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御殿山の魔術師  作者: リノキ ユキガヒ
のんべんだらり
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おや?

さてと、私はひょっとして迷子になったのかな?」

だれもいない通りで冗談半分に呟くと、一旦バイクのエンジンを切り、メットを脱ぎ、バイクから降りて再度辺りを眺め回した。

私は倉庫で事務の仕事をしているとは言え仮にも運送屋だ。

たまにはドライバーさんのやらかした荷物を自前のバイクで運んだりしてるし、東京近郊の地理を理解していなければハッキリ言って仕事になら無い。

つまり、平たく言うと普通の人に比べれば地理に関して言えば長けてる筈なのだ。

それで、現在地を見失なって迷子になるなんて正直、少し考えられないのだ。

そんな少し腑に落ちない感じでバイクから2、3歩離れた所で路地から人影が出て来たので道を聞こうと自分から歩み寄った。

こういう場合は地元の人に聞くのが手っ取り早い。

「あのーすみません。ちょっと道をお訪ねしたいのですが…」

そう話しかけた。

中年の男性なのだがサラリーマンとも作業員とも取れないような容姿だ。

彼は私の存在に気付くと顔を上げた。そして黒縁で丸いフレームの眼鏡をクイッと上げると、目を丸くして、一瞬固まってしまった。

まぁ、確かに自分で言うのも何だが、ライディングジャケットと言うものは普通の服とは違うので馴染みの無い人にはちょっとしたコスプレの様に見える。

秋葉原で「おい、お前。あれ何のコスプレか判るか?」と、言う後ろ指を何度刺されたか解らない。

そんな事からか?多少人に驚かれる事には免疫はある。彼のそんなリアクションをよそに私は

「昭和通りはどちらになりますか?」

と道をたずねた。

彼は一旦咳払いをして調子を整えると丁寧に道順を教えてくれた。

私はお礼を言うとバイクの所に戻りそのままバイクを押して、大通りである昭和通りに出ようとした。

なぜ、押して出たかというと、また先程のように一方通行に引っ張られてトンデモない所に出るのを防ぐ為だ。

これは大型のトレーラーなどを運転するドライバーさんが道に迷った時よく使う手だ。

トレーラーなどの大型な車両は一度順路を誤るとソレを修正するのに膨大な時間を費やす。

ならば一度歩いてその道順があってるかどうか確かめるのだ。

そしてその景色を憶えて実際にトレーラーを動かすのだ。そうする事によって効率よく道順の訂正ができる訳だ。

これは別にトレーラーのような大型な車両でなくても案外有効な手だ。

事にバイクだとそのまま押して行けば楽に迷い道から脱出できる。

やはりバイクの機動力は抜群だ。

私は素直に教わった道順をなぞる。次の角を曲がって間違えてなければ昭和通りだ。

「どっこいしょ」

ハンドルを切り少し力を入れてバイクを曲げてやる。

バイクを押す時1番倒しやすいのはこういう曲がり角などだ。不意に人が飛び出て来て思わぬ方向にバイクが倒れたりする。

なので私は用心深くバイクを押し角を曲って行く。

角を曲がり終えると私は顔を上げた。

だか、そこには見知らぬ光景が広がっていた。

私の知ってる昭和通りは首都高の高架があり、夜でも車の往来が激しい道路だ。

しかし今、私の目の前に広がっている光景はそれとはかけ離れた物だった。

「え…」

思わず息を呑んだ。いつもというか、昭和通りを象徴するようにある首都高の高架がまず、ない。

それと林立する雑居ビルも見当たらない。

思わず周りを見渡す。

野っ原と、まではいかないが東京都心にしてはえらく殺風景な景色が広がっている。

しかも、街灯があまり無く全体的に薄暗い。

「ん?ひょっとして違う通りにでたかな?」

私はバイクのスタンドを出して停めるとキョロキョロと辺りを伺った。

教わった道順通りに来たはずだ。間違えた気配は無い。

思わず「うーん」と唸ってしまった。

すると、私の目の前を一台のトラックが駆け抜けていった。反射的にそのトラックに思わず目をやる。

「随分、クラシカルなタイプのトラック使ってる業者だなぁ」

と思わず呟いてから再び辺りを見渡した。

すると、また同じようなクラシカルなタイプのトラックが通過した。

直感的に感じる猛烈な違和感を私は感じずにはいられなかった。


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