら俺には逃亡センスが皆無らしい。スリで逃走には自信があったのだがこれでは誰にも気づかれずに殺されるのが落ちだ。


「見い〜つけた」


「ゲフッ」


案の定俺は先回りしていた敵に気付かず横蹴りを喰らって無様な声をあげながら吹き飛ばされ倉庫に激突した。フラグ回収は優秀らしい。


既に周囲は大勢の敵に囲まれており逃げ場ない。盗人一人を殺すだけに、これほどの人数を使うとは余程聖剣は高価なものらしい。欲張らずに直ぐに売れば良かった


「全くモブのくせに手間掛けさせやがって。おい早くあいつから盗んだ聖剣出せよ。聞いてんのか。」


遅れてさっきのフルフェイス兜の男とカッターシャツの上に派手なコートを羽織った少年がやって来た。てっきり兜の男がリーダーだと思っていたが少年の方が話し掛けてきたのでリーダー格は少年方らしい。


「まあ、安心しろ。大人しく聖剣を差し出せば楽に殺してやるから。抵抗したらどうなるか分からないけどな」


どうやら聖剣を渡しても渡さなくても俺のデッドエンドは確定らしい。こんな事になるのならあの時に空耳で済まさずに素直を聖剣を返すべきだった。


そうしたら酷い目に合うのはあのハーレム団体の方だったのに。


「分かったよ、渡せば楽に殺してくれるんだろ。やるよ、頑張って見つけてくれよ」


ユニークストレージ《フォルダA》、フルオープン。


ユニークストレージは通常のアイテムストレージとは違いアイテムを固有結界から出し入れする時に同時に最大100個まで取り出す事が出来る。


俺はユニークストレージ内の武器関連をまとめた《フォルダA》に存在する武器を全て取り出した。


すると周囲一体に今まで盗んだ武器や自作した武器が地面に突き刺さった常態で具現化した。


始めてユニークストレージのフルオープン機能を使ってみたため、どうなるかと思ったが突き刺さった常態で取り出されるのは好都合だ一生使う事のないシステムだと思っていたが戦闘時に使う事になるとは我ながらいい作戦だと思う。


相手が始めて見た現象に茫然している隙に側に刺さっていた盗んだ聖剣をぬきとるとリーダー格の少年の真後ろに刺さっていたレイピアと自身の座標を入れ換えた。


少年の真後ろに立ち俺は相手の脳天目掛けて聖剣を振り下ろした。しかし、振り下ろした聖剣は突如現れた魔方陣によっと意図も簡単に防がれた。


「自動物理壁とか、流石に予想して無かった...」


物理攻撃を完全に防ぐ無属性魔法『物理壁』。この魔法は魔力を消費し続ける事で自動で物理壁を展開してくれる『自動物理壁』となる。


しかし、自動物理壁は魔力の消費速度がかなり速く、並みの魔術師では一時間しかもたない。そのため自動物理壁を使う魔術師など滅多にいない。


だが目の前にいた。


「おもしろい魔法持ってるじゃないか。でもなモブ程度がチート転移者様に敵う訳が無いんだよ」


突如今まで地面に刺さっていた武器達が一斉に粉砕された。もしもの攻撃が通らなかったらクイックチェンジを多様して逃げようと思っていたのだが、お陰で攻撃手段と逃走手段の両方が消えた。


「これでお得意の瞬間移動は使えないだろ。抵抗しなかったら楽に殺してやっとのに、お前って本当に馬鹿だな」


空中に氷の槍が生成されると突然その槍が視界から消えた。そして、俺の体は強い衝撃を受けて倉庫に叩き付けられた。腹部には氷の槍が貫通して倉庫に突き刺さっており、これでは逃げる事は不可能だろ。


クイックチェンジを使う隙が出来れば逃げることも出来るかもしれないが出血多量で死ぬのが落ちだ。どうやら俺はここで死ぬらしい。


死ぬときはハーレムを道連れにして爆発四散するつもりでいたのだが、この様子では俺は何も出来ないまま死ぬのかもしれない。


「素直に渡せば一気に串刺しにして殺してやったのにお前が馬鹿だから一本ずつ刺して殺してやるよ。何本まで耐えれるかな?」


「ここに居たんですね。探したんですよ」


しかし、少年が二本目を投擲しようとした時に一人の子供が迷い混んで来た。まだ十歳にも満たない白髪の幼女は道に迷った訳では無く、どうやら俺を探していたらしい。


しかし、俺は彼女に見覚えが全く無い。元々人との交友が皆無だった俺にとって知り合った人は全員覚えているのだが彼女に見覚えはなく初対面のはずだ。


「その様子だと僕こと覚えてないみたいですね。昨日忠告したのは僕なんですが、もしかして聞こえていませんでしたか?」


「おい、この邪魔な餓鬼を黙らせろ。それなりに可愛いから奴隷にしたら高く売れるだろ」


フルフェイスの兜の男を除く男達が少年の声に応じて一斉に彼女に襲いかかった。しかし、フルフェイスの兜の男を含む男達は直ぐに上空に出現した強大な魔方陣に押し潰され絶命した。


「すいませんが君は暫く黙ってくないですか。僕は今はこの倉庫に串刺しされている人と話しているのですが」


「子供の癖にやるじゃねぇか。面白そうだから俺の奴隷に...」


「黙れと言ったのにどうして応じないのですか」


少年の体が突如膨張したかと思うと辺りに鮮血を撒き散らしながら破裂した。先程まで十を超えるほどいたはずの敵は、たった一人の幼女によって一瞬で殺された。


「君は一体何者なの?」


「喋らない方が良いですよ。傷口が開きますので」


謎の幼女の俺の質問を無視して刺さっている氷の槍を勢いよく抜くと俺の体を仰向けに寝かせると上にまたがった。


「何処でスズヤ君はこのまま僕に見送られて死ぬのと全世界から敵対されて生きる人生、どちらを選びますか?」


この幼女は何を言っているのだろうか。つい先程まで真っ白だった頭の中は更に真っ白になった。槍が抜かれた事により傷口が開いて出血が酷くなっているがどうでも良かった。


このまま幼女に見守られながら死ぬのも悪くないと思った。しかし、俺は死ぬことよりも生きるとこを取ってしまった。


「生存出来る方でお願いします」


死ぬときはハーレムを巻き込んで爆発四散したいなど言っていたが結局は長生きしたかった。だから俺は生きる選択肢を選んだ。


しかし、幼女は傷の治療を始めると思っていたのだが動く気配を見せない。少し悩んだ素振りを見せる決心がついたらしく幼女は躊躇無くキスをした。しかもご丁寧に舌まで入れて。


俺は生存ルートを選んだはずなのだが、どうやら間違ったルートを選んだらしい。どう言葉を履き違えば「助けてください」が、「キスしてください」になるのだろうか。


どうやら俺が混乱している内にキスは終わったらしく幼女は立ち上がって上空を眺めながら棒付きキャンディーを舐めていた。


「茫然としてどうしたんですか?もしかしてファートキスでしたか。そうとは知らずに失礼しました」


「どう言葉を履き違えたらキスするの?俺は助けて欲しかったんだけど」


「えっと、混乱しているかも知れませんが僕はスズヤ君を助けましたよ。その証拠に先程の傷は完治していますよ」


立ち上がる余力すら残っていない筈がいつの間にか立ち上がっており腹部の傷も傷痕する残さず治っていた。


「ところで本当に良かったのですか?」


「良かったって、何が?」


「だから全世界に敵対されても良かったんですか?スズヤ君にはもう元には戻れませんよ」


「全世界に敵対される?もしかして聖剣盗んだこと?」


「いえ、スズヤ君には現在『不死鳥の申し子』と言われる血魔術が付与されています。知ってますよね?」


たしか血魔術は関わってはいけない十三禁忌魔術師の一つで禁忌魔術は使用をした場合極刑になったような。そして、現在俺の体には禁忌魔術が施されている。


「つまり...、俺が禁忌魔術を使用して事になっているの?」


「正確には違いますが付与する事も立派な犯罪なので今日からスズヤ君もお尋ね者の仲間入りですね。おめでとうございます」


「いや、何もおめでたくないよ。どうして俺に禁忌魔術を使ったの。そんな事頼んでないよ」


「え...? でも確か生存ルートをご所望でしたよね。だから僕は血魔術で唯一の回復魔法を使ったのですか。」


「回復魔法って、もしかしてあの時のキスの事?」


「はい。『不死鳥の申し子』は対象者に既に『不死鳥の申し子』を付与された人間の血を飲ませる事で付与する事が出来ます」


「血を飲ませるだけならキスする必要なんて無かったよね」


「いえ、口を切って血を流した方が断然楽ですし、強制的に飲ませる事が出来るので。血を飲む事に抵抗があるかもしれないので」


「ところで、その『不死鳥の申し子』は何時になったら効果が切れるの?」


「いえ、永久的に続きますよ。それに、もし切れたとしても一度使った時点で犯罪者なので逃げられませんよ」


終わった。俺の平凡な異世界生活が純粋無垢な幼女の良心によって終わってしまった。これからは町の衛兵だけではなく国全体から追われる羽目になるらしい。


「これから俺はどうやって生きていけばいいんだよ。今までみたいに衛兵に追われるとは違う、指名手配されて国から追われる身となっては。そうだ、もう死ぬか」


「生憎ながら死ねませんよ」


「え?どういう意味。」


「『不死鳥の申し子』とはその名の通り死んでも直ぐに再生する体になってしまうので死ねませんよ」


ついに最期の退路が断たれた。もう、死ぬか。そう言えば死ねない体だったは。


「どうやらもうお別れようですね」


「誰か迎えに来たの?何処にも姿が見えにけど」


「上にいますよ」


幼女に言われるがままに上を見上げてみると、そこには巨大な飛行艇が浮遊していた。


飛行船なら一度見たことがあるが、その時の三倍はあるだろう。二百人は余裕で乗ることが出来るだろう。最近は外見を誤魔化す魔法があるらしいので、もしかしたら更に倍の人数は乗れるかもしれない。


でも、確かあの時見た飛行船は国が所有する飛行船でかなりの大きさに驚いた記憶がある。しかし、その国を超えるほどの大きさの飛行艇が目の前にあった。


「君って何者なの?」


「僕ですか。そういえば自己紹介がまだでしたね。僕は三代目血魔術師マナ・ファインです」


この時、俺は二度と出会うことが無いだろうと思っていた禁忌魔術師に出会った事に気付いた。


「君って禁忌魔術師なの。その歳で?」


「今さら気付いたんですか。たしかにまだ六歳ですが立派な禁忌魔術師ですよ」

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