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御殿山の魔術師  作者: リノキ ユキガヒ
「まいったな…」
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ボンネットトラック

「ちょっと待ってよ。あんな古臭いトラックが二台連続で走り抜ける何てありえないわ。第一、排ガス規制で古いトラックは使えないはず…」

私が見たトラックは俗にいうボンネットトラックと呼ばれる種類のもので今現在、これで業務を行っている業者は居無いはずだ。

正確に言うとそれで業務を行う事自体が違法なのだ。

ただでさえ今は環境破壊についてはうるさい。そういったものの法律が昔と比べると日々厳しくなっているのはニュースでも良く聞く事だ。

ましてや各官庁のお膝元である東京でそれをブッちぎるのはありえ無いだろう。

実際。私もボンネットトラックの実車は始めて見た。今の角ばったデザインに比べると正直可愛らしい印象を受ける。

ちょっと前に映画で有名になった「三輪オート」をそのまま四輪にしてデカくした感じだ。

運転席から突き出たボンネットがいかにも大型のエンジンを積んでます、といった感じがする。そこから運転席、続いて積載スペース。しかも位置が大分高い。

全体的に今のトラックに比べると腰高な感じだ。

それが先程、私の目の前を砂塵を巻き上げながら走り去って行った。


ん?砂塵?東京で?


視線を慌て落とす。

何か違う。

私が普段見ているアスファルトとは違う気がする。

もっと石炭の様に黒光りしている様な気がしたし、今ココに敷き詰められているアスファルトの様なものは私が知るアスファルトに比べると随分とデコボコしているし、黒光りもしてい無い。ただ単に黒い砂利を敷き詰めた様な感じだ。

これだけ荒い目のアスファルトなら隙間に砂が溜まっても不思議は無い。

「ちょっとどういう事よ」

私は少し気味が悪くなりその場を離れようととりあえずバイクを適当に押して歩いた。すると川が出て来た。

私の知る東京ならこの川は神田川になるはず。

神田川に架かる橋をバイクを押して渡る。その中腹位に来た辺りから薄らぼんやりではあるが、かなり大きい建物が目に付いた。

と、いうか周りに大きい建物が無いのでそれが単に目に付いただけだ。

「ずいぶんとモダンな感じのビルね…」

私はそこで立ち止まり頭の中で神田は秋葉原を中心とした地図を思い描いて見た。

北は台東区上野、東は文京区春日、西は墨田、南は中央区に港区。

「うーん。この小さい川が墨田川にも思えないし、かと言って神田川だと都心環状線の高架があるはず。本当にここはどこなのよ。神田で迷って、そこから知らない田舎にでも来たっていうの?」

私の違和感は知らない間に苛立ちへと変化していた。

「兎に角あの建物の所まで行ってみるか。何か判るかも」

私はここがどこだか知りたい一心でバイクをひたすら押して歩いた。

昭和通りと思われる通りを歩き、神田川と思われる川を渡った。

「じぁ、何か?あそこに見えるモダンな建物はデパートの三越かしら?」そんな皮肉めいた独り言を吐き捨てるとそのモダンな建物に大分近づいて来た。

そして遂にそのモダンな建物の前まで来た。

そして私は愕然とした。その建物の入口と思われる所にはライオンの銅像がまるで神社の狛犬の様に置かれていた。

「確か入口の所にライオンの銅像が置かれてる建物って…」

思わずその建物に沿って小走りにこれが何か確かめようと調べ回った。

そして遂にこの建物の名称と思われる看板を見つけた。そこには思い切り


「日本橋三越」


と書かれてあった。

私は一瞬気が遠くなるような感覚に襲われた。

「日本橋…三越…」

絞り出すような声で看板に書いてある文字を読み上げると私はバイクの傍にへたり込んだ。



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